コード6「マナ」
第6話。
前回、ドラゴンを倒し、そしてマリナの元へ。
マリナの元に移動すると、気を失っていた。
だが、一刻の猶予もない。
(AIさん…!マリナを助けられますか…?お願い…!私の大切な家族なの!)
AIはマリナを助ける策がないかを思案する。
「我がマスター、現在私たちの残存魔力は先ほどのワープにて魔力をほとんど使用し、回復スキルを使用することが出来ません。ですので、大変申し上げにくいのですが、この者を完全回復させる手立ては現状、ありません。しかし私は、この者の心魂の状態も気になっています。」
そんな。それじゃあ、マリナを助けられないの…。
でも、絶対に諦めない。何か…何か方法があるはず!
そんなことを考えていると、AIも察してくれたらしく、代案を提示してくれた。
元から考えていたかのように。
「今、完全回復とまではいきませんが、現状維持及び、時間をかけての回復でしたら、可能でございます。」
どんな方法か分からないけど、もうそれにかけるしかできなかった。
(私にはその方法は分からないけど、でも、助かる方法があるのなら、お願い…!)
「かしこまりました。では、私がこの者の中に入り、時間をかけて回復させましょう。僅かに残る残存魔力の全てを使用します。スキル発動<スキル・インストール>。」
AIがマリナの体に手を当てる。そして目を閉じ、
私の体から出ているオーラが少しずつマリナの体に入っていく。
私の容姿は元に戻り、私の体の主導権が戻ってくる。
魔力枯渇により、立ち眩みがするけど、今はそんな事よりも、マリナの事が心配だった。
「どう…?大丈夫そう…?AIさん…。」
私はマリナの体に入り込んだAIに向けて語り掛けた。
AIが入り込んだマリナの目がゆっくりと開かれる。
紫色だった目が、橙色になり、目の瞳孔にひし形の模様が見える。
「インストールが完了しました。成功です。私が今この者の肉体を維持し、少しずつではありますが、肉体の回復を行っています。」
良かった…本当に良かった。マリナが死んでしまったら、
私にはもう生きる気力がなくなってしまっていたかもしれないから。
「ただ、一つだけ、懸念点が。やはり、この者の心魂にまでダメージが入っており、この者が真に目覚めるのは、まだまだ先になる可能性があります。」
心魂…どこかで聞いたことがあるような言葉に私は引っかかりを覚えた。
要はつまり、心と魂にまでダメージが入ってしまい、体が治っても
まだ目覚めなくて、回復の時間が必要ってこと…なのかな?
「心魂…うん、分かった。そこは仕方ない部分なんだね。何から何まで本当にありがとう。AIさん。」
AIは自身の胸に手を置き、目を閉じ、跪いた。
「我がマスター、その肉体が消滅しても、心魂になってでも、私は貴方様を守り、そして未来永劫どこでもどんな状況であっても、私は貴方様の絶対なる味方でございます。必ずお守りします。そんな貴女様が大切になさっているこの者、マリナ・アステライト様も死なせるわけにはいきません。」
こんなにも思ってくれて私は胸が熱くなった。
「そうだ、あなた名前は?ずっとAIさんって言ってたけど、名前とかあったりするの?みんなの前ではマリナって呼ばなきゃいけないけど、知りたいな。」
AIは考えるように少しの間を置き、
「いいえ。私には名前というものはございません。ただのAI、実態を持たないただのシステムにございます。」
それなら、正式に名前を付けてあげたいと思った。
どうしてか、私の事をマスターと呼ぶし、
あった方が絶対良いと感じたから。
私のわがままなんだけどね。
「それなら、これからあなたに名前を付けます!これは最重要命令です!どうしよっかな~、可愛い名前とか良いよね。でもかっこいい名前も良いし、あなたの魔力操作はすごかったな~。マリナ…、魔力操作…、魔力…魔力ってなんだっけ…マナ…?マリナ…マナ…。うん。決めた!」
私はAIさんに名前を付けることにした。その名前は
「AIさん、これからあなたに正式な名前を付けます!あなたの名前は、『マナ』!魔力操作すごかったし、魔力ってイメージがあったし、それにマナなら、みんなの前でも、マリナの愛称だ~って言えば、みんなの前でも呼べるでしょう?それに可愛い名前!ダメかな…?」
私渾身の名付け、もし嫌がられたら別のを考えるしかない。
だが、その必要はなかった。
AIは驚いた様子というか、感慨深い様子だった。
マナは一言。はい。と伝えるとマナの体が少し宙に浮き光り輝く。
光る小さなひし形の欠片が無からマナの前に生成される。
マナはその欠片を大事に抱えるように体の中に受け入れていく。
マナの体がドクンと鳴り、光に包まれる。
光から出てくるが、外見は特に何も変わっていなかった。
「正式に、名付けをしてくださるだなんて、ありがたき幸せにございます。私はマリナ・アステライト様のお体をお借りし、これからは、マナと名乗ります。これからも何卒宜しくお願い致します。マスター。」
マナは、本当に嬉しそうに自身の胸に手を置いて目を閉じている。
表情からは全く読み取れないけど、なんとなくすごく喜んでいるように見えた。
これから一緒に行動していくし、私の為?に動いてくれるみたいだし、
名前も持っていないと言ってたし、名付けをしたわけだけど、
なんだか、マナの"存在"が前よりより一層、強く明確に感じられた。
実はマナはただのAIから進化していた。
人工知能から『心工知能』になっていた。
カナリー・アステライトはそのことには気が付いていなかった。
心魂を持つものには名前があり、
名前を持つものには心魂がある。
愛着のあるものに、魂が宿ると言われているかのように。
マナはこの先もカナと一緒にどんどんと進化していくことだろう。
私の目標が増えた。マリナともう一度、会う事。
そして"3人"で、魔術を極め、大魔術師に。
大変な事とかあるかもしれないけど、なんとかなる
そう思えたのだった。
影でカナを支えてくれたAI。
その名前は正式に決まり、『マナ』となった。
第6話、読んでいただきありがとうございます。