表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
音を綴る  作者: farowa
2/3

結局は運

 最近は麻音とのこともありさほど一人でいなくても良くなった。

 でもやっぱり友だちが少ないので休みの日の殆どが家での音楽鑑賞に当てられている。私にとってはそれが、たまらなくもどかしい。

 今日は珍しく麻音と帰ることになった。ずっと一人で帰っていたのでかなり嬉しい。

「そういえば呼び方どうすればいい?」

「綴でいいかなあ。そっちのことはどうしたらいい?」

「どっちでもいいよ〜」

(一番それが困るんだよなあ)昔のことで脳が締め付けられそうだ、我慢我慢

「んじゃあ名前呼びで」

 名前で呼び合う友達なんて中学以来だ。心のなかでガッツポーズをする。

 「そういえば私さ、このバンドのライブのチケット抽選してるんだよね」

 そうやって見せられたのは「myecdy」というバンドだった。通称「マイエク」。奇しくも昔のバンドと同じ人数、楽器の構成だ。ギターが1、ベースが1、ドラム1、そしてボーカルが1人だ。

 このバンドは知る人ぞ知るガールズバンドらしく、年に数回しかライブを行わないにも関わらず、kなり多くのファンを有していると麻音から聞く。

 名前の由来は、「自分自身」「響く」「旋律」の英語をもじったことかららしい。

 このとき私はふと何かを感じた。いわゆる第六感だろうか。

「このバンドの抽選応募っていつまで???」麻音に聞く。

「確か今日の23時59分、あと8時間っていったところかな。もしかして応募したり??」

「まあ応募するならただだし一応ね??」

 そんな事を言っているが、めちゃくちゃ興味がある。外面は気にするタイプだ。

 

 麻音と別れてからイヤホンを取り出して、あのバンドの楽曲を聞いてみることにした。

 過去の自分達とは違い、メッセージ性がうかがえる。自分に重きをおいてそうな感じがする。

 心のなかで何かを感じた。バンドをやっていたときのような感覚が蘇りつつあったのだろう。 

 

 家に帰り、抽選の為への手続きをする。強く当たると信じたい。このバンドは私の何かを変える気がする、そう感じているからだ。

「つづる〜ご飯だよ〜」

 そういうのは私の母親だ。かつては私と同じくバンドをやっていたが、高校で引退している。

 そこでお父さんと知り合い、今に至っているらしい。なんともドラマチックだ。

 そこからはそこそこの大学へいき、いまは音楽関係の仕事についている。親子揃って音楽が好きなのは変わらない。

 階段を降り、ご飯を食べる前に仏壇へと手を合わせる。

 お父さんは私が5歳のときに海外への転勤の間に交通事故で死んでしまったと教わっている。

「最近学校でどう?」

「まあまあかな」

「ほんとに?三者面談ではなにか心配されてた気がするけど、、、、」

「お母さん気にしないで!!」

 女手一つで私を育ててくれたお母さん。色々迷惑をかけたと思うけど、今までのことには感謝しかしてない。楽器の購入、高校の転校など、すべてはお母さんのおかげだ。

「そういえばあんたあのギターどうすんの?埃被ってるよ??」

「ああ。。。まだ置いといて」

「あんな事があったのに、あんたはほんとにメンタル強いんだね」

 全く心配性だ。あのことはすでに割り切っているつもりだ。

「ま、音楽を無理にやる必要はないからね?」

「そんなんわかってるよ」

 ホントは音楽を続けてほしいんだと思う。だけど私を気遣ってくれている。つくづく良い母親をもったな、と感じる。

 

 それれからしばらく立ち、抽選の結果が届いた。

 結果は、、、見事当選。しかも麻音も揃ってだ。

「綴!よかったじゃん!」

「そっちもね」

 久々に明るい会話ができて嬉しい。麻音の濁りのない澄んだ瞳に飲み込まれそうになりながら、気になることを聞く。

「麻音ってなにか音楽関係のことやってるの?」

「あれいってなかったっけ?私軽音部だよ」

 衝撃の事実だ。バンド?ベース?そまさかのドラム!?そのように心のなかで興奮していると麻音がこっちを直視している。どうやらずっと目を見たままだったらしい。

「麻音ってなんの楽器やってるの???」

「えっとね、、、ボーカルかな。楽器はやってないんだよね、、、」

「すいませんでした」

 「いいよいいよ!どうせなら動画見る?」

 スマホを覗き込む。普段のおしとやかさとは裏腹に、アップテンポの歌を難なくこなしている。

 すごくうまい。こんな人が身近にいたなんて。

 そしてそうこうしているうちに、昼休み終了の鐘がなる。

 最近は学校が楽しいと心から感じている。

 しかし近い過去に受けた傷は癒えないのであった。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

書き方を一新してみました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ