コード174「悲痛な救難信号」
第174話
前回、マナの新魔術があり
「やはり、マナさんはすごいですね…。あなたの話を聞いた時から、ずっと私はあなたに恋焦がれていたんですよ。」
マナにとっては、初めて会った人物、リュカ。
今までにどこかで会ったこともなく、データもない。
(つまり、誰かが、リュカ様に私の話をしたと。誰が一体なぜ…。)
魔線結晶がくねりと尻尾のように動く。
「ずっと会いたかった。そして、あなたを…マナさんを研究したかった…!天才的な頭脳を持ったあなたを!」
私はかつて、天才だと言われていた。
「○○さんってホントにすごいわよね。」
先生や友達に凄いと言われるのは嬉しかった。
メイドや執事達は私が良い点を取ると私の好きな食べ物を作ってくれた。
「○○様のお祝いに皆で作りました!どうぞ召し上がってくださいね!」
お父様やお母様に褒めてもらえるのが何より嬉しかった。
「流石は私の娘だ。その調子でこれからも精進するように。」
そんな私の幸せな家庭は、もうない。
私は…龍眼ノ魔女リュカ。
あれは、事故だったけど…それでも…。
魔女になってしまった事は、後悔していない。
リュカが嬉々としてマナに向かう。
マナは魔線結晶を使い迎撃する。
魔線結晶がリュカの腕に絡みつくと、
リュカの魔力が抑えられてしまい、絡みついた部分から、リュカの魔力そのものを
直接吸い取っているかのように、吸収していた。
「魔力を吸い取っている…!?なるほど、魔力を感知して吸い取っているんですね!すごい…!その結晶の中に一体どれだけの術式が刻まれているのですか?」
魔力を吸収されたリュカは片手に炎を、もう片方に氷を。
無詠唱で火球と氷柱をマナに向け飛ばす。
「…。」
(あの攻撃は魔術ではないようですね。)
マナはその攻撃を空中で横回転しながら魔線結晶で弾き、エネルギーとして吸収する。
攻防が続く。
カナリー視点
(さっきから攻撃が止まらない…!)
連発される淵龍魔波を何度も躱していく。
海底にいくつものクレーターが出来、カナリーは魔衣風を纏い、
魚よりも鮫よりも人魚よりも速く華麗に動き避ける。
淵龍の眼がカナリーを捉える。
(誰か…)
淵龍から魔力が大放出される。
青く黒く紫に輝くその魔力は悲しそうに辛そうに、
誰かに助けを求めているようで、誰も寄せ付けない。
そんな感情がカナリーに流れ込んでくる。
海龍涙高等魔術<ハイスペル・淵龍魔刑>
淵龍の魔力が大放出されてから数秒が経ってから、
アトラベルト全域にて大きな地震が観測される。
更に海底火山がその魔力と連動し、噴火を始め、
淵龍が新たな魔術を構築していく。
「こんな時に、地震!?」
「副長官!報告です!!津波らしき、魔術を観測しました!!アトラベルトを中心に、巨大な4枚の"壁"が出現!アトラベルトへ近付いています!」
アトラベルトにバリアは現在、無い。
数十mもの巨大な壁がアトラベルトを飲み込もうとしていた。
「アトラベルトで今、何が起こっているんだ!バリアが消え、エネルギーが逆流していて、地震が起きて…更に何らかの魔術でアトラベルトに巨大な壁が出現だと!?あぁ!頭がパンクする!大隊長早く帰って来て~…!」
リベラ、モニカ視点から、その水の巨大な壁が見え、
モニカはその状況を皆に報告。
それを聞いたカナリーは、淵龍が発動した魔術なのだと
何となくわかってしまった。
(やだ…!私は別にみんなを傷付けたくないの…。止められない…。止まって…。)
メイスィは心の中で誰かを傷付けているんじゃないかと不安になってしまう。
彼女は今、心に壁を作ってしまっている。しかしその心の壁はメイスィ自身をも傷つけている。
それはまるで…、鉄の処女かのように。
今、スイさんは苦しんでる。淵龍となってしまって、
力の制御が出来ないんだ。それに、さっきから膨大なエネルギーが上から
ずっと淵龍に供給されてしまっている。
スイさんの感情が、思いが流れ込んでくる。
今、私にできる事…。
どうすれば、スイさんを助けられるのか。
あの体は作られたものなのか、それともあの体自体がスイさんそのものなのか。
体の中にスイさん本人が居るのか。
カナリーは淵龍を、メイスィを見つめる。
その海域では、火山活動が更に活発となり、
海底の至る所で爆発している。
淵龍の目からは涙が流れているように見えた。
海龍涙高等魔術<ハイスペル・淵龍魔刑>
それは水の壁となり、アトラベルトを中心に閉じていく。
メイスィの心の壁を具現化したかのような魔術。
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