コード188「行ってらっしゃい。ミア」
第188話
前回、勇者や魔王の話、ミアリーゼに視点が移ってから
レイラは資料を見つけ、カバンに大事にしまう。
そして、ミアリーゼと共に、サテリッズを歩きながら小声で話す。
「ミアリーゼさん、あなたは恐らく何も知らないのでしょうね。しかし、タイミングとしてはばっちりでした。嘘や隠し事はしたくないので、単刀直入に言います。私の代わりに、世界中を回り、アトラベルトの事件に巻き込まれた行方不明者全員の所在を調べて来て欲しいのです。」
そしてレイラの話によると、ソロモリア学長も何も知らないとの事をレイラの口から聞く。
学長は今、アルマゲスタ世界会議の準備を進めており、そちらが忙しい。
更に、レイラを含むセブンス全員その手伝いをしている。
「つまり、そちらに手を回せる人材が居ない。行きたくてもどうしても後回しになってしまうのです。ご理解いただけましたか?何か質問はありますか?」
一気に言われて、頭がパンクしそうになるミアリーゼ。
「えっと…私は、カナリーさん達の捜索をすればいいのですか…?世界中…?」
真っすぐミアリーゼを見つめながらこくりと頷くレイラ。
世界中…。
(現実的に考えなきゃ…えっと…あ、そうです!)
「あの、その間、私って、休学扱いになるのですか?」
その辺りは問題にならないらしい。そもそも、ソロモリア学長も
本来はミナリーを含む全員を探しに行きたいようだが、世界会議がある。
どうしても動けない。なら、事情を説明出来て、カナリー達を知る人物の方が良い。
「彼女達をよく知るアミルダさんは、そもそも国から出られない。彼女の結界は良く知ってますよね。」
他に動ける者…。そう、ミアリーゼ以外に居なかった。
カナリーさん達の事は心配で、どこに居るのかも気になります。
それが例え、世界中…でも、全く知らない世界でも…私は…
「…分かりました。その任務、私にお任せください!世界会議の方は分かりませんが、頑張ってください!私も頑張ります!」
それに、きっと私は頼まれなくても1人で探しに行っていたかもしれません。
レイラは自分自身の事をずるい人だと認識してしまう。
あんな風に情に訴えるように言ってしまえば、ミアリーゼは断ることが出来ない。
でも、きっとレイラが頼まなくとも、ミアリーゼは1人でも探しに行っていただろう。
「旅費は、全て、ティアハート家もしくは、オービット魔術学園が受け持ちます。今渡すお金が無くなったら、領収書を貰うか、ティアハート家に来てください。私から手紙を出して事情を説明しておきます。」
レイラは本当なら、自分が行きたいだろうに、それでも、
ミアリーゼに全てを任せることは本当は不安もあるだろう。
2人が話したのは、小一時間程度。レイラは本当に忙しくて、
それでいて、会えたのは奇跡のようなものだろう。
セントラルステーション魔列車乗り場。
どうしてだろう。ほぼ初対面。だけど、この子からは、
どこか優しい雰囲気を感じ取れて、きっと、
カナリーさん、そしてミナリーの面影を感じたのだ。
声も、顔も、全然違うけど、性格だろうか。
カナリーさんはともかく、ミナリーとは似ても似つかないかと、
レイラは口元を緩ませる。
「くれぐれも、どうか…怪我の無いように。あ、そうです。旅に出たらこれを。きっとミアリーゼさんの役に立ちます。お願いしました。」
とある手紙のようなものを手渡され、頭を下げていた。
「そんな…!頭を…。いえ、はい。その使命、引き受けました。」
レイラは、資料を持って、長距離移動魔列車に乗りこむ。
それを見送るミアリーゼ。
私、みんなを探しに行きます…。例え、どれだけの時間がかかったとしても…!
そうと決まれば、早速、お師匠様に報告しに行かなければ。
アミルダへ全て事情を話す。ため息を漏らし、空を仰ぐ。
「ミアに出来るとは思えない…でも、確かに今自由に動けるのは、ミアだけ…。あなた、天術もまだ使えないのに…。」
今のこの世界では、魔物や魔獣が活発化している。
以前に比べて、危険度は上がっている。
そんな中、旅に行かせるのは、正直、危険が多すぎる。
不安そうなミアリーゼ。反対されるとは思わなかった。
いや、反対されるのは当然の事かと、反省する。
でも…それは、私の為を思っての事…。嬉しいです。でも…
「でも、私はお友達を探しに行きたい。まだ天術が上手く使えなくても…私には、天光がありますから…。危険な事も重々承知です。それでも…私は行きたいのです!お師匠様!これは私が決めた事なのです!」
本気の目だ。ミアは本気で…
「止めても、きっと行くんだろうね。分かった。行くのを認める。それに、レイラちゃんにも頼まれたのなら、仕方ないね。これだけは約束して欲しい。危険だと思ったらすぐに逃げる事。怪我せずに…生きて帰って来ること。守れなかったら、破門だよ。いい?」
覚悟が決まった。
「はい。もちろんです。私は、ハッピーエンドが大好きなので。生きて帰って来るつもりです。」
旅支度を進め、ミアリーゼは休学扱いとなる。それは、特別措置のようなものであり、
単位的に関係ないものとしてくれるようだった。
翌朝、列車乗り場にて。
アミルダが見送りに来てくれる。
そういえば、以前、ここでカナリーさん達と偶然会ったんですよね。
あれも、きっと神の導きがあったのでしょう。
ミアリーゼは魔列車乗り場から、見送るアミルダを見る。
「世界は広い。魔物や魔獣も今の時期、とても強い。天光は便利だけど、気を抜かないで。魔力と同じく、万能じゃないから。」
魔列車が動き出しそうだ。
「忘れないで。私の言った事。必ず、生きて帰って来ること。行ってらっしゃい。」
ミアリーゼを乗せた魔列車がゆっくりと走り出す。
「はい!行ってまいります!」
レイラの立場は、いわば、国の中でも上位にあたり、
学生ながらも、色々と頼まれごとが多い彼女。
とても苦労人です。様々な国交を通して、
彼女は人の心がなんとなく読める程になりました。
今回はそれを使い、ミアリーゼの人となりを知り、
ミアリーゼの想いもなんとなく汲み取り、協力関係を結ぶことになった。
レイラはミアリーゼを1人で向かわせたように見えますが、その辺りはご心配なく。
流石にたった1人で世界中はつらいことは分かりきっています。
彼女にも一応考えがあっての事です。その為の手紙です。
内容は一体なんなのか、楽しみですね。
ちなみに、レイラと会わずとも、ミアリーゼは必ず探しに行っていました。
第188話、読んでいただきありがとうございます。




