コード201「アイトリ・ナカ」
第201話
前回、アークに舞い降りて
「この世界は不思議な物で溢れている。」
奇跡。
この世界は希望に満ちており、
私達はなんとか、この世界に舞い降りる事が出来た。
本当に奇跡だった。
私の名前は『アイトリ・ナカ』。
私はナカちゃんとか、ナカ様って呼ばれていた。
風が吹き、銀髪の髪がふわりとなびく。
目を開くと、翡翠色の瞳が朝日に照らされ目を細める。
■■…。
黒星の鍵杖が左手にあり、右手にあるのは、謎のブレスレット。
チェーンに翡翠色のひし形の装飾の白いブレスレット。
頭が痛い。あれ…これ…なんだっけ。
どこかで見たことがあるような。
思い出せない。まあ、いっか。
"おはようございます。マスター。"
胸を見ると、もう血は出ておらず、完治していた。
黒星の鍵杖が治してくれたのかな。
「おはよう、黒星の鍵杖。」
私の脳内に直接言葉が流れ込んでくる。
ブレスレットからだ。無機質でまるで、AIみたい。
でも、どこか温かい感情を感じる。
"その認識で、間違いないですよ。"
「そうなんだ?黒星の鍵杖って、なんか不思議。なんだか、懐かしい気がする。」
"懐かしい…ですか。しかし私はこの前初めてお会いしました。記録にはありません。"
会ったことも話した事もないけど、
どこか、懐かしい。そんな気がする。
頭の中で海の音が聞こえる。
優しくて、心地いい。
空を見ると、鳥が飛んでいた。
小さな光る鳥。
そんな鳥見た事もない。
「……そっか。私、異世界転移したんだ。」
木の根元で伸びをし、木漏れ日から空を見る。
「……これから、どうしよう。」
"マスターは、どこから来たんですか?元の世界に帰りたいとか思わないのでしょうか?私達なら、きっとマスターの元居た世界に帰れると思います。"
「うーん、それは良いかな…。だって…。」
私は元の世界で虐められてたから。
これと言った能力も無くて、
いつもひとりぼっちだったし。
「大丈夫だよ!この世界で新しい人生を過ごす。あ、旅とか良いかもね!」
"マスター、私も居ます。もう、一人じゃありません。私も同行してもよろしいでしょうか?"
もちろん。
心の底から、そう願う。
黒星の鍵杖にも、言葉が届いていた。
嬉しいな。一緒に居てくれる誰かが居るのは。
プツン。
■■…。
あれ、一瞬ボーっとしてた。
「んーっ。」
私は、だいたい10歳。
10歳の子供が、冒険なんて出来るのだろうか。
"その事についてなら、ご心配無用です。"
「どうして?」
私の心を読まれた。きっと黒星の鍵杖に触れているからだろうか。
"マスターは、膨大な魔力を秘めています。しかし、申し上げにくいのですが、現在そのほとんどの魔力が枯渇状態で、ほとんどありません。"
魔力か…ファンタジーだ。魔法とか使ってみたいな。
「って、それ、ダメじゃん。魔力が無いんじゃ…魔法も使えないし無力だよ…。」
"マスター、ここでは魔法ではなく、魔術です。力の使い方が違うようです。それに、魔術が使えない状態で危険な事があれば、私をお使いください。"
なるほど、確かに黒星の鍵杖があれば、
なんとかなるかも?
私は楽観的に考えるようにした。
「そうだね。よし、目標!最高の旅をする!えっと、あと魔力?も元に戻す!」
あと、謎のノイズもいつか知りたい。
■■って一体なんだろう。
「あ、それから…友達、欲しいな。」
少し恥ずかしかったけど、口に出して言葉で目標を立てた。
前の世界じゃ、友達が居なかったから。
どこからか拍手のようなものが聞こえてくるような気がした。
きっと、黒星の鍵杖だろう。
「よし、なんとなく頑張ろ~!」
気合を入れ、今後の目標も立てた。
生きる目標も。
プツン。
頭の中で音がした。
これは…記憶…?
誰の記憶?
「…な…。こっち~!」
あれは…誰だろう。
私の髪がまだ、長かった頃?
元気よく走る。
まだもう少し小さかった頃だ。
「…えへへ、お母さん!」
"…スター。マスター。"
その声ではっとする。
ぼーっといたらしい。
なんという。
黒星の鍵杖が何か言いたげな雰囲気を感じる。
「……ごめん。疲れているのかも。」
まだ疲れているんです。許してください。
なんか、夢見ちゃってた。
"まあ、いいでしょう。さあ、冒険に出ましょう。"
そうして、私達は、冒険に出た。
大魔女視点
アークの世界の結界圏に、大きな穴が開いている。
そこは、世界と世界の狭間であり、外と中を隔てる結界。
穴が開いても、しばらくすれば自然に修復されるのだが、
開いている間は、中から、また外から自由に出入りする事が出来てしまう。
「何かが通った跡がある。それも、ひとつだけじゃない。2つある。」
「それを調査するのが、私達大魔女の役割でしょう。」
「2つ通過して、上手く言えないけど…後続の奴の方が変な心魂だった。心魂なのかも、良く分からないけど。」
ナカを追っていた、何者かが、アークに侵入している事は大魔女達以外知らずにいた。
ナカ視点
"さて、マスター。まずは村や大きな街を目指しましょう。"
黒星の鍵杖が提案してくれる。
私はまだ眠い。けど、ちゃんと起きないと。
「そうだね。私も空から落ちる時に、たくさんの光を見た。あれはきっと、街だった気がする。それを目指そうかな。」
伸びをすると、お腹が鳴った。
"昨夜から何も食べてないですからね。鑑定スキルを使用できますので、山菜やキノコなど、また川を探してみましょう。私はある程度なら浄化が可能ですので、安心して水を飲めます。さあ、行きましょう。"
髪を耳にかける。
そういえば、私、髪の毛がばっさり切れたんだった。
ショートボブにしたことはなかったけど、イメチェンってやつだね。
この世界に降りて来てから、黒星の鍵杖が切ってくれた。
どうやって切ったのかは知らない。
風が吹き抜けていく。私の頬を撫でて気持ちいい。
「ねえ、黒星の鍵杖。私、少しわくわくしてるかも。私には全然力とかないけど、それでも、何とかなる気がしてるんだ。きっと大丈夫って、誰かがそう言ってくれてる。そんな気がしてるんだ。」
"はい。私もお守りします。マスター。"
大丈夫。私が守るから。
心の中で誰かがそう言ってくれてる。
だから、私は大丈夫!
ちょこっとキャラクター紹介
「アイトリ・ナカ」
本作の■■■。見た目年齢は推定10歳。
見た目は、銀色の髪でボブカットスタイル、星空のような翡翠色の瞳。
第201話、読んでいただきありがとうございます。




