コード221「半巨人、巫女王、天麗翼」
第221話
前回、大国の情勢へと移り
「ありがとうございます。では、次の大国に移ります。ヨトンリル国より、
トリム・ステラ・ヨトンリル王子殿下。
主に半巨人種の多くが住んでいるとされている国であり、
歴史的巨大建造物が多く存在しています。
国の情勢をお願い致します。」
そう言われると、身長の高いイケメンの王子が現れる。
巨人種と言ったが、現在は半巨人種が国民の過半数を占めている。
一部の巨人種は、深い森の中で過ごしていたりしている。
「ご紹介、感謝します。私はヨトンリル代表として来た、トリムと申します。至らない点があればすみません。では、国の現状からお伝えします。我が国も魔物被害は他国とほとんど同じ状況です。更に、貨物魔列車の線路がつい先日、謎の消滅現象があったと報告が上がっております。」
その言葉により、どよめきが上がった。
魔列車の線路。
魔石を加工し、作っている為、
通常壊れることが無い強固なレールとなっている。
そのはずだが、消滅した。
「原因は現在究明中です。幸いにも、他ルートがまだ使えるので、問題はありませんが、我が国では重要視しております。魔物と何か関係があるかは分かりませんが。以上です。」
ルールアンカーはその事態について、考え込んでいた。
(…通常、都市外の魔列車のレールは条約により魔鉱石によって強く作られているはず。手を抜いていたとは考えにくい。では、何故。魔物の仕業…?いえ、魔物だったなら、レールを壊せるはずはありません。あれは…力技で壊せるものじゃない。魔物の突然変異種でしょうか。もしくは、新種でしょうか。優先順位が高い事案です。)
「ありがとうございます。その情報はこちらとしても、見過ごせない案件ですので、後日、王立司書委員会からそちらへ人員を派遣します。申し訳ありませんが、決定事項とさせていただきます。」
ある紙に、ルールアンカーが何か書き込むと、その紙が転送される。
その様子を王達は見届けた。
「ありがとうございます。次に移ります。ニブルティスより、
スノウ・ステラ・ニブルティス巫女王殿下。
遥か北の凍極の国であり、常に雪の降る土地ですが、
様々な観光地があり、同時に美しくもあり非常に人気とされています。
国の情勢をお願い致します。」
ニブルティスでは、独自の風習があり、
能力ある女児を巫女として数人選定し、
その巫女の中で一人を王として担ぎ上げる風習がある。
やり方はここでは言わないが。
「…はい。私が、23代目スノウです。我が国の情勢としては…少し待ってくださいね。」
23代目スノウは見た目がかなり若いように見える。
最近、変わったようだ。
見た目は学生と変わらないような子供にしか見えない。
「ありました。えぇと…、魔物被害による観光地の売り上げが下がっているのと、果物の運送において、この間、盗難被害があったみたいで…えっ、これは読まなくても良い?でも……分かりました。えぇと…、必要な事…。あ、つい先日、勇者さん達を迎える事が出来ました。」
会場がざわめく。
勇者。それは、魔王の誕生と共に現れる存在。
遠い過去において、勇者と魔王がぶつかった時代もあったようだが、
現在の魔王達は争いをせず、精魔界のみを拠点としている。
それに、フィロスの誓約の件もあり、魔王は現世界を脅かしてはならない。
敵対する理由が無い。
だが、ニブルティスの大人がスノウを睨みつけている。
「スノウ様、私が変わります。やはり、代表が変わって間もないから、スノウ様は慣れていないようですね。もう良いですよ。」
物凄い圧をスノウに向ける。
会場が、冷たくなっていく。
そして、風が吹き、大国の円卓が凍り付き始める。
(いけない。これは、まずい。)
「ニブルティス大臣、サイモン殿。ここは、王達による会議と同時に、意見交換会で…」
と、ルールアンカーが続けようとしたその時
「…はぁ、サイモン。黙って。あなたの出る幕じゃないの。ニブルティスが舐められるでしょう。恥を知って。下がりなさい。」
スノウが、サイモンの方を見ずに言葉を放ち、雰囲気が変わっている。
吹雪が止んでいく。
スノウは、顔を上げると、書類がパキパキと音を立てて、
砕け散ってしまった。
「あぁっ、すみません…!すみません…!また…壊しちゃった。」
雰囲気が元に戻っていた。
「大丈夫ですよ。複写されたものがありますから。安心してくださいね。スノウ様。」
ルールアンカーは必死にスノウをなだめる。
落ち着いたようだ。
もし、スノウが本気だったなら、大国以外の王の誰かが死んでいたかもしれない。
子供のような見た目だが、スノウも王としての一人。
その責任を持って、この場に赴いている。
「現状は把握しました。伝えてくださって、ありがとうございます。次に移りますね。」
ルールアンカーはスノウに向け優しい顔を向ける。
サイモンは苛立っているように見えた。
なぜ、勇者の存在を隠したかったのか、サイモンは何を考えているのか
それはまた別のお話。
「では、次の大国です。ハイブヘイヴンより、
マヤリース・ステラ・ハイブヘイヴン女王殿下。
浮遊大島その全てがハイブヘイヴン国とされており、
世界のあちこちを移動しているその島は、
天候に左右されない国であると言われています。
国の情勢をお願い致します。」
マヤリースには、綺麗な羽があり、折りたたまれており、
彼女の目はクリスタルのように輝いている。
「は~い。私の番ですね~。んー。浮遊魔石の物価が上がっている事と、人の出入りが以前よりも激しくなった事、居住地としてハイブヘイヴンにずっと居たいと居座る者も増えたとか。魔物騒ぎのせいでしょうね。まあでも、あまり心配するような事はないです。魔物に関して言うなら、うちの防衛は完璧ですから、特に問題ないですね。」
ルールアンカーはメモをとる。
(浮遊石…、飛空艇に主に使われている魔石の一種。それの物価が上がっている。)
何かが引っかかる。ルールアンカーは頭の隅に置いておくことにていた。
「ありがとうございます。浮遊大島は数もありますし、大きいですからね。防衛も問題ないとの事把握しました。」
残す事、ロードベルトとなる。
皆が、ある一点に注目する事となった。
トリム。半巨人であり、ヨトンリルの王子。
しっかり者の王子。国の政治なんかも担当している。
国王はこの場に来ていない。
スノウ。ニブルティスの巫女王。若くて頼りないかと思われたが、
案外しっかりしており、至らない部下を叱れる。
マヤリース。種族は不明だが、羽を持っている。ハーピィとはまた違う。
ハイブヘイヴンの女王をやりつつ、セレスティア天術学園のトップもしている。
割と多忙である。
浮遊石の物価が上がっている事に、ルールアンカーは引っかかっている。
第221話、読んでいただきありがとうございます。




