コード243「ソリナの初調査です!」
第243話
前回、パーティーが無事に終わり
数週間後。
裏地が青で白を基調としたデザインのパーカーコートを着た調査員達が
調査の為、とある地方へと赴いていた。
場面は、ある国の砂漠の上。
レールが敷き詰められており、
ソリナの調査員達は、ある魔物の襲撃を受けていた。
「はぁ…!はぁ…!ナカちゃん、もっと早く走って!捕まっちゃうよ!」
長谷川夏未。移動系スキルの持ち主であり、元陸上部。
彼女は砂漠を走っていると、謎の地響きが起こっており、
長谷川には特定の魔物を誘導する役割があった。
[勇者様方。群れが来ます。]
長谷川夏未とアイトリナカの2人は、共に走っている。
そうして、彼女らの背後からは、巨大なミミズのような、
蛇のような魔物が現れた。
"マスター、あれは、デュンワーム・ビィの群れです。成体前の個体ですね。幼体でありながらあの巨体。果たして成体はどれほど大きいのか、気になります。"
「黒星の鍵杖!今はそんな場合じゃないよ!!あの子達、めちゃくちゃ追いかけて来る!解決策はなにかない!?」
そう言われ、黒星の鍵杖は全力で演算するのだが
"解析鑑定の結果、デュンワーム・ビィの甲殻は非情に頑丈であると予想されますが、日光に弱いと結果が出ました。朝になるまで待つか、私に変わっていただければ何とか1体くらいなら、倒せます。"
私達を追いかけて来てるのは、デュンワーム・ビィの群れだ。
幅約2m。体長約10m。
これが幼体の砂のワーム。
大きすぎる。
この一帯、魔物除けの魔道具が壊れてしまっているらしく、
デュンワーム・ビィが住み着き、奴らが多く生息してしまっている。
その為、彼女らに調査の依頼が入ることになる。
これを出したのは、大国の王であり、
オリヴィアが見つけて来た案件であった。
砂漠地帯。シィルトレイル大砂漠。
シィルトレイルは広大な砂漠地帯。
近隣にポカムッカ国というオアシスのある都市が存在しているのだが、
シィルトレイルの1割も無い。
地図としての場所は中央大陸の南西辺りに位置しており、
ボルザインよりも南に位置している。
調査に出る少し前の事
ターミナルベースに1通の手紙が届く。
その手紙の差出人は、ロードベルトの王。
オリヴィア・ステラ・ロードベルトからだった。
内容としては、
「ソリナの発足、改めておめでとうございます。早速ですが、こちらから依頼をしたいと思っており、ある場所の調査を行って頂きたいのです。シィルトレイル大砂漠。そこは魔列車が通るだけの運送に通るだけの場所なのですが、ある時、レールが完全に消えてしまっていたのです。幸いにも、運転手等は救助隊に救助されたようですが、何故レールが消えたのか。それを調査してきて欲しいのです。もしかすれば、魔物狂乱に関係しているかもしれないので、ソリナの任務として、正式に依頼したいと思っています。よろしくお願いしますね。あ、そうそう…、日中は肌が焼ける程暑いのと、夜は逆に冷えますので、十分にお気を付けくださいね。」
という内容であった。
その為、初回という事で、行ける者達で準備を整えて調査に赴いたのだった。
3年α組の面々は、半数。もう半数はターミナルベースで待機する形となった。
また、今回、男性職員のエドガーが同行している。
彼は砂漠地帯にも来た事があるとの事で、今回同行している。
メンバーは、黒見藍を含むα組半数(10名程)、天音ユウリ、ナカ、セリン、フェニ、エドガーとなっている。
調査に来た時までは順調であった。
レール部分が消えているポイントまでは魔列車を乗り継いで来れた為、
何の問題も無かった。
だが、
「この辺りって…、見晴らしが良すぎますね…。もし、魔物なんかに襲われでもしたら…。」
黒見藍は辺りを警戒する。今、襲撃でもされれば、ひとたまりもない。
「委員長…それ、フラグ…。」
すると、辺り一面から、大量のデュンワーム・ビィが飛び出してくる。
それに対して、長谷川夏未がスキルを使い、奴らを引き寄せる。
「スキル発動!<スキル・ベイティング>!さらに!<スキル・チャージダッシュ>!」
ナカも黒星の鍵杖に掴まり、ほんの少し宙を浮きながら
夏未と共にワームを引き寄せていった。
そして、現在に至る。
私の今の魔力は少ないから…宙浮けなくなっちゃった…!
でも、少しなら体内の魔力を筋力に変えて、走れる!
にしても、数が多すぎない?もしかして…全部ついて来てる?
多くのワームの幼体が砂漠を泳ぎながらこちらに迫ってきている。
(はぁ…はぁ…、こんなに追いかけられるなんて思ってなかった…!まるでアニメ映画の…虫みたいなのの群れだ。それに、ここは砂漠で身を隠せそうなところも無いし…チャージダッシュが…切れちゃう……!もう…ダメ…!)
長谷川夏未がつまづいてしまい、砂にダイブしてしまう。
「長谷川さん!!!」
ナカが反転し、長谷川に向けて手を伸ばす。
デュンワーム・ビィが長谷川に向けて大口を開け、
飲み込もう……としたその瞬間、
背後から一筋の光が走る。
「<スキル・疾走一閃>レベル…1!」
天音ユウリが剣を抜き、飛んでくる。
そうして、そのまま、デュンワーム・ビィを斬り裂いた。
先頭に居たデュンワーム・ビィが絶命すると、
後ろに居た群れ達が何故か霧散していった。
「ユウリさぁぁぁぁん…!」
長谷川は天音ユウリに抱きつき、無事を安堵する。
ユウリは仕方なさそうに彼女の頭を撫でているのだが、
「一人で走ったらダメ。ワームは基本的に群れで行動するから。追いつけて良かった。」
ユウリは魔力運用で2人を追いかけていた。
そして、ギリギリ届く範囲にて、<スキル・疾走一閃>を使用。
これは、抜刀時にのみに直線に加速する勇者系ユウリ専用スキルであり、
このスキルによって、長谷川を救う事が出来た。
「流石は元勇者さん…、全然違うなぁ!すごい…それに、ものすごく早かった。私のチャージダッシュよりも…。」
3年α組の現在の勇者レベルは12。少しずつ全体で上がっているのだが、
天音ユウリの勇者レベルは35。魔物などを効率的に倒してきたおかげで、
彼女のレベルも上がっていた。
「それは、勇者レベルによるものだろうから、気にしないで。あなたも私のレベルまで来たら、多分私でも追いつけなくなると思うし。だって、移動系スキルでしょう?」
天音ユウリは長谷川夏未を励ますのだが、ナカは黙っていた。
長谷川夏未がレベル30まで行くときには、天音ユウリは更にレベルを上げているだろうに。と。
「へぇ~レベルなんてあるんですね~。まるでゲームみたい。」
そんな些細な言葉をナカはポツリと呟いた。
長谷川夏未と天音ユウリはナカを見る。
(ナカちゃん…勇者レベル上げてないのかな?経験値たくさん溜まってそう。)
(この子…本当に勇者…?それとも、別経由で来た子なのか…。)
ナカはそんな2人の視線を感じ、無邪気に笑っていた。
そこへ、置いてきた調査隊が無事に合流する事が出来た。
ソリナのみんなは彼女らが調査員だと分かるように、
専用の服を作ったようですね。
改めて、今回の調査メンバー紹介。
黒見藍を含むアルファ組10名程。
天音ユウリ
アイトリ ナカ
セリン
フェニ・アステライト
エドガー・マーブルブラック
他のみんなはお留守番です。
デュンワーム・ビィ。
デュンワームの幼体であり、普段はもっと地中に潜っていたりするのだが、
今は何故か地上に上がってきており、数も割と多く、厄介な魔物。
砂漠地帯、シィルトレイル大砂漠。
ボルザインより南ではあるが、少し西側に位置している為、
ヴォルグウッズにも多少近い場所となっている。
第243話、読んでいただきありがとうございます。




