コード209「……あいあおう。」
第209話
前回、サラセニアの魔物を浄化して
サラセニアの魔物はきょとんとナカ達を見つめており、
もう、襲ってくる気配が無かった。
ナカの作戦、花の魔物の中から浄化するという作戦が上手く行くと、
黒い液体をもう吐いていない。
"マスター、分析が完了しました。"
黒星の鍵杖によると、黒い液体は、
魔力核から漏れ出ているものらしく、
魔物の活性化に関係しているとの事。
"比較対象が怪鳥の魔物しか居ませんでしたが、あの個体も、いわゆる興奮状態でした。そして、今目の前に居る個体、サラセニアの魔物は興奮状態+魔力増幅されていました。その影響で苦しんでいたようで、体内の魔力を浄化する事で現在落ち着いたようです。何故、興奮状態なのか、そして魔力増幅されていたのかは、未知数です。"
黒星の鍵杖が鑑定してくれたおかげで、
異常状態を解除することが出来た。
「キリシーさん、ケリーちゃん、多分大丈夫。もう襲ってこないと思う。」
2人に事情を説明する。
鑑定が出来ること。
魔物が異常状態だったこと。
花の魔物を浄化する事で、鎮静化することが出来たこと。
「あぁ~。あぅ?あぁ!」
人の言葉を話す事が出来ないが、
花の魔物はスッキリした顔をしており、
3人に感謝しているようだった。
「本当に大丈夫なのよね…?」
キリシーは未だ警戒をしていたが、
「きっと大丈夫だよ。この子、もう怯えてないみたいだし、それに…なんだか、ほっとけない。」
ケリーは、その花の魔物に寄り添う。
サラセニアの魔物は、優しく蔓をケリーやナカに巻き付ける。
「ほら、もう、大丈夫。大丈夫だよ。」
ケリーやナカの2人はその蔓を優しく撫でる。
……あいあおう。
ナカの脳内で声が響いた。
サラセニアの魔物がナカの方を見ている。
これは…魔物の声…?
"解析不能。心魂があるとは思えません。"
"ですが…、私にも、心魂はありません。同じです。"
そう言われて、少し悲しくなった。
そんな事ないよ。って黒星の鍵杖や、
サラセニアの魔物に伝えようとする。
黒星の鍵杖には声が届いても、
なにも返ってこない。
サラセニアの魔物は、首をかしげている。
「私は信じてるから。」
声に出して、サラセニアの魔物と、黒星の鍵杖に
そう伝える。
"…、信じても、良いのでしょうか。私には分かりません。"
だいじようぶだよ
(きっと、これからもたくさんの事を、黒星の鍵杖は学習していくだろう。その中で、心魂とは何か、もっとちゃんと解析できる日が来ると良いね。)
サラセニアの魔物とハグをしていると、後方で、爆発音が聞こえる。
「あ!そうだった!バーンビーやら、魔虫がわらわらと溢れてたんだった!シャール村に戻らないと!」
キリシーが全力ダッシュで帰る。
(グリズリスとバーンビー同時に襲われた時に取り逃がしちゃってたんだった…。早く、村に戻らないと!)
すると、サラセニアの魔物が遠くを見つめ、蔓を広げる。
そして、魔力を込め、花粉を飛ばす。
"解析完了。人体に無毒な花粉です。魔物だけに効果がある花粉のようで、解析の結果、幻惑効果があるようです。"
「いんあ、おいいあえっえ。」
"解析。『みんな、森に帰って。』とおっしゃっているのかと。"
その花粉を吸った、全ての魔物がシャール村から、離れていった。
「すごい!そんな事できるんだ!」
サラセニアの魔物は照れている。少しかわいい。
そして、急いでシャール村に戻る。
サラセニアの魔物は、森の中で待ってもらった。
「皆さん!無事ですか!?」
幸いにも、怪我人は多くは無く、皆軽症との事だった。
ナカが黒星の鍵杖のヒールを使い、治療を行う。
"マスター、魔力が枯渇状態です。充填に時間がかかります。低出力モードに移行いたします。"
(全員分、足りて、良かった…。)
「にしても、キリシーさん、あんたすげぇな!あんなことも出来たんだな!」
「そうよ!あんなことが出来たなんて、知らなかったよ!やるじゃないか!」
村のみんなに、感謝を伝えられる。のだが、
キリシーはどこか浮かない顔をしつつも愛想笑いをしていた。
(本当は、私の力じゃない…。魔物、それも、一度は村を襲った魔物。狂乱状態だったとはいえ、村人には言えない。でも…本当に良いのかしら。)
そんな事を悩んでいると、
「あのね!実は、お花の魔物さんが救ってくれたの!みんなに紹介したい!おかーさん!いいかな?」
キリシーが言うよりも先に、ケリーが言ってしまった。
場が凍り付く。ナカは不安そうに森の方を見ると、
サラセニアの魔物も、不安そうに見つめていた。
「……お花の、魔物。だって?」
声色から、黒星の鍵杖が鑑定してしまった。
"マスター、あの者から怒りの感情を感じ取れます。ですが…"
(やばいかも…。あの子を避難させないと。)
"マスター?"
ナカは一足先に、森に入り、サラセニアの魔物に会いに行く。
「あのね、もしかしたら、あなたが討伐されちゃうかもしれないの。だから、逃げて!」
ナカが説得をする。
首をかしげるだけで、伝わってなかった。
「お願い…!」
蔓を手に取り、必死に伝える。
"マスター、続きを言います。先ほどの者は様々な思考が巡っておられました。怒りと同時に、複雑な感情が入り混じり、混乱しているようでした。"
遠くから、ケリーが説得する声が聞こえてくる。
小さな子が、大人に負けじと、必死に伝える。
大人は、子供の言うことだからと、聞く耳を持たない。
だけど…
「皆さん、聞いてください。この子の言う通りです。」
キリシーがケリーの手を握る。
たとえ、村のみんなから責められたとしても我が子の味方をしないと。それが、親の務めだから。
ナカは、心魂とは何かを考える。
サラセニアの魔物は明らかに喋っていた。
心魂が無いなら、喋る事も出来ず、自我を持たない。
だけど、喋らなくても心魂を持つものも存在している。
心とは魂とは、心魂とは何なのか。
サラセニアの魔物はどうなってしまうのでしょう。
救われたシャール村の村人達は魔物をどうするのか。
第209話、読んでいただきありがとうございます。




