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タナカカナタのカタナ  作者: キクメン


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第105話

 お腹いっぱい美味しい料理を食べ、ニッキとシルビアは久しぶりにお風呂にも入ってとても満足した様子になり、しかも風呂上りに美味しいフルーツを食べてさらに上機嫌になった。


「ハァ~・・・幸せですゥ~」


「同じく幸せですゥ~」


 そんな二人を見ているこっちもとても癒されて幸せな気持ちになった。


 その後夜遅くまでシャルの祖父母に私達の事を打ち明け、この後シャルの家族と一部のモルサール流の人達など信頼できる人にもこの事を告げて、私がこの世界で目を覚ました魔の森に行く事を話した。


「皆さんがいるなら大丈夫だとは思うが、くれぐれも気を付けるんじゃよ」


「うん!必ず無事に帰って来る!」


 シャルの祖父母は可愛い孫が危険な場所に行くことに反対する事なく見送ってくれた。まぁモルサール流の最強剣士に加えて神のような存在が二人もいるわけなので普通の人が行くのとは訳が違うからその辺りは安心材料に一役買っているのだろう。


 そうして翌朝今度はそのモルサール流本部道場のある中央都市に向けて一路北上することにした。


 途中2度程盗賊達の襲撃を受けたが、来た時の半分の時間で進みおよそ2週間後には中央都市外縁部へと到着した。


 シルビアもニッキもムルギンも初めて訪れる場所なので荷車の幌は外して外の風景を楽しみながら進んだ。もちろんシルビアは布に包まれているが、8個の目でしっかり様々な風景を見て楽しんでいた。


「凄い!本当にファンタジー世界みたい!」


「あそこまで大きな城壁はヨーロッパでももうほとんどないですよ!」


 シルビアとニッキは初めて見る巨大な城壁に大喜びで、ムルギンもこれが中央都市かぁと感心した様子だった。


 城塞都市内部に入る前にいったん商工組合に行ってマチャントの所在を尋ねたところ、ギャラガ達と一緒に木こり村近くの町に戻ったとの事で、これはとても都合が良かった。


 その後メインストリート上にある美味しそうな匂いを放つ屋台の料理を一通り全て買い込んでいき、モルサール流本部道場へと到着した。時刻は間もなく夕方になろうとしていた。


 当然の事ながら何の連絡もなくアポなしで訪問したわけではなく、あらかじめちゃんと連絡していた上に、昨日立ち寄った町で今日の夕方に荷車を引いた状態で到着すると伝書鳥を使って手紙を送っていたので、門の前で待機していた門下生が私達を見るとすぐに本部道場に行って人を呼び、程なくしてヴォルリッヒとデルリシアンがやってきた。


「やぁタナカ君久しぶり!えーと・・・あっいるいる皆揃ってるね!」


「お久しぶりですタナカ殿、どうぞ中にお入りください」


「その帽子お揃いだけど流行ってるの?」


「あっ、いやなるべく目立たないようにと思って被ってるんです」


「なるほど、確かにタナカ君の黒髪はこの辺りじゃ目立つもんね、それに・・・他の二人も目立つわけにはいかないからっていうことか、ウンウン」


「大分あちこちでご活躍していられるようですからなおさらというところですね」


「うっ!デルリシアンさん、どこまでご存知なんですか?」


「まぁごく一部の人だけが知っているという事にしておきましょう」


「ところで何だか良い匂いがするね」


「美味しそうなものを片っ端から買ってきたぞ!」


「僕らの分もある?シャル、おっと、っていや、これは言ってもいいのか」


 改名してもシャルまでは一緒なので言っても良いのだとヴォルリッヒは気付いた。


「あるぞ!タップリ買ってきた!」


 そうして私達はモルサール本部道場に入ったが、離れのある小屋側の通路を通って荷車を運び、裏の出入口からモルサール家の2階居住部へと入った。もちろん誰からも目撃される事はなかった。


 それでも一応ニッキは一切肌を露出させていないし、シルビアは布で包んで私が運んだ。


 2階にあがるとモルサール家は全員集合しており、久しぶりに優しく微笑む美しいマリーを見て感激のあまり泣きそうになったが、すぐ横に相変らず口を真一文字に結んだヴォルタークがいたので、感傷的にならずに済んだ。


「大丈夫だ、人払いは済んでいる」


「おかえりなさい姉さん!」


「おかえりシャル!」


「ただいまみんな!アタイは見ての通り元気だ!」


 マリーとテリーズはシャルに抱き着いて、久しぶりの再会を喜び合った。


「タナカよ、色々と言いたい事はあるが、ひとまずそれは置いておいて、これまで良くやってくれた、礼を言う」


「あっ、いや~その・・・ええと、どういたしまして」


 先程デルリシアンから私達の活躍について色々と知っていると聞かされたばかりなので、私とシャルが囮潜入捜査で性奴隷に扮して変態貴族のもとにいったなど知られたら雷声で怒鳴られるかと思っていただけに、まさかヴォルタークから頭を下げて感謝されるとは全く思っていなかったので、どうにも返答がぎこちなくなってしまった。


 日も沈んで窓のカーテンも閉められているということで、ニッキとシルビアの姿をモルサール家の人達に披露したところ・・・


「きゃあぁーーーッ!可愛いィーーーッ!あのっ!あのっ!ニッキさん!シルビアさん!だっ、抱き着いてもいいですか!お願いします!」


 いつもは結構控えめなマリーが目を輝かせて手を前にして指を組んでお願いした。


「マリーは昔から可愛いものには目がないんだ!」


「いいですよ!」


「私もいいですよ!」


「きゃあぁーーー!有難うございますー!」


ギュッ!モフモフ!フワフワ!モフモフ!


「あぁーーー!嬉しいですぅー!幸せですゥ~!」


 こんなに無防備に無邪気に心から喜んでいるマリーを見るのは初めてで、そんなマリーを見るヴォルタークもいつもの不機嫌に見える顔が大分柔らかな表情になっていた。


「腹が減った!とりあえず続きは美味しい物を食べながら話そう!」


 シャルが良いタイミングで仕切ってくれたので、そのまま皆で会食することになり、今回は女性比率もかなり多いということで、とても賑やかに和気あいあいとした雰囲気で会食を楽しむことが出来、そうしたムードの中で私とニッキとシルビア、それからドグリアスの穴付近の森にいた鬼怪人についての真実を皆に明かした。


 反応は完全に二つに分かれて、実に分かりやすくポジティブに反応したのはやはりマリーとテリーズとヴォルリッヒで、ヴォルタークとデルリシアンは口が空いたまましばらく固まっていた。


「り、理解が追い付かん・・・別の世界とは一体何だ?ちきゅう?異世界?さっぱり分からん」


「あら、簡単じゃない、こことは違う世界ってことでしょ?」


「だからその違う世界というのが一体どういうものなのか分からんのだ」


「まぁまぁ、無理に理解しようしなくてもいいんじゃないですか父さん、ともかく今はタナカ君達が良い人達であったことを喜びましょうよ、タナカ君には大分お世話になったことですし、それにニッキさんやシルビアさんは神様の使いかもしれませんよ」


「確かにそのお姿はクモガミ様と獣神様のようですね」


「相変らずデルリシアンは物知りだな!」


「かつて修行の旅であちこち行った際、昔の遺跡や寺院にも立ち寄りました、そういうのを見たり昔の逸話を聞いたりするのが好きなんです」


「ウウム・・・それにしてもタナカよ、オヌシが来てからというもの、良くも悪くも実に色んなことが目まぐるしく起きてワシは少し混乱しておるぞ」


「すいません、なるべく目立たぬよう穏便に過ごしているつもりなんですが・・・」


「いやぁ~ムリでしょそれは」


「うむ、ムリだな、かなたが動けば大体何かが起こる、それも大抵面白い事が」


「いいなぁ・・・僕もついていきたい」


「ヤレヤレ、お前達ときたら・・・」


 その後この日も結局あれこれ話しが尽きない長い長い夜となったのであった。

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