コード7「辻褄合わせ」
第7話
前回、AIにマナと名前を付けた後から
私は今、マナと並んで歩いている。
私は先ほどマナに体を貸しており、
その際の戦闘により、魔力枯渇で立ち眩みがするけど
マナに肩を支えられながら歩いている。
一緒にアステライト家の前まで戻って来ると、フェニお姉ちゃんが倒れていた。
「あ!お姉ちゃん…!そうだった!マナ!お願い!状態を確認できる…?」
しかしマナは表情には出していないが、
少し考え込むような動作をした。
「マスター、申し訳ございませんが、マリナ様の魔力量では、<スキル・アナライズスキャン>を使用することが出来ません。あのスキルは、カナ様の魔力量で補えたものであり、通常は使用が不可なものでございます。また、スキルはカナ様ほどの魔力量が無いと使用不可にございます。」
私はスキルについては詳しく知らなかったけど、
魔術スペルとは全く違う力だという事は理解していた。
マナはすぐさま代用案を提示してくれた。
「ただ、マリナ様の観測魔術<スペル・魔視>+私の演算能力で対象の状態を的確に確認することは出来ます。使用しますか?」
マリナの時と明確に違うのは、脳内演算能力が格段に違っており、
アナライズスキャンほどではないだろうけど
的確に情報を読み取ることが可能になったらしい。
「うん!お願い!」
私は迷わず、お姉ちゃんの状態を確認してもらった。
「かしこまりました。観測演算魔術<スペル・魔視+>
マナは、くまなくフェニの状態を確認していく。だが、回復魔術を使用する必要はなさそうであった。
「さすがは、魔術士のフェニ様。恐らく、剣で攻撃の威力を少しでも抑え込んでいたのでしょう。素晴らしいです。これなら、回復魔包帯を巻くだけで次の日には回復しているでしょう。」
マナからはすごい説得力を感じた。さすがはAIといったところなのかな。
朝。鳥のさえずりが聞こえてくるのが心地いい。
フェニは目覚めていた。だが、昨夜の事はあまり覚えていないらしい。
それもそのはず、<存在を消滅させる攻撃>というものは、その名の通り、
存在を消すもので、あのドラゴンと関わった記憶も消滅しており、
森に入ったところまでしか覚えていないらしかった。
私たちが覚えているのは、私たちがその存在を消滅させたからだと、マナが教えてくれた。
フェニはマリナの体、マナに対しての
ほんの少しの違和感を感じているようだった。
それもそのはずだよね…と私は内心焦っていた。
だが、マリナもフェニに対して常に敬語で話していたため、
そこまでの違和感はなく、勘違いかなと思い込んでいるようだった。
「それにしても…私は何故森なんかで気を失って…。何も思い出せない…」
どうしようかと私が悩んでいると、マナが助言してくれた。
「フェニ様。昨夜はお酒入りの甘菓子を間違えて渡してしまい、誠に申し訳ございません。恐らくは、フェニ様が酔ってしまい、そのまま森で寝てしまったのでしょう。私たちは探し回って、そして回収したのです。」
すごい噓ではあるけど、確かに、お姉ちゃんは前に
お酒入りの甘菓子を口にした時、かなり弱いみたいで泥酔していて、
家の外で寝ていたことがあり、記憶が飛んでいたみたいだった。
「それなら…まあ分からなくはない…。でも、森って…うーん…恥ずかしいなぁ…」
お姉ちゃんは顔を手で覆っていた。
私はひやひやしていたけど、マナは表情を崩さない。
(ていうか、私仕事で来たはずなんだけどな…?)
フェニお姉ちゃんが怪しみながらも街へと帰っていく。
ずっと疑問に思っていた事をマナに直接聞いてみた。
「マナ、フェニお姉ちゃんと話したことがないはずなのに、どうしてあそこまで辻褄を合わせて話せるの?」
マナは丁寧に事細かに教えてくれた。
「それは、私がマリナ様の体に入った際、記憶も一緒に確認したからにございます。<スキル・インストール>というのは、記憶の引継ぎ能力もあります。そこで確認が出来たというわけです。」
なるほど…でも、個人情報が全て筒抜けだったというわけなんだね…。
ん?もしかして私も…?
「ね、ねえマナ?私の記憶も見た…?」
マナは表情を崩さずに
「はい。もちろんにございます。それにその時に見なくとも私はマスターの"全て"を知っています。安心してくださいませ。」
マナに異世界転生者ということがバレちゃった…
それに…いじめられていたことも…。
でも気にする必要はないか~と、前向きに考えるようにした。
カナリーはマナにより転生したことを未だ知らない様子であった。
マナは黙々とカナリーに紅茶を出す準備をしていた。
日常パートです。
第7話、読んでいただきありがとうございます。