コード170「流れ落ちる一雫の星」
第170話
前回、リュカの目的を推察してから
マナを見下ろし微笑むリュカ。
「全てが計算通りで…こんなに全て上手く行くなんて…あぁ、気持ち良い…。」
リュカが空を仰ぐ。
空に煌めく一筋の光。
「ん?なんです?あれは…。もしかして…」
マナは大噴水塔内部から夜空が見える。
そこからは月が見え、ある光が少しずつ大きくなっていくのに気が付いた。
「"やっと…"」
マナの通信を聞いたモニカも空を見て、涙があふれ出る。
空
落ちる。
落ちていく。
風を切って下へ。下へ。
魔力之魔術<スペル・魔破片>
風を切りながら空気抵抗を最大限受けないように、
1人の少女が空から落ちて来る。
その光景は、大噴水塔に一雫の
星が落ちて来る。
「マスター!!!」
マナはカナリーを視界に捉えた状態にて
「遠隔スキル発動。<スキル・リモートパネル>」
状況を事細かに全てを共有した。
カナリーは落下中だが、全てを理解する。
(分かった…私に出来るか分からないけど、やっぱり、スイさんのところに行かなきゃ!マナ!横切るよ!)
「うわっ!なんですか!?今、一瞬見えたのは…。」
カナリーはリュカを横切る。
「マスター!おまかせしました!どうか、ご武運を!!」
マナは手を差し出し、カナリーとハイタッチをする。
「うん!助けに行ってきます!」
大噴水塔の中を高速落下し、下へ突き進むカナリー。
幸いな事に、現在のエネルギーの向きは下向きであった為、
スムーズにカナリーの落下はまるで隕石のようであった。
魔破片をバリアのように展開し、
大噴水塔の中を突き進んでいく。
「"こちら、マナです。マスターの帰還です。現在、マスターはアトラベルト、大噴水塔直下の海底火山、淵龍となってしまった、メイスィ様の元へ向かわれました事、お伝えします。"」
それを聞いた他のみんなは、カナリーの無事に安堵する。
同時にメイスィの現在を知る事となり、驚く者達も居た。
だが、みんなは一人を信じ、彼女ならきっと
メイスィを救える。救ってくれるだろうと、
信じてやまない。
皆がカナリーに全てを託し、祈る。
(待ってて…。スイさん…!!)
皆の声は届かなくても、それでも、みんなの期待を背負い、
大噴水塔の最下層を突き抜け、海の中を進んでいく。
???視点
怖いよ。
誰か助けて。
ずっと、ネプトゥスで頑張って来て、
みんなが、私を笑うんだ。
だから、誰にも言えずに、アルバイトをして…それで…
誰かが、みんなが私を見てる気がする。
嫌だよ…。そんな目で見ないで…!
淵龍が動き出し、謎の魔力を放出しだした。
カナリーが突き進んでいると、目の前に、大きなシャボンがあり、
よく見ると、そこに居たのは、
「おーい!カナリーさーん!」
ポーラが手を振っていた。
あのエネルギーが逆流した時、ポーラはなんとか、
身を捩り、エネルギーを避ける事が出来ていた。
カナリーは手を振り返し、勢いのままに下降していく。
ポーラ達はそれを確認したと同時に、上へ上昇していった。
淵龍が謎の魔力を放った時、アトラベルトが大きく揺れる。
それは、大噴水塔内部に居るマナも観測することが出来た。
揺れながらも、ある人物を捉えて離さない。
「龍眼ノ魔女リュカ様。」
リュカはカナリーを見てから今までにないくらい興奮しており、
「あぁ…あぁ…やっぱり…素敵…。」
マナは全く意味が分からず、リュカを観測する。
何の目的があって、メイスィを淵龍に変えたのか。
カナリーやマナを知っているのは何故なのか。
上にいたリュカがマナに向け魔術を放ち、交戦再開となる。
カナリー視点
ひたすらに下へ下へ潜る。
ほんのりと熱い気がするけど、
そんなの関係ない。
今は、下へ。
カナリーは海底火山の広い空間に出る。
高純度の魔力がその場を満たしており、
ただでさえ深海圧もあるが、圧力が更に大きく負荷を与えていた。
(ここ…なんだか、変な感じがする…。)
気合を入れ直し、カナリーは淵龍を前に、
深海へ辿り着いた。
今助けるから。待っててね。
アトラベルトの地上では、ある騒ぎになっていた。
「さっきの地震と言い、どうなってやがる!?バリアが解けるのは、数分間のみって話だっただろう!?なんでずっと消えてるんだよ!」
人々の不満が大きくなっていく。
リベラらは無事に親子を見つけることが出来、
各自、警戒を続けていた。
(リベラ、何か来るよ。)
ベアトリクスが突然、何かの気配を感じとる。
辺りを見ても、何も見つからない。
周りは皆喧嘩ばかりしており、見るに堪えなかった。
「何か来るって、魔物ですか?都市に来るだなんて…一体…。」
海の中から、突然細長い大蛇が現れ、人々が恐怖する。
それは、紫紺色の大蛇のように見える竜だった。
何匹も海の中から出現する。
リベラやフェニ、ケーシィは何とか応戦をするのだが、
「くっ!竜って、こんなにも強かったですか…!?それになんだか…」
竜をよく見ると、その全ての個体が泣いているように見えた。
一部補足。
カナリーが吹っ飛ばされる際にはまだ、水のピラミッドのようなバリアはありました。
淵龍の攻撃でカナリーを押し、バリアに一瞬穴をあけ、
そのまま空に飛んで行っていたという事になります。
さて、我らが星、カナリーが空から落ちてきます。
カナリーはマナから全てを共有され、大噴水塔から
直通でメイスィの元へ向かいます。
第170話、読んでいただきありがとうございます。




