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番外編 やっと

カチャリ…。


まどろみの中、リルリアーナはふと物音で目が覚めた。


「ん…」

「すまない、起こしてしまったか?俺はそろそろ仕事に行くけれど、リルはゆっくり寝ていて」


優しく頭を撫でられ、額に口付けをされる。


「それとも侍女たちを呼ぼうか?お腹空いた?」

「ん〜…」


ぼんやりした意識の中、リルリアーナは昨夜の記憶を辿り…はっ!と覚醒する。


「よ、呼ばないで!だめよ!」

「まだ寝てる?起きたらすぐにお風呂に入れるようにさせておくよ」


優しく笑うジークだったが、リルリアーナはすぐに否定した。


「じ、自分で入るわ!」

「でもリル1人じゃ立てないだろ?本当は俺が洗ってあげたいけど…」

「絶対いやよ!ばかばか!ジークのばか!ジークのせいじゃない!」


真っ赤な顔をしてぷんぷん怒る姿や、枕を投げてくる姿まで何もかも全て愛らしい。そう思いながら非常ににこやかにジークはいう。


「あぁ、俺のせいだ。愛しいリル」


――

「ジークの愛が重いわ…」


結局昼近くまで起きなかったリルリアーナだったが、サンディに説得されて入浴を終え、今はソファにてぐったりしている。


「何を今更。だから言ったじゃないですか。父性だなんて言ってると大変な目にあいますよと。しかもあの陛下に他に恋人を作ってもいい発言は完全に失言でしかないです」

「でもだからって、一晩中あんな…あんな…!!」


かああっ!と真っ赤な顔をして言葉を詰まらせるリルリアーナ。いったい主は何をされたのだろうかとサンディは思いつつ、なんだかんだでまとまって良かったなと安堵する。この様子なら恥ずかしがっているだけで、本気で嫌だった訳ではなさそうだ。陛下は陛下で妖精さんに頭の中まで花咲かされちゃったのかな?というくらい朝からご機嫌麗しかった。


「本日はいかがなさいますか?城内であれば外出許可は出てますが…」

「こんな状態じゃ恥ずかしくて部屋から出れないわよ!」


疲れも勿論だが、身体のあちこちに赤い痕を残されている。独占欲の強い龍族男子はさすがである。


「…ですが、どの道城中の者がもう知っていると思いますよ。昨夜はあれから誰も部屋には近づかないよう命じられていましたし、その翌朝あんなにご機嫌の陛下を見れば誰もがわかります」

「!?」

「それに番同士でそういうことをするのは当然です。そもそも恥ずかしがる必要はありませんよ」


しれっと言うサンディにリルリアーナは目を丸くする。逆にそういうことをしない方がおかしい、まである。結局彼女が成人してから一年以上経っているのだ。我慢し続けて枯れちゃったのかなとも思ったが、むしろ誰よりもお元気だったようだ。陛下もちゃんと血の通った生き物だったのだな、と思う。


「え、あれ?そういえば昨日サン姉と会話してたはずなのに、いつの間にいなくなってたの??」


と、そこで扉が開き、渦中の人物が顔を見せる。


「リル、身体の調子はどうだ?」

「ジーク!」


相変わらず機嫌が良さそうである。リルリアーナとしてはそのご機嫌な彼に言ってやりたい文句はいっぱいある。いっぱいあるのだ。が、恥ずかしいのもあり、うー…と唸りながら顔を背けた。

その隙にジークは部屋の中に入り、リルリアーナの横にささっと腰掛ける。手には何故かフルーツの皿を持っている。


「ほら、あーん」

「むっ…」


口の前に差し出されたマスカットを思わず食べるリルリアーナ。甘くて美味しい。


「朝ごはんまだなんだろう?もうそろそろお昼だけど」

「んむ…」


次々に差し出されるままにむぐむぐと食べるリルリアーナを、至福の表情で見るジーク。


サンディはそんな2人を見ながら思う。あぁ、これで主はとうとう完全に逃げられなくなったなと。


――


それから数日後。羞恥心も人攫いの恐怖もだんだん薄れてきたリルリアーナは、また城内を歩くようになっていた。しかし…。


「どこに行ってもバレるのよ!?」

「いや…それは…」


何故か騎士団の訓練所に現れたリルリアーナは、そこにいたランドルに話しかけている。


「明らかに前より居場所がバレるようになってるの。だからあえて私が行かなさそうな場所に来てみたわ」

「えーと、妃殿下…?」


ランドルはこいつ何言ってるんだと思いながら、横に控えている自身の大叔母であるサンディを見た。サンディはにこりと微笑むがその感情は謎である。


「さすがにこんなところにきたら陛下が心配するのでは…?」

「城内ならどこ行っても自由って言われてるからいいのよ。それより、龍族って剣でも闘うの?」


木剣で打ち合っている訓練の様子を遠目で見ながら、リルリアーナはふと疑問に思った。そういえば護衛の人たちも腰から剣をさげている。


「ん?まぁ狭いとこだと龍化できない奴もいるし、周りのものとか壊しちまうからな…ですよ」

「確かに!ジークとか嵩張って邪魔だもんね。火事とか怖いし」

「かさばっ…??」


自分が追放された夜に、彼が嵩張る龍になって火を吹き大暴れしていたことをリルリアーナはいまだに知らない。ランドルはその時の恐怖を思いだしてか言葉に詰まる。


「あれ?でもジークが剣を持ってるの見たことないわ。重くて持てないとか?」

「いやいやそんなわけ…」


素手で首を落とせるしねじ切れるため必要ないからだろう…とランドルは思ったが、横でサンディが不気味な微笑みを浮かべているためやはり黙っていることにした。


「闘うのは王の仕事じゃないからね。それは騎士の仕事だ」

「ぴゃあ!」


急に背後から声を掛けられて悲鳴をあげるリルリアーナ。彼女の場合は単純に驚いただけだが、周りの騎士たちは慌てて主に敬礼した。


「ジーク!なんでここに!?」

「愛しいリルを迎えにきたに決まってるだろう?」

「じゃなくて!なんで場所がわかったのよ??」

「ははは。リルは面白いことを聞くなぁ。そんなの愛の力に決まってるだろう?」


ふざけたようなジークの言葉に、リルリアーナはそんなわけないでしょう!と返す。


「あぁ、皆そのまま訓練を続けてくれ。むしろこちらを気にしないように」


ジークが手を挙げ一言そう告げると、周りは一斉に訓練を再開し視線を向けないようになった。


「ジークは訓練とかはしないの?」

「訓練?俺が?」


やめてくれ。そんなことされたら打ち合った龍は骨の一本や二本じゃ済まない。

と、聞き耳をたてている者たちは思った。


「あ、でもジークは若くないからやめておいた方がいいか…」


瞬間空気が凍りついた。ガラーンッ!と打ち合いをしていた騎士たちの手からも木剣が落ちる。


「…リル、何度も言うが俺は龍族の中ではジジイではない」

「そうはいうけど、ランドル君たちに比べて言うこともなんか年寄りっぽいし…」


唐突な飛び火に、こっそりこっそり距離を取ろうとしていたランドルはビクッとする。


「…ランドル君?」

「うん、何歳なのかしらないけど…」


笑顔でこちらを見てくる陛下が怖すぎる。すでに先程から話していたのが把握されているのか、確実にランドルが誰かは分かっている。


「えっと…」

「リル、あれはまだ子供だ。赤子のようなものだよ」

「そうなの??」


龍帝の眼圧に怯みながら、どう答えれば正解なのか脳をフル回転させるランドル。そして導き出した答えは…。


「ば、バブー…」

「えぇぇ!?さっきまで普通に喋ってたじゃない!?」

「龍の子供は安定しないんだよ。さぁ、リル。大人の俺と一緒に帰ろう」


そういうと、龍帝はリルリアーナを抱き上げる。


「あ!ちょっと!自分で歩けるわよ!」

「あぁ。でも大人なリルには今夜無理させるから、今は体力を温存させておこうと思ってね」

「なっ…!」


俺が若いってことを教えてあげないと、とにこりと笑いながら言う姿は完全に若い嫁を貰って浮かれるジジイである。

そのまま去っていく2人と、付き従う侍女と護衛を見ながらランドルはなんとなくデジャヴ感を感じた。

しかし前回よりも陛下が笑顔だったのはそれはそれで怖い。なぜか余裕があるようでない。


「…色々と、秘密にされてることが多そうだな」


龍は身も心も結ばれた番の居場所を感知できること。

龍族であるジークからは感知できてもそうではないリルリアーナからは分からない。かくれんぼなど不可能なことを彼女は知らされていない。

あと確かに龍帝陛下は闘わないが、それは結果として闘いと呼べるものではなく、一方的な殺戮になるからだ。


しかしリルリアーナにやや同情するランドルもまた知らない。龍帝こそがいつ心変わりするか分からない妖精に必死で振り回され続けていることを。


評価ブクマ誤字報告等ありがとうございます!

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