第102話
少しの間、私とシャルはニッキを挟んで手を繋ぎ合って仮眠をとり、目を覚ました私とシャルはそれぞれの部屋でシャワーを浴びた。
それ程汚れてはいなかったが、心にまとわりついていた汚れを洗い流したかった。
シャワーを浴びてホッとしたら今度は腹がグウと鳴ったので、今日も奮発してお高い店で美味しい料理を食べに行こうとしたが、ニッキがいるので店内で食べるのではなくテイクアウトして部屋に戻ってニッキと一緒に楽しく美味しく食べる事にした。
「それにしてもまさかニッキがやってくるとは思わなかったよ、しかも僕の刀まで持って来てくれたなんて、一体どんな奇跡が起きたの?」
「夢を見たんです!タナカさんの元に連れて行って欲しいと願うタナカさんのカタナの夢を!」
「マジで!?」
「マジです!とても優しい声が聞こえました!そしたら次の日にリシャール様からタナカさんとシャルさんが危険な任務に行くと聞かされて、無理を言って一緒に連れて行ってもらったんです!」
「うーん、なるほど・・・でも、よく僕の刀を持ってこれたね」
「はい、リシャール様と戦士組合に行ったら、タナカさんのカタナがガタガタ震えているっていう話しを聞いて、リシャール様と一緒に見に行ったら、カタナが私の胸に飛び込んできました」
「そんな事があったの!?」
「凄いな!さすが魔の剣だ!」
「はい!私も皆さんもビックリしました!しかもカタナは私が持つとビックリする位軽かったです!」
「カタナはかなたの所に行きたかったんだ!そしてニッキなら信用出来ると思ったんだ!」
「そうだね、ニッキなら安心だって思ったんだよきっと」
「そうだと思います!カタナを抱いて走ったらタナカさんのいる場所はカタナが教えてくれました!声には出ていませんでしたけど、私には何故かタナカさんがいる場所が分かりました!そのおかげで皆さんも私を追いかけてすぐにタナカさんのもとに駆け付けることが出来たのです!」
「そんな不思議な事があったんだ・・・思えばこの刀はいつも僕を助けてくれてきたんだ、有難う、本当に有難う」
私は刀を抱きしめて深く感謝した。
「カタナは良い剣じゃのう・・・アタイもそんな一生の友となる剣が欲しいものじゃ、魔の森に行けば手に入るんだろうか?」
「そういえばタナカさんは魔の森からやってきたんですよね?どんな所なんですか?」
「うーん・・・特に普通の森とそんなに変わらなかったような気がするけど、美味しい果物とキノコと綺麗な泉があって、あと不思議な小屋もあった」
「確かにそれだけだと普通の森と変わりませんね」
「僕はすぐに人里を求めて森を出たから、もしかしたら魔の森にはもっと知られていないことがあるのかも知れない」
「アタイ魔の森を探検したくなった!」
「私もちょっと行ってみたいですね、美味しい果物とかキノコを食べてみたいです」
「果物はともかく、キノコは初めて食べる時は結構危険だと思う、何というか麻薬のような感じで、食べたら笑いが止まらなかったし幻覚もみたよ」
「わっ!怖いですね!」
「それはヤベェな」
「せっかくならシルビアとムルギンも一緒に連れて行きたいな、それに二人がいてくれれば魔の森でも安心だ」
「確かにあの二人ならどんなヤバイ場所でも凄く頼りになるな!」
「わっ!どんな方達なんですか!?」
私とシャルはニッキにシルビアとムルギンの事を話すと、ニッキは二人に凄く会いたいと言って喜んでくれた。また、シャルがトイレに行っている間、ニッキにはシルビアがブラジル出身であることを明かした。
「そろそろ私達の事を信頼できる方に話してもいいんじゃないでしょうか?」
「そうだね、僕はシャルの知られてはいけない秘密を知っているわけだから、僕の秘密も打ち明けないとなんというか・・・フェアじゃないよね」
そこで私は考えがまとまり、もう一度南に戻ってシルビアとムルギンを連れてモルサール家とハイラル家とマチャントやギャラガ達には真実を話そうと決め、ニッキにはその旨承諾してもらった。
とりあえず今最も信頼できるシャルとリシャールから始めようということで、シャルがトイレから戻って来たところで私達は戦士組合へと向かった。
戦士組合に到着すると、職員に先導されて町役場へと行くことになり、立派な建物の中でもさらに立派な最上階の応接室に案内され、入室するとリシャールを始めこちら側についている貴族達と町長と各組合長達が全員揃っていた。
私達は皆から称賛をもって迎えられ、固い握手を交わしてからとても高級そうなソファに腰かけた。
変態貴族に仕えていた者の中で、性奴隷達の監禁に直接関わっていた者に対して、死刑と引き換えに証言をする誓約に応じた者が多数出て、その中でも真っ先にグリンジの使い手の二人が応じたことで、ポウェトゥール流剣術の者達も応じたが、半数以上が死刑を受け入れるとのことだった。
これで3日後に行われる特別法廷の場では確実に変態貴族は断罪されるだろうということで、今回の囮潜入捜査と大事な証人達を一人残さず生かして捕らえたことに対して最大級の報酬を与えるという事になった。
報奨金は白大金貨5枚、さらに私は3級から2級へと昇格、シャルも一気に5級から3級へと昇格することになり、シャルはこの後腕の良い組合専属肖像画家によって組合登録用の肖像画を更新することになった。ちなみにニッキにも金一封が贈られ、ニッキはとても喜んでいた。
今回の件はあまりこちらの素性を明かしたくない旨を伝えると貴族達もそうした方が良いと同意してくれて、反対勢力の何かしらの嫌がらせなどの面倒事に巻き込まれないようにするためにも私達の活躍については伏せておくことになった。
また、あまりこの町に長居する事も、とりわけシャルの美貌と私の黒亀は目立つので、なるべく早く別の場所に移った方が良いということで、私達は早々にこの町を去ることにして、もう一度来た道を戻ってシルビアとムルギンのいる小さな村ヌルムワカに行く事にした。
「普段から帽子とか被ってた方がいいのかな?」
「ニッキみたいに全員顔を隠していくか?」
「なんだかそれだと全員怪しまれそうですね」
「確かにちびっこ盗賊団に見られそうだね」
「アハハ!ちびっこ盗賊団いいな!」
「アハハ!そうですね!」
「でもシルビアはどうする?さすがにシルビアに合う服はないし服を着てもヒトの形じゃないぞ」
「そうなんだよね・・・とりあえず大きな布を被せて僕が荷車を引っ張ろうと思うんだけど」
「大きな樽に入ってもらうのはどうでしょうか?」
「なるほどそれもいいね、場所によってはそれで運ぶのも一つの手だね」
その後町の衣料品店に行って、三人でお揃いの帽子とニッキのために子供用の普通の服を買ってから町を出た。
「よっはっとっ」
「初めてなのになかなかうまいぞニッキ!」
「うん!僕の時より最初から断然上手だよ!」
「有難うございます!」
ニッキは私とシャルがモルサール流歩方術で歩くのを真似していたのだが、最初からかなり上手に歩いていてこちらが速度を落としてニッキに合わせる必要がない程スムーズに移動していた。
こうしてモルサール流歩方術で歩く3人の集団が誕生し、一応帽子を被って目立たなくしているのだが、異様に早い速度で歩くちびっこ集団はやはり目立つようで、結構道行く人達から見られてしまうことになった。




