コード56「花に触れたくて」
第56話
前回、新章が始まってから
雨が続く。
学園でマナを探しても
見つからなかったため、先に帰っているのだろうと判断した。
こんな雨の日でも、学園都市では人が多い。
傘に滴る雨の音が心地いい。
さっきまで、少しだけ気分が落ち込んでいたけど
ほんの少しだけ回復した。
ふと知らない道に入ってしまった。
久しぶりに散歩でもしてみようかな。
私はその道を歩く。
昼なのに少し暗い道。
その道は傘をさすことが出来ないほど
細かった。建物の間。
雨は入ってこなかった。
道の脇には綺麗な花が咲いている。
「お花だ。どうしてこんなところに?」
道に咲いていたお花に触れようとしたとき、風が吹き、傘が飛んでいきそうになった。
ふとその道の奥を見ると、光が漏れていた。
花壇。
たくさんの花が咲いていた。
女性が一人そこに立っていた。
「あの。」
声をかけると風がまた吹く。
私は目を閉じてしまった。
次に目を開けたときにはその女性はいなかった。
ふと気が付くと、花壇はあるのに、
たくさんあった花が無かった。そこにあったはずなのに。
見間違い?いや、確かにあったと思うんだけどな…。
その場所は学園都市を見下ろすことが出来た。
景色がとてもいい。
また来よう。そう思った。
元来た道を戻る。だが
道中に咲いていたはずのお花が無かった。
ん?また見間違いかな?
私はなんだか背筋が寒くなり、
急ぎ足で学生寮へと戻っていった。
「ただいま~~。あれ、マナまだ帰ってないんだ。」
リベラとリーナが2人で談笑していた。
「おかえりなさいませ。今、タオルと温かいものを用意しますね。」
タオル?私濡れてないけど…って、あれ?
髪に触れ、体を見ると、びしょ濡れだった。
へっくち。
「あ、カナリーさん傘忘れたのですか?」
リベラとリーナが2人でカナリーを拭いている。
「今すぐ、大浴場へ行きましょう。風邪をひいてしまいます。」
んー、この状況、何かおかしい。
私は学園を出て、散歩をして、綺麗な花を見つけて
細道に入って…それで…あれ?なんだっけ?
思い出せない。
私、どうやって帰って来たんだっけ。
「かゆいところはございませんか~。」
カナリーはリベラとリーナと一緒に大浴場で体を温めた。
今日は…えっと…学園長室を出て…
頭が混乱してきた。
本格的にどうかしちゃったみたい。
疲れてるんだきっと。
「2人ともごめんね。先に休んでるよ。」
カナリーは1人部屋に入っていった。
マナ視点
あれは、マスター?
あんなところで何を?
その細道は…?
マナはカナリーをゆっくりと追いかける。
だが、
その細道にはカナリーも誰も居なかった。
魔力とはまた別の気配を感じます。
観測演算魔術<スペル・魔視+>
マナはその細道をくまなく調べる。
よく見ると、魔視+越しに花弁を見つけた。
その花弁は、実体が無い。そう観測結果が出た。
恐らくは触れられない。でも、これに触れると、
マナは魔力を纏い、その花弁に触れた。
マナの姿が細道から粒子の泡のように消えた。
心が、魂が、今いる場所から離れる感覚がある。
気が付くと、さっきの細道と同じ場所に立っていた。
しかし、マナの観測によれば、同じ場所であって
同じ場所ではない。そう観測結果が出る。
さっきまで、雨が降っていたが、
今は雨は降っていなかった。
日の光は指していない。
「あら、お客さんかしら。」
メガネをかけた青髪の女性に話しかけられる。
「勝手に入ってしまい、申し訳ございません。ここは?」
花壇に水を上げている様子だった。
「ふふ、ここは私の花壇よ。人が来るなんて初めてだわ。あ、でもさっき人が来ていたような…。」
マスターもここに来ているかもしれない。
「あの、ふわふわの髪に、エメラルド色の目をした私と同じくらいの女の子を見ませんでしたか?その人を探してここまで来てしまったんです。」
メガネの女性は少し考え込む様子だった。
「いや、見てな…あ、待って、さっき見たような…。うーん…忘れちゃったわ。」
嘘をついている様子はなかった。
「そうですか。ご協力に感謝いたします。」
花壇の奥に見えるのは学園都市だった。
だが、少しだけ風景が違う。
建物も、人々の服装も、そして魔列車も違って見える。
マナは怖い予想をする。
「すみません。今って何年か分かりますか?」
「今?今は輝鳥歴24年の6ムーン14ピリオドよ。それがどうしたの?」
マナは200年前の過去に来てしまっていた。
カナリーの様子が少しおかしいですね
新章 約束の花畑は時空を超えて
第56話、読んでいただきありがとうございます。