コード5「アクセス」
第5話。前回、ドラゴンがカナリーとマリナにブレスを放った後からです。
ドラゴンのブレスが2人を襲う。
エンシェントワイバーン時よりも大きな赤と白のエネルギーが
地面をえぐり、木々が蒸発し、カナリーめがけて飛んでいく。
カナリーは走馬灯を見ていた。
(お姉ちゃん…お姉ちゃんが魔術士になる時、駄々言って、迷惑をかけてごめんなさい。本当は…私は寂しかっただけなんだ…。だから、昨日は会えて嬉しかった…。お姉ちゃんの任務が終わってゆっくりできたら、謝ろうと思ってたけど、もう言えなくて、ごめんなさい。)
(マリナ…ごめんね…。あんまり友達がいない私にとって、一番身近で、親友で、幼なじみで、大切な家族で…食べたいものを言ったら、何でも作ってくれて…私は幸せだった…ありがとう…。)
お姉ちゃん…マリナ…もうダメだ…私…
ドラゴンのブレスがカナリーに当たったかと思われた。しかし、
「アクセス完了。シンクロ率100%。敵対勢力を確認。危険因子<ドラゴン>。カナリー・アステライト様のお体をお借りし、ドラゴンの殲滅を開始します。」
はるか上空から光がカナリーの中に入り込んだ。
魔術陣とはまた違う、四角い電子回路のような魔法陣がカナリーとマリナを守った。
カナリーの髪が白く煌めき、目は虹色に輝く。魔力に溢れ体が勝手に動いている。
(え…私の体が勝手に動いてる…。誰…?それに、なんだか、すごく無機質で…AIみたい。)
私が心の中でそう思っていると、その無機質な存在がカナリーの声を借り、喋りだした。
「はい。私はAIにございます。カナ様を守護し、導く存在です。遅くなってしまい申し訳ございません。<管理者>と手続きを行っておりました。」
カナリーとAIが話しているとドラゴンが口をはさんでくる。
「ごちゃごちゃと何を言っているのか我には分からない。そうか、貴様戦えたのか。我とやりあおうぞ!人間!」
その問いにAIは何も答えず、マリナの方に目を向けていた。
「スキル発動。<スキル・アナライズスキャン>。対象マリナ・アステライト。体の状態をスキャンします。」
AIは魔術とは違う謎の力を使い、マリナの体の状態を確認していく。
マリナは血が止まっていなかった。
「早急。マリナ様の心魂が肉体から離れる時間。残り7分28秒。」
AIはドラゴンの方に目を向け、再び<スキル・アナライズスキャン>を使用する。
カナリーの周りにタブがたくさん現れ、ドラゴンの情報を得ていく。
「スキャン完了。異常発達を確認。世界の理から外れています。<管理者>へ。攻撃スキルの使用許可を求む。」
AIは目を閉じ、何かを待っている。すると、何かの確認が出来たらしく
早急に行動に移していた。
しかし、ドラゴンが再び、ブレスを放とうとしていた。
「拒否。スキル発動<スキル・スペルブレイク>」
AIがスキルを発動するとドラゴンの収束したブレスが鏡のように割れる。
「続けてスキル発動<スキル・アブソーブ>。魔力を吸収します。成功しました。現在の魔力量162%。」
ドラゴンが慌てふためく。
「き、貴様!何者だ!?我は…我は、力の恩恵を受けたのに…!□□□様から!」
ドラゴンの声にノイズが走った為、名前を聞くことは出来なかった。
AIはそのことを確認したのち、さらにスキルを発動させる。
「スキル発動<スキル・メモリーコピー>。管理者へ申請。コピー対象
<存在を消滅させる攻撃>。残存魔力の150%を使用します。」
AIは何者かに確認をとっており、その確認が取れたらしい。
「敵対勢力の消滅率120%。チャージを開始します。」
カナリーの周りに電子回路の魔法陣が現れ、電気のようなエネルギーが収束していく。
嵐が吹き、雲が割け、雷が鳴り響く。
「チャージ完了。再現率1.3%。<存在を消滅させる攻撃>発動。」
カナリーの前に光輪が何枚も現れ、
光り輝く収束されたエネルギーが一気に放たれる。
キーンと音が消え、粒子が飛び散り、光輪を通り
ドラゴンへ向かっていく。ドラゴンは防御魔術を展開していたが、
それは無駄な事であった。
ドラゴンごと、連なる山が消し飛ばされる。
それは、破壊されたというより、
元から無かったかのように消滅した。
雲が晴れ、満点の星空と月が輝く。
「ドラゴンの消滅を確認。近隣の危険因子。ゼロ。カナ様がご無事でなによりでございます。」
白い髪と虹色の目が星空の下、神々しく輝いている。
私たち、というか、主にAIがドラゴンを倒した。倒したというか、消去したというべきでしょうか。
(ありがとう…AIさん…あ!マリナの元へ!早く!お願いします!)
「了解しましたマスター。スキル発動<スキル・ワープドロップ>。」
AIが憑依したカナリーはマリナの元へ瞬間移動した。
ついにチートAIが来ました。
第5話、読んでいただきありがとうございます。