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龍の頷の珠を取る

「リルたん…こっちにきてくれないか?その男を殺したくなる…!」

「嫌よ!話がしたいならこのまま聞くわ」


どうしてこうなったのか。

陛下がここに向かったようだが見ていないかと龍族の側近と消防団のみなさんに聞かれ、おそらく2人で話をしているはずだと説明していたカイゼル。ちょうどそろそろ様子も気になるし、案内がてら近くまで見に行くと、なぜか青い顔をしているランドルたちと合流した。

そこへ急に悲鳴をあげながら走ってきたリルリアーナは、カイゼルの姿を見つけると即座にその背に隠れ、服の中に顔を隠してきた。なんだなんだと思っていたら、目の前のブチギレ寸前の龍帝陛下である。


また己を挟んで会話をする龍帝とリルリアーナに遠い目をするしかないカイゼル。何これどういう状況?話が拗れたのか?ここにきての急速な俺の死亡フラグ回収?と考えて周りを見やる。

ゼフや近くにいた銀狼たちは決して目を合わせないようにしている。銀狼の結束はどこいった。

側近ら龍族に至っては耳を塞ぎ身体も背け、我らは見てません、聞いていませんとぶつぶつ言っている。お前らも節穴団と同じか。


「君の顔が見たいんだ!頼む」

「嫌よ!だってさっきすっごく怖かった!怖いのは嫌よ」


いや、俺だってすっげえ怖いよリルちゃん?俺のことめちゃくちゃ怖え顔で見てるからこの方!

と思いながらもカイゼルはその場からは逃げない。己の上衣の中でいやいやしている彼女を放るわけにはいかない。とはいえどうすればいいかは分からず、殺意から目を逸らしつつ棒立ちしているのだが。


「君が煽るようなことを言うから…!すまない、もうそろそろ君が側にいないのは限界なんだ」


煽られたのか。可愛いもんな。何をしようとしたのかは知らないが、何年も我慢しすぎて限界がきたのかと思うと不憫だなとカイゼルは思った。己を挟んで話す理由はわからないが。彼の命はずっと風前の灯だ。


「頼む、まずはこの男の首を切り裂いてもいいか?とにかく始末したい」

「いいわけないでしょ!?そんなことしたら本当に大っ嫌いになるわ!」


慌ててカイゼルの服から出てくるリルリアーナの言葉に龍帝は、ぐっ…!と精神的ダメージを受けている様子だ。カイゼルのことを本気で殺したいはずなのに我慢しているという事は、やはり番に嫌われることだけは避けたいらしい。


「…どうしたら、俺の側にいてくれる?」


今にも泣き出しそうな、絞り出すような龍の王の言葉に、リルリアーナは少し考えた後、ぽつりと呟く。


「…閉じ込められるのは嫌。外に出たいの」


そりゃそうだよ。当たり前だ。周りで聞き耳を立てている銀狼族は全員が思った。


「外は危険だ!可愛い君が悪い男に騙されたり誰かに攫われたりするのが心配なんだ!」


まぁ、実際なぁ〜…と、銀狼族の全員から向けられた突き刺さるような視線にカイゼルは冷や汗をかく。


「そんなことないもん!外に出て最初は怖かったけど、すっごく楽しかったもの!」


リルリアーナの言うそれは、運がよかっただけとも言える。最初にカイゼルに拾われ、その庇護下にあったため危険な輩からは守られていたのだ。


「子供の時助けてもらったことは感謝してるわ。でももう私は大人なの!恋人や居場所は自分で見つけたいし選びたいの!」

「駄目だ!君は俺の番なんだ!他の男が君を視界に入れることすら耐えられない!」


もう!なんでわかってくれないのよー!と言いながら、ついには泣き出すリルリアーナ。

ほろほろと流れるその涙を見て、カイゼルは拳をぐっ…と握りしめた。まるで何かを決意するように。


「…大丈夫だよ、リルちゃん。責任は取るって言っただろ?」

「へ…?」


ぽんっ…と優しく頭を撫でるカイゼルを見上げるリルリアーナ。龍帝はそれを見て今にもキレそうだ。


「貴様…何様のつもりだ…」


いやぁ怖い。超怖いよこの方。でもだからって泣いてる女の子の前で引き下がったらさ…男がすたるだろ?


カイゼルはそんな事を考えつつ怒れる龍帝へ向かって一歩前に踏み出すと、髪をかきあげ笑顔を浮かべながら大声で言った。


「どーも、間男でっす!」


いきなり吹っ切ったカイゼルの言葉に、銀狼族だけでなく龍族すらも凍りついた瞬間だった。


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