コード84「空に浮かぶは風を纏いし少女」
第84話
前回、ケーシィがBランクの魔物に勝ってから
日が沈みそうになる頃、
カナリーはモンギィ・レクスを本来のコースから大分離れた
山の上の方へ誘導することが出来た。
(よし!ここなら全力でやっても大丈夫かな?)
エリナを木の根元に寝かせ、モンギィ・レクスに向かう。
「よーし!やるぞ~!スキル発動!<スキル・コード>!」
カナリーは魔術を生成し始めた。
時間は遡り、日が沈む前。
ケーシィ視点
「はぁ…!はぁ…!ら、ライジェル流…!」
カナリーと一緒に走っていたせいもあるのか、
体力の限界もかなり近かった。
魔物の大群と戦い続ける。
諦めることなく、拳を、脚を動かし続ける。
ゴブリンが矢を放ち、ケーシィの肩に刺さる。
「あぁっ!これは…麻痺毒…!?手が痺れて…!はっ!」
ケーシィに魔物達が飛び掛かった。
(これはもう…!くっ!)
もう、これ以上は…やられる…!
その時、炎がケーシィの周りに居た魔物を焼いた。
「あなたは…!」
1人の女性が助けに来た。
「助太刀失礼するわ!あなた大丈夫!?」
フェニ・アステライトだった。
「こんなにも魔物だらけで1人でよく頑張ったわね!でも、もう大丈夫!ここから逃げるよ!」
ケーシィはフェニに肩を支えられる。
「火炎登防魔術<スペル・火炎塀>!」
2つの炎の塀が作られ、道となる。
魔物らはそこへ侵入できなかった。
「これで逃げるよ!長くはもたないから、出来るだけ頑張って!」
一番先頭のとある視点
日が沈みだしている頃。
仮面を被った少女はオレスティエの先の岩石エリアを歩く。
マラソンだというのに、歩いて、ゴールを目指している。
「…。景色、綺麗。」
後ろを振り返ると、森林地帯が良く見えた。
オレスティエの別方向の山の上で大爆発が起こる。
「あの魔力は…ふふっ、やっぱりすごいね。」
オレスティエ エリア46付近では、あらかた魔物や魔獣が狩りつくされた。
モンギィ・レクスは確認が出来ていなかったが、マラソン再開の報せが
休憩エリアに居た参加者達に伝わる。
拡声魔術にて、マラソンを再開する声が森全体に響き渡る。
リルフとノーマンは再び走り出していた。
「よしっ!じゃあ、走るか!」
不安が残る。この休憩エリアに、知り合いが誰も居なかった。
リルフは不安を胸に残し、休憩エリアを後にした。
ケーシィとフェニは2人肩を並べ走って逃げていた。
肩の傷が開いてしまう。
フェニが応急処置をし、木の陰に身を潜ませる。
「まだこんなにも魔物が居るのか…包囲されてる…また戦闘しないと突破できないかもしれない。聞こえた声によると、マラソンは再開されてるな…。」
先ほどより、多くの魔物に取り囲まれる。
どうしてこんなにも魔物が多いのかというと
モンギィ・レクスが山で大暴れした結果、
魔物が大行進し、モンギィから逃げるように下に降りて来たというわけである。
「この数から逃げれるか分からないが…2人でなんとかコースへ戻ろう。そうすれば救助してもらえるかもしれない。もう少し頑張れるか?」
ケーシィは毒が回って体が痺れ動けなかった。
目の前ももぐるぐると回っており、
意識も朦朧としていた。
フェニは剣を抜き、魔物の軍勢へ向かう。
「なんとか耐えれれば…!」
そこへ魔女帽の少女とフードを被った少女が到着した。
「現着です。」
「とうちゃ~く。」
フェニはその二人の顔が見えず、誰かも分からなかった。
「後ろに教員達が居たです。そこへケーシィさんとフェニさんも向かうです。ここは私たちに任せるですよ。」
「あなた達は…?それになんで私達の名前を…?」
その二人は少し焦っていた。
「と、とにかく、さあ早く行くですよ。」
なぜフェニとケーシィの名前を知っているのか、疑問だったが、
今はそんなことよりケーシィの手当てが先。
「どなたか存じませんが、感謝します!」
フェニはケーシィを抱え、去っていった。
「さぁて、やるですよ。リーナさん。」
「肩慣らしには持ってこいだね~。ちゃっちゃと片付けるよ。リベラさん!」
2人はその大群へと向かって行った。
リルフとノーマンは順調に走っていた。
「にしても、レクス級の魔物ってなんだったんだろうな~。もしかして、俺らを脅かすための嘘だったりしてな。」
ノーマンはガセネタだったのかもと想像していた。
「うーん、それはないんじゃない?それなら、みんなを休憩所に留めておく必要はないし…それに先生達も結構ガチっぽかったよ?」
ノーマンとリルフはキャンプを立てた。
日が沈み、一番星が見える頃、オレスティエの山の上の方で大爆発が起こった。
大きな猿型の魔獣。モンギィ・レクスが辺りの木々ごとはるか上空へ吹き飛ばされる。
走っている他の学生も、その様子を中継していたスタジアムで見ている人達も
皆が驚愕し、その光景を見る。
下から、モンギィ・レクスへ向け、追撃するかのように、何かが飛び上がった。
「その槍が悪さしてるんだね!だったら!もう!」
1人の少女が上空へ飛び上がる。
新たな魔術が繰り出される。
ケーシィとマナの体術を見て、新たな魔術を生成していた。
魔流之魔術<スペル・魔衣風>
風がまるでドレスのようにカナリーに纏わりつき
それはまるで星空の下で踊るかのように輝きを放つ。
カナリーが空中に飛び上がったモンギィ・レクスへ向け
パンチを空中へ繰り出す。それはまるで小さな星が弾けたかのように、
空を裂く。魔力の風がモンギィ・レクスへと繰り出された。
その瞬間、辺りの木々も風に打ち上げられ空に浮かぶ。
モンギィ・レクスが手に持つ槍に流れるカナリーの魔力が
弾け飛び、雷が抜けていく。その魔力がカナリーに還元されていき、
魔衣風がより一層輝きを放った。
モンギィ・レクスの暴走が静まって、地に落ちていく。
「ウキ…?」
モンギィ・レクスが下からカナリーを見上げる。
まるでお姫様が空から降り立つかのように、
カナリーはゆっくりと降りて来る。
「もう、平気?ごめんね、痛くなかった…?」
モンギィ・レクスはいかつい顔をしていたが、
嬉しそうに、槍を掲げ、踊っていた。
「ウキッ!」
彼からはもう雷は抜けきっていた。
「良かったぁ…もう悪さしちゃダメだよ?約束ね!」
木々が打ち上げられる様子は、スタジアムにモニタリングされていた。
謎の現象。モンギィ・レクスの行方は何処へ等、話題は持ち切りだった。
「ところで、インペスト大山脈ってどっちの方向だろ…?」
カナリーは気絶している女の子のそばまで行き、空を見上げた。
カナリー達が今いるエリアは、本来のルートから数十キロも離れた場所であり
通常の魔術士であれば、移動に何日もかかってしまう程離れていた。
「お猿さん、今の場所って分かる?」
「ウキ?」
分かんないよね…どうしよう…。
カナリーは途方に暮れていた。
夜、一番星が見える時間。優しい風が吹いている中。
インペスト大山脈、スタジアムへの扉の前にて、
仮面を付けた女の子がその扉をくぐった。
「たった今!マラソンで1位の者が現れました!ゴールです!ゴォォール!」
仮面の少女が優雅に扉をくぐった。
「1日目でゴールだなんて前代未聞です!素晴らしい!!何か一言お願いします!」
マイクが向けられる。
その少女は空を見つめ、こう答えた。
「…待ってる。」
マナがその少女を見つめる。
少女が見つめる先は、一番星であった。
魔流之魔術<スペル・魔衣風>
カナリーの3つ目の魔術。
魔力の風がドレスのように纏わり、着飾るその様はまるでお姫様。
モンギィ・レクスは暴走していたというわけですね。
雷が抜けたとは言いましたが、彼はまだ雷を操れます。
過剰な雷が彼を苦しめていたのでしょう。
モンギィ・レクス君とっても可愛いですよね。
体長15mでいかつい顔をしていますが。
さて、1位を取った仮面の少女は一体誰なんでしょうか。
カナリーは無事にゴールすることが出来るのでしょうか。
第84話、読んでいただきありがとうございます。




