コード36「想いは2本の剣となって」
第36話
前回、リベラとベアトリクスの昔話をした後から
リベラの中のベアトリクスは深層心理の中で考える。
リベラが眠った時、外に出た瞬間、今までに溜まりに溜まった数千年分の怒りの感情が大爆発し、
今回の事が起こってしまった。
怒りの感情に満たされ過ぎて、喋ることもできなかった。
いや、本当は邪龍の邪悪な魔力を魔剣が吸っていたのだろう。
魔力によって性格まで作用されるとは。
カナリー・アステライトと言ったか。
こんなに強い人に会えるだなんて思わなかった。
本当は、ずっとリベラの中で現世界を見ていた。
もう復讐をする必要なんてない。
自分はもう過去の人物なのだと。
リベラに体を乗っ取られたが、もう全てリベラに任せよう。
そう思っていた。
でも、今回の事があり、また外に出たいと思ってしまった。
カナリー・アステライト。
この子とまた戦いたい。
私は過去に誰にも負けなかった。
リベンジがしたい。と思うと同時に
きっと私は彼女に勝てない。
最後の彼女の光の剣を斬ることが出来なかった。
もし、また機会があれば、もう一度会いたい…。
これはきっと一目惚れだ。
私はあの子に会いたい。
不思議な子だ。カナリー・アステライト…。
あの子はそう遠くない未来できっと
きっとこの世界を…。そんなあの子を近くで見ていたい。
もし誰かの剣になるのなら、私は…
深層心理の底の隙間からベアトリクスは現世界を観察していた。
ベアトリクスはカナリーの魔力を吸収し、怒り憎しみ苦しみ負の感情、
その全てが浄化されていた。
「おはようございます!朝ですよ~!起きてください!」
ベッドで寝ていると、体に誰かが覆いかぶさってくるのを感じた。
「…ん…あぁ…昨日は、疲れて、眠りそうになっちゃったです。おはようです。」
「え?今完全に眠ってましたよ?ね?マナ?」
2人はマナの方を見る。
「えぇ、リベラ様は完全に眠りに落ちていました。その様子だと、ベアトリクス様と交代していないのですね。私達はリベラ様が次に目を覚ました時、ベアトリクス様が出てくるものだと思っていましたが。」
リベラも不思議に思っていた。眠れば、ベアトリクスと交代してしまうと思っていたが、
その性質が少し変わったらしい。
リベラは心の奥底まで見る。
詳しくは言えないようだが、今はとりあえずは起きてこない。らしい。
「ん…じゃあ…昨夜の話の続きを…」
「ちょっと待ってください…朝ごはん食べに行きませんか?」
カナリーが一旦制止に入る。カナリーとリベラのお腹が鳴った。
今回の朝食は、喫茶店バリーシュタインにて、
彩り果物ジャムのパンケーキとフレーバーティーだった。
喫茶店に来る道中では、昨夜の事件についての号外が出回っていた。
【号外!大事件連発!?廃棄都市爆発事故!?工場が爆発した模様!?】
【オレスティエ奥地の山が2つに割れる!?海が裂ける等の現象も確認!】
【魔女の出現報告!魔術師達の高等魔術にて討伐!】
【はるか上空にて、光を確認!大魔女や大精霊、魔王、龍王達の戦いか!?】
新聞には色々な事が書かれているのをマナがフレーバーティーを飲みながら黙々と読んでいた。
3人は朝食を済ませたのち、
学園都市を散策しながらリベラはゆっくりと話し始めた。
リベラはベアトリクスに入った後、数千年が経ち、ロードベルト国の諜報員になっていた。
ベアトリクスほどではないにしろ、力を持ち、どこの勢力にも属しておらず
魔術戦争にも出ていなかったため、諜報員にならないかと誘われたらしい。
「魔女をも倒せると言ったリーダーの元に居れば、私も安心できると思ったです。」
(まあ、本気で止めれるとは思っていなかったですが。)
諜報員がなぜ魔剣ノ魔女の事を知っていたのかは詮索せずにいた。
恐らくは、古い文献を目にし、その力を国の力にしたいと同時に
強大な力を監視する為であったと思われる。
問題が生じれば、消せば良いと思っていたことだろう。
消せるはずもないのに。
ロードベルト国、諜報機関『ルナリア』。
国を守護したり、他国の情報を秘密裏に集めたり、
また、暗部のような部署もあったという。
資金面は、なんとレストガーデングループが出資しているとのことだった。
基本的には、ロードベルト国の為に動く組織らしい。
リベラは力を見込まれ、諜報員の中でも処刑人として活躍していたとのこと。
「そして、貴方たちが探しているそのフィリナと言う者は恐らくうちのルナリアに所属していた者と同じ人物だと思うです。」
フィリナは諜報員として、ルナリアに所属していたらしい。
「え?ちょっと待ってください。フィリナちゃんって、6歳くらいですよね?あれ?」
「いや、フィリナはそんな年ではないです。見積もっても16~18歳くらいだと思うです。」
ここで、落下の魔人との矛盾点をマナは察した。
カナリーは勘違いをしていたのだった。
歩いていると、展望都市エリアに着いていた。
「フィリナはルナリアを裏切ったです。どうして裏切ったのかは分かりませんが、そんな彼女を追跡せよと命令を受けた私が追っていたのです。その任務の裏側では、私は彼女の処刑を命じられていたです。本気で処刑するつもりはなかったです。彼女を国外に逃がそうと考えてたです。まあ、今となっては私の方が、見つかれば危ういかもしれませんけどね。しかし、処刑人は誰にも顔を晒さないことが決まりとなってるです。リーダー以外には。」
魔女もろともリベラは死んだと思われている。
その方が都合が良い。追われなくて済むため。
「でも、そんな大切な情報をどうして私達に?」
素朴な疑問を投げかけたが、リベラは少しだけ悲しそうに話した。
「…昨日は貴方達の話から、ルナリアはきっと私を切り捨てたに違いないです。私はもう組織にとって必要ないようです。話すか話さないか、本当は迷ったです。私も組織の端くれだった身。秘密を簡単にぺらぺらと話すべきではない。そう思うと同時に、私は貴方達にも嘘はつきたくないとも思ったです。カナリーさんは私達を殺すことなんて造作もなかったと思うです。しかし私と…私の中に眠るベアトリクスを助けてくれた。それは組織よりも、そっちの方が私達にとっての大切な事、優先するべき事だと判断したです。改めて本当にありがとうです。だから、貴方達に全てを話したかったのです。嘘偽りなく、全てを。」
その目には、ある種の決意のようなものを感じ取った。
「そんな…殺すなんてしませんよ…。」
リベラはそれと同時に少しだけ寂しそうな表情をした。
その顔をカナリーは見逃さなかった。
「リベラさんは、今後どうするのですか?ルナリアに見つかればあなたは…。」
リベラは天を仰ぎ、考え込む。空が暗くなりつつある。
「どうするべきか、迷っています。秘密を全て話した身、もう組織には戻れないです。だから行く当ても…。」
カナリーは思い切ったことをリベラに話した。
「…じゃあ…私達と一緒に学園生活を送りませんか?」
リベラはきょとんとした顔になる。
今まで闇の仕事をしてきた私が、こんなにも眩しい場所で
身を置いてもいいのだろうか。
全てを話したのち、リベラは去ろうとしていた。
国を出て、どこか遠い所へ。
誰の目も届かずに、組織から逃げるように。
だが、学園生活と聞き、迷いが生まれる。
こんな私が、学園生活を送っても良いです…?
本当は憧れていた。あんなにキラキラとした世界で、
みんなが楽しそうに学園生活を青春を謳歌している。
そんな様子を外からずっと見ていた。
私も違う世界では学園生活を送っていたのだろうか。
そんなことを昔は考えていた。
「ほ…本当は…私は…」
カナリーとマナは寄り添うように話を聞いている。
胸の奥に秘めた想いを、解放する。
「学園生活を送ってみたい…です。」
「聞かせてくれてありがとう。私も一緒に学びたいな、オービット魔術学園で!」
「そして、リベラさん、もし良かったら私達と友達になってください!一緒に居よう?」
リベラは手を差し出される。その手を見つめながら、
目頭が熱くなる。どうしてこの人はこんなにも。
ずっと我慢していたものが決壊しそうになる。
あぁ…そんなこと言われたら、断るに断れないです。
それに、悪魔種と聞いても、変わらずに接してくれている。
こんな人見た事…ないです。悪魔種は…実体を持たない。
実体に入り込む性質上、乗っ取っている。そう捉えられてしまう。
正体を言えば私達は過去、他種族に…。
この人は真っすぐに、正面からぶつかってくれた。
正直で、何よりも、優しくて…あたたかい…。
私は…この人の事が……
暗くなり始めた空には、一番星が出てきている。
「はい。」
リベラは涙を浮かべながら、ただ一言そう言い、
カナリーの手を取った。
「やったー!リベラさんも一緒だ~!」
自分のことのように喜ぶカナリーの姿があった。
カナリーはリベラを抱きしめる。
リベラはほんの少しだけ恥ずかしそうにしていた。
「マスター、本当に良かったですね。しかし、リベラ様にはまず編入試験を突破して頂かないとです。」
「あ、そうだった。えへへ…でもね、ここで言わないと、もうリベラさんと絶対会えないような気がしたから。だからとってもとっても嬉しいんだ!」
カナリーは満天の笑顔で答えた。
心の奥底で、この人に付いていきたい。
この先も、ずっと、どこまでも。
あなた様の剣となります。
リベラとベアトリクスはそう思うのだった。
悪魔種は他種族からは相当に嫌われていました。
ここで言えないようなことをされたり
言われたり、彼らは現世界では圧倒的に生きづらいでしょう。
だが、その事実は過去のことであり、今ではその風習も薄れてきている。
第36話、読んでいただきありがとうございます。




