コード250「砂中から這い出るもの」
第250話
前回、レールの修復作戦を開始して
それぞれがデュンワーム・ビィと相対し、
各々のやり方で掃討している。
「やぁぁぁぁ!<スキル・サイドアウト>!か~ら~の!<スキル・クロープレス>!」
岩井 祈里の柔道とスキルの組み合わせ技が炸裂する。
巨体で、人型でもないのだが、祈里は大外刈りをかけ、
そして、そのまま、魔力を込め、掴み、地面に叩きつける。
砂煙が立ち上る。
「岩井さん!体力管理は平気!?それだとすぐにばてちゃうわよ!」
羽島に心配される祈里は自身の体力の事を一瞬忘れていた。
「あ!ごめんごめん!うっかり忘れてた~!出来るだけ抑えないとだね!うおー!」
デュンワーム・ビィに向かって突っ込む祈里であった。
羽島はそんな岩井の様子を見て、額に手を当てる。
(まったく…あの子、抑えてって言ってるのに。)
羽島は他サイドも見渡す。
(勇者組の他で…心配な子と言ったら…あ、居た…。)
空中を蹴り駆ける少女が居た。
「えへへっ!行くぞ~!いーんちょー達が頑張ってる間にっ!ふん!
<スキル・エアスタンプ>!」
五十嵐 遥 空気系スキル。
空気を操るスキルを持っており、スキルの種類は多種多様。
空気を攻撃だけでなく、防御にも使えるのが強力。
結界スキルとまでは行かないが、風を操り、簡易的な結界を作り出す事も可能である。
「おーい!しおりーん!がんばー!応援してるよー!」
ピースを向けている。
ここ戦地って事、忘れてない?
「あの子も…元気が良いんだから。」
羽島が五十嵐の背後の魔物に向け矢を放ち、即座に回収し援護していた。
「ふぅ…。スキャンして分かったけど、こっちの群れは掃討したみたい。そっち手伝うよ。」
天音ユウリは全てを斬り、他戦闘が苦手な者らに駆け寄る。
そこに魔物達が群がっており、即座に走り出す。
「<スキル・ジャストスラッシュ>!エドガーさん、保科さん、小張さん、大丈夫?」
一閃で、4体のデュンワーム・ビィを全て斬り裂いた。
小張が結界を張り、そこに、保科、エドガーが待機している。
「あれ…?これは…ドーム状の結界…。ここに入っていたんだ。」
「はい。私の結界で、皆さんを。この結界内に居れば私達は安全なので、お気になさらずに。他のみんなを手伝ってあげてください。」
天音ユウリはコクリと頷き、一旦、作業中の黒見藍達を見に来た。
「修理組は進んでる?こちらは、問題なく防衛出来てるよ。そちらの状況を知れたらなって思ってるけど。」
作業をしながら、顔は向けずに口だけを動かして
「こちらは、現在30%が終わっています!あと70%ですね。魔物の群れが多いかと思いますが、お互いに頑張りましょう!」
それぞれが集まって修理しているわけでは無く、
少し離れた場所で4名は修理を行っている。
4名を守るように、それぞれがポイント別に防衛をしている。
黒見藍地点には、
ナカ、セリン、フェニが守っており、
十六夜栞地点には、
岩井祈里、長谷川夏未が守っている。
橘環菜地点には、
小張が張った結界で完全に守られており、
そこに保科、エドガーが居る。
取替 莉央地点には、
五十嵐が簡易結界を取替に施しており、
少し離れた位置で羽島が援護している。
(うん…これなら、みんな無事に終わりそうだ。私は…。スキャン範囲を広げて…デュンワームの成体を探そう…。
<スキル・エリアスキャン>。)
天音ユウリの脳内に、レーダー表示で敵影が映し出されていく。
(デュンワーム・ビィの数は…合計…56体。結構多いな…この中のどこかに成体が居るのか…ん?地中に…大きな反応が…)
天音ユウリは思考する。
これは、橘環菜の居る地点だと。
(ん…?橘…環菜…。確か、結界…を張っている地点…。地中から…?はっ!)
「まずい!!!ドーム状の結界は、下からの攻撃に弱い!!くっ!間に合うか!?
<スキル・疾走一閃>レベル3!!!」
3連撃を何度も繰り出し、天音ユウリは橘環菜の元へ走る。
「逃げて~~~~!!!!!!!!!」
天音ユウリのその叫びで、全員が橘地点に目を向ける。
すると、地面から、巨大なデュンワームが現れる。
「オォォォォォォォン………」
橘環菜が上空に打ち上げられ、デュンワームが大口を開ける。
(くそっ!ミスった…後手に回ってしまった…!足に魔力を乗せて……疾走一閃を繋いで…あの子の元に!)
しかし、天音ユウリの地点からだと、間に合わない。
「今度は……私の足なら!!!届くんだ!!!もう負けたくないから!
<スキル・チャージダッシュ>!!!!」
長谷川夏未がスキルを溜め、一気に解放し、砂埃が爆発したかのように舞う。
橘環菜を抱きしめ、空を駆け抜けた。
「もっと…早く助けなさいよぉ…ばかぁ!でも、ありがとう…。」
長谷川は鼻をかき、助けられた事に安堵する。
他の者達も一安心するのだが、
「待って。デュンワーム、どこ行った!?」
今度は…逃がさない!!!
天音ユウリが走りながらエリアスキャンをかける。
大きな穴の中から、どこに向かったのかを、
デュンワームの魔力に全集中する。
「見つけた!!!黒見藍!気を付けて!その地点のみんな!彼女を!」
ナカ、セリン、フェニが臨戦態勢を取る。
黒見藍はその声を聞くが、作業を止めない。
「皆さんを…信じます!」
黒見藍の周りに3名とも、集まり、地面を注視する。
地面が揺れる。だが、黒見藍は集中して、手元を狂わせない。
「黒星の鍵杖!お願い!!!」
"スキル発動<スキル・ナイトベイト>"
少し離れた位置にて、ナカが誘導スキルを発動する。
(ここなら…!)
地面が割れ、ナカの下から、デュンワームが飛び出してくる。
「オォォォォォォォン………」
ナカがデュンワームによって打ち上げられる。
空中で体勢を立て直し、
黒星の鍵杖を構える。
この子に…フルスイングを!!
だが…
そんなデュンワームを下から掴む腕がナカから見えた。
え?今のは…
飛び出したデュンワームが引きずられたかと思うと、
突然、地面が大爆発し、砂煙が上がる。
「くっ!な、なに!?」
飛び上がったナカが地面を見ると、
そこから二つの光る眼が輝き、
「はっ!?」
赤い"ブレス"がナカに向け浴びせられてしまった。
空に昇る炎の柱。
「グルルルゥ…」
獣…いや、まるで恐竜が唸っているかのような声。
「グオオオォォォォォォン!!!!!」
砂と同色の姿をした、ドラゴンが地中から現れる。
そのドラゴンの口元には、デュンワームの血が付着しており、
それが不気味に光る。
ドラゴンは口に着いたデュンワームの血を舐め取り、咀嚼する。
「ナカちゃん!!!!!!!!!」
皆がナカの無事を祈る。
炎の中から、丸い結界が現れる。
"間に合いました。<スキル・ボールシールド>。マスター、想定外の事態です。非殺傷制圧の成功率6%。現在生存率28%。すみません、マスター。
<スキル・インストール>。"
ナカの目の色が変わり、黒星の鍵杖が入り込み雰囲気が変わる。
「インストール完了。反撃開始します。」
勇者達の奮闘も輝いて見えますね。
デュンワーム・ビィの群れの中から、デュンワームが現れるが、
そいつを喰らい出でるはドラゴン。
ナカの中に入った黒星の鍵杖。
大砂漠のドラゴン戦が始まります。
第250話、読んでいただきありがとうございます。




