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音を綴る  作者: farowa
3/3

心に残る破片

 昔はギターを握っていた。

 全身で音を感じ、ベースと音を重ね、音楽を作っていた。

 学校では陰キャでも、陽キャでもない微妙な立場だった。だけど文化祭ライブではだれよりも輝いていると感じた。

 バンドマスターという立場は責任重大だったが、仲間の助けもありなんとか練習時間の確保や本番での司会進行を務めることができた。そして仲間からの信頼も厚く、仲は最高にいい、、、はずだった。

 ある日の授業終わり、いつも通り部活へ行った。しかし、そこにはバンドメンバーが一人もいない。

 まあこういうことはたまにあった。3人が"たまたま"揃ってサボる。ただそれだけだ。

 しかし、それが1週間続くとどうだろうか。バンドメンバーとはクラスも別れているので、なかなかあって話すことができない。

 勇気を持ってグループメールで聞いてみることにした

「最近みんな来てないけどだいじょぶ??」と。

 しかし返信はこなかった。

 ただ廊下ですれ違うときは挨拶はしてくる

 試験前だったこともありあまりそのことは気にしなかった。

 試験明けの最初の活動日にも、彼女たちは来なかった。流石に明日はそのことを聞こう、と胸にきめた。

 用をたそうと部室を出て、トイレに入ろうとすると、奥から聞き馴染みのある声が聞こえた。

「綴ってさ、なんかこう、融通聞かなくない?」

「それな。なんというか、めんどくさいよね」

 正直ショックだった。私がなにか間違えたらしい。いままで距離を置かれている訳がわかった。


 その日からはなにかが変わった。学校での接し方も何もかも。

 もしかしたら聞いているところをみられたのかもしらない。思い出せば、ボーカルの子が一人欠けていた。

 一切の会話もなく、一人での時間が多くなった。

 ボーカルはクラスの中心人物であり、彼女の意向が反映されることも多々ある。おそらく彼女が根を回したのだろう。

 つらい。人に無視され続けるのはいままでまったくなかった。むしろ人間関係には困らなかった。

 でもどういうわけか直接的な危害は加えられない。先生に告げ口されても困らないようにだろう。

そこまで完璧だと反抗のしようがない。一切の隙をみせないことに感心と恐怖さえ覚えた。

 私はそこから軽音部にいけなくなった。自分の改善点が見つからない以上、何も動けない。

 

 1ヶ月が過ぎた。もう殆ど誰とも口を利かず、軽音部にはもちろんいっていない。

 つらい。初めの数日は余裕だった。でも段々と孤独感とだれにも心を寄せられないという束縛感を感じざるを得ない。その頃から学校に行くのが億劫になった。

 それを嘲笑うかのように、三人が新バンドを結成したとの知らせが軽音部に入る。どうやらボーカルの子がギターを初めたらしい。まるで私を封じ込めるかのように。

 私はもういないもの扱いらしい。

 いよいよ唯一の私の居場所を失った。軽音部。

 

 家に帰り、ギターの処遇を考えなければならなかった。

 長い間お世話になったギターだ。当然残しておきたい。しかし、これがあると長い間このことを思い出すのかと思うと心が締め付けられそうだ。

 その夜、母親にこのことを打ち明けた。そして、母親は転校を進める。

 もちろん私は同意した。

 

 


 

 

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