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番外編 眠れぬ夜は

3日間の休みを終えた龍帝は実に充実した時間を過ごされたのか、ご機嫌つやつやで執務室に現れた。

また頭の中にお花畑咲かされちゃったのかなと側近たちは少し引いたが、機嫌が良いなら何よりだと思った。

やたら素早く書類を捌いてるけどちゃんと見てるのかな…と侍従の1人が心配したが。



「陛下、ご機嫌麗しゅう。こちらにサインをいただきたく…」


今ならなんでも可決してくれるかもなんて甘い考えを持って高官の1人がやってくる。


「却下。俺の機嫌が良くなければ殺していたぞ。我が番に感謝して余生を過ごすといい」

「はっ…!し、失礼いたしました…!」


素早くしっかりと書類に目を通したらしい龍帝は、笑顔のまま書類を破り否決した。どうやら弱小部族の奴隷制の許可を求める書類だったらしい。高官は慌てて逃げるように去って行った。

何百年も王として君臨している陛下は仕事上では腑抜けたりはしないようだ。マードリックは安堵しつつも笑顔の龍帝に恐怖した。


――


休暇中溜まった仕事を終えて、部屋に戻るのは夜遅くになってしまった。しかし様子がおかしい。

部屋の前で警護をさせていた騎士たちが困った顔で龍帝に声をかけてくる。


「へ、陛下…その、妃殿下からご伝言がございまして…」

「伝言?中にいるだろう?」


言いにくそうに伝えてくる騎士に龍帝は首を傾げる。部屋の中に確かに番の気配はある。どこかに行った訳ではないだろう。


「陛下を部屋に入れるなと頼まれたのですが…」

「俺が俺の部屋に?」


無茶な事をいう。が、愛しい番の言うことを無碍にもできない。十中八九、正気に返って恥ずかしがっているだけだろうというのも分かってもいる。龍帝はその様子を想像すると、ふ…と思わず笑みをこぼす。

なんて余裕ぶっていられるのも束の間だった。


ガチャッ!

急に慌てたように扉が開かれ中にいた侍女が叫ぶ。


「妃殿下が窓から逃げようとしていて…!陛下、お止めください!」

「な!?」


言われて龍帝は慌てて部屋に飛び入り窓から逃げ出そうとしていたリルリアーナを止める。


「リル、危ないからやめてくれ!」

「ジーク!離して!違うの!違うのよー!」


騒ぐリルリアーナを後ろから抱き上げるも、じたばた暴れて話にならない。

逃れられないと悟った彼女は、次には何故かくいくいと龍帝の上着を引っ張った。


「うー…ジーク!これ、貸して!」

「これか?構わないが…」


そのまま龍帝から脱がせた上着を奪うとそれを被ってソファの上でまるまり出す。小柄な彼女はすっぽりと収まってしまった。


「…リル、どうしたんだ?顔を見せてくれ」

「嫌、嫌よ…合わせる顔がないわ…」


なんだかいつかのやりとりに似ているなと思いつつ、彼女が隠れる先が他の男の背ではなく自分の上着なら可愛いものだなとも龍帝は思った。上着の中でプルプルと震えている様すら愛おしい。


「わ、私、ジークにあんな…あんな…」

「リル、俺はリルにされた事は全部嬉しい」


これは正直な感想だ。愛しい番に積極的に求められて嫌な龍などいない。


「話し合いが大事とか言っておきながら、私…私…」

「呂律の回っていない君も可愛かった」


しゅきしゅき言われた時は腹上死するかと思った。


「あとリル、俺は構わないが侍女たちがまだいる。下がらせた方がいいか?」

「!う、うん。あ!いえ!?違うのよ!?2人きりになってまた襲おうなんて思ってないのよ!?もう何もしないんだから!」


いつ何時でも愛しいリルに襲われるなら本望なのだが…。そう思いつつも龍帝は困惑している侍女たちを部屋から下がらせた。


「…リル、君が嫌がるようなことはしない。顔を見せてくれないか?」

「むしろ何かしたのは私だわ!ごめんなさい、せっかくのお休みなのに寝て起きては何度も求めて…!むしろ疲れさせてしまったわ!うぅ…!」


そもそもそのためだけに休みを取ったのだが彼女には伝わっていないらしい。なるほど、話し合いは大事だ。と龍帝は考えた。


「リル、俺はプライベートな時間は全て君に使いたい。それと普段夜は暇だから寝るだけで、俺の身体は睡眠や休息などほとんど必要じゃないんだ」


なんならリルリアーナの寝顔をひたすら見ているだけの、至福の一晩を過ごしていることも多々あることは黙っておく。


「た、確かにジークの寝顔を見たことない気はするけど…。え、そんなことあるの??」


言われてみれば夜はいつも自分が先に寝て、朝は後に起きていた。リルリアーナ自身の眠りが深いから夜中に起きることも滅多にないため、気にしていなかった。


「だから俺の身体は別に疲労などしていない。それに君が俺を求めてくれるなんてこれ以上の喜びなどない。例え全身粉砕骨折していようと応えるよ」

「そんな状態の人に求めないわよ!まずは治療するし!」


相変わらずこういう時のジークは冗談なのか本気なのか分からないわ、とリルリアーナは思った。


「俺は素晴らしい休暇だったと思っている。心身ともにリフレッシュした。リル、むしろ君の身体の方が心配だ。かよわい君に無茶をさせてしまった」

「…さっきまでずっと寝てたから大丈夫よ。むしろ私こそ眠くないわ」

「でもちゃんと顔を見ないと安心できない。だから出てきてくれないか?」

「恥ずかしいから…もう少し心の準備させて…」


可愛すぎる。このままではまた無理をさせてしまいそうだ。が、そんなことを言ったら尚更出てきてくれそうにないから龍帝は我慢をした。


「ではひとまず風呂に入ってくる。上がって来る頃には顔を見せてくれ。そして君が眠くないと言うのなら今度こそ色々と話をしよう。君の故郷の話や好きなものや嫌いなもの。なんでも知りたい」

「…ジークも聞かせて。私も知りたいわ」


龍帝は上着の中でうごめく愛しい塊に、その上からキスをして撫でたのだった。


「ジーク…優しい…」


呟くリルリアーナの声にはどことなくいつもより甘さがあった。どうやら彼女の言う格好いいの条件をようやく一つだけクリア出来たらしい。


評価ブクマコメント等ありがとうございます!

そろそろ番外編が長くなってきてしまったので、ここらで毎日更新を終了します。お付き合い頂きありがとうございました!


よろしければ新シリーズもぜひ!

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