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節穴団

翌日。カイゼルは再び空に昨日とはまた別の龍族たちが10頭近く現れたとの報告をうけ、降り立っていったという街外れへと確認しに行った。そこに黒い龍はいないため、あの恐怖はない。しかし…。


「見たか?」

「いいえ!見ていません!我らの目は節穴です!」

「聞いたか?」

「いいえ!聞こえていません!我らの耳は飾りです!」

「空気は?」

「吸っていません!我らの呼吸はえら呼吸です!」


何やら代表らしき男が質問するたびに若い龍族たちが集団で答えている。別の意味で怖い。カイゼルには全くもって何がしたいのかわからず、連れ立ってやってきた銀狼たちと顔を見合わせる。何こいつら??


「いや、だめだ!水中じゃないから説得力がない!」

「はい!隊長!光合成はどうでしょう!」


頭を抱える隊長とやらに、龍族の若者は手を挙げて真面目な顔をして答える。


「死ぬ気か!?二酸化炭素を摂取したと言われてブチィッ…!だぞ!?」

「ヒィッ…!」


真っ青になる集団に、カイゼルは何をちぎられた音なんだ?と思いつつも声をかける。


「おーい」

「おわぁっ!」


こちらに気づいていなかった龍族たちは、急な声に必要以上に驚いた様子だ。


「ん…なんだ、銀狼の長か」


しかし声を掛けてきたのが思った人物ではないと知ると、あからさまにほっとしている。しかしなんだとはなんだ。


「こんな所で集団で何してんだよ。あんまり人の縄張りで好き勝手してると噛み付くぜ?」


今のところ目的はさっぱりだが、龍帝御一行の来訪にただでさえ銀狼たちがピリついている状態なのだ。銀狼の長としては領内でわけのわからないことをされていては困る。


「何だと犬コロが…!」

「やめろ!相手は銀狼族の長だぞ!お前が勝てる相手じゃない!」


血気盛んそうな龍族の1人を、先ほど隊長と呼ばれていた男が止めに入る。


「へぇ?分かってんじゃん。だったら不審な真似はやめてもらおうか?」


確かに全ての獣人は龍帝の支配下にある。しかし各部族の自治権は龍帝も認めているところであり、龍族とはいえ領土内を好き勝手される謂れはない。

支配者である龍帝本人は別だが。


「すまない…。領土を荒らす気はないのだ。我々は陛下の番であるお妃様に、悪い虫がついていないか調査にきただけだ」


ぎくっ!


「へ、へーえ…?」


なんとか笑顔を保つが、心当たりしかないカイゼルである。一緒にやってきた銀狼たちも、あっ…と言う目で己の族長を見つめる。


「まぁまだ子供だという話だから、変態でもいなければ大丈夫だろうが…」

「子供??」

「まだ見た目からして童と言う噂だ。銀狼たちにはわからんかもしれないが、龍族の中には成長がゆっくりな者もいるからな」


まさかこいつらはそもそも“陛下の(つがい)”を龍族だと思っているし、成人したことも知らないのか??まさに節穴団じゃないか。龍族の報連相のなさはどうなってるんだ?

とカイゼルは思ったが、銀狼たちが後ろで変態…と呟きながら見てくる視線の方が痛い。やめろ。お前たちは見ているだろ??あの服を着ててもわかるけしからんボディを!


「しかしうかつにお妃様の顔を見たり声を聞いたりしたら我らこそ陛下に燃やされてしまう。だから、決して見てはいないというアピールの練習をしていたのだ」


理屈は分からんが分かった。いやしかし、帝国騎士団の目が節穴じゃだめだろう。


「ちなみに、それは龍帝陛下の命令なのか?」

「いや違う。陛下に知られる前に調査して対処しなければ危険だという上司の判断だ。まぁ陛下という番がいる以上、妃殿下が他の男とどうこうということはあり得ないだろうがな」


なるほどね〜…、と言いながらカイゼルは周りにいた銀狼たちに目配せをする。大丈夫、一族の結束は固い。というかことと次第によっては全員が危険だ。すでに昨日から自分たちはある意味絶滅危惧種なのだ。

それにしてもリルリアーナが龍族だと勘違いしていると言うことは、一度(つがい)を得ているならその他の男に身も心も許すはずがないと思っている様子だ。無理矢理ならともかく。まさかオオカミと楽しくイチャコラしているとは思ってもいないらしい。


「陛下もどうして昨日すぐに連れ帰られなかったのかは分からないが、妃殿下は子供ゆえ何か駄々をこねられているのかもな。そういえば領地のどこで保護されているんだ?」

「あ〜、まぁ…」

「あれ、って言うかこの前の祭りで盛ってた狼じゃね?」


若そうな赤髪の騎士がカイゼルを見て、指をさす。


「あ!確かに。なんか見覚えあるような…」

「だろ?一緒に見たもんなぁ」


横にいた緑髪の少年も同調する。

やめろ。余計なところを見てるんじゃない。お前らの目は節穴なんだろう⁈

カイゼルはそう心で叫んだがもちろん届かない。さらに彼はもちろんこの場所がどこか知っている。それが困った事態になりそうなことにも気づいている…。だってもう足音が近づいてきてるもん。


「…あの、皆さん畑の近くで何してるんですか?」


農作業スタイルのリルリアーナがそこにはいた。


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