第1話「祖父母の屋敷」
☆登場人物
○ミラ
18歳の見習い魔法使い。幼い頃から祖父母の影響で魔法に興味を持ち、見習いとして修行中。性格は明るくて前向き、好奇心旺盛で、ちょっとおっちょこちょい。祖父母が住んでいた屋敷の片付けを任され、解体前の掃除のために久しぶりに屋敷を訪れることになった。屋敷には楽しい思い出がたくさん詰まっているが、少し不気味な雰囲気も漂っている。
「懐かしいな……こんなに静かだったっけ?」
ミラは、かつて祖父母が住んでいた古い屋敷の玄関前に立ち、微笑みを浮かべた。祖父母は長い間、人の多い賑やかな町で暮らしていたが、静かで穏やかな環境を求めて田舎の村へ引っ越していった。それ以来、この屋敷は貸し屋敷として使われていたが、住む人々が次々と不幸に見舞われたため、今はすっかり無人となってしまっている。
「解体する前に片付けを頼まれたけど……この場所に来るの、久しぶりだな。」
ミラは屋敷の古びた扉を開け、ゆっくりと中へと足を踏み入れた。祖父母が住んでいた頃、この屋敷は温かくて賑やかな場所だった。ミラにとっては、楽しい思い出が詰まった場所で、祖父母と一緒に遊んだ記憶がよみがえる。
しかし、今はひんやりとした空気が漂い、人気のない寂しい空間に変わり果てていた。ミラは杖を取り出し、その先端に軽く息を吹きかけるように囁いた。
「微光の灯(ルクス・ルミナ)」
杖の先から淡い光が灯り、周囲を柔らかく照らし出す。ミラはその光を頼りに、埃っぽい廊下を歩き始めた。屋根裏部屋に向かうため、軋む階段を一段一段上がっていく。
「祖父母がいたころは、もっと明るくて温かい場所だったのに……」
ミラは心の中でそう呟きながら、屋根裏部屋の扉を開けた。薄暗い屋根裏部屋には、古びた家具や箱が雑然と置かれており、埃と蜘蛛の巣が覆い尽くしている。ミラは「微光の灯」の光で周囲を照らしながら、慎重に足を進めていった。
ふと、部屋の片隅で何かが光を反射しているのが目に入った。
「何だろう、あれ……?」
ミラはその光に引き寄せられるように近づいてみると、それは大きな鏡だった。鏡は古びているが、美しい彫刻が施されており、どこか異様な存在感を放っている。ミラはその鏡を見ていると、まるで何かに吸い寄せられるような感覚に陥った。
「この鏡……前に見たことがあったかしら?」
ミラは首をかしげながら、鏡に手を伸ばした。その瞬間、鏡の表面が波打ち始め、まるで液体のように揺れ動いた。驚いて手を引こうとしたが、時すでに遅く、強い吸引力がミラを引き寄せる。
「きゃっ……!」
ミラは叫び声を上げる間もなく、鏡の中に引き込まれていった。視界が一瞬にして真っ暗になり、ミラの意識は途切れた。
短編予定ではありますが、温かく見守っていただけると幸いです。(滋賀列島)