コード168「靄雲龍《バラウール》」
第168話
前回、リュカが名前を名乗ってから
カナリーが無限上昇から抜け出す少し前のマナ視点
「ははっ!もっと私と遊びましょうよ!」
リュカが炎を尻尾に纏い、マナに向け尻尾を振る。
マナは魔力膜障壁を張り、防ぐのだが、
後方へ吹き飛ばされてしまう。
壁に激突し、リュカが追撃する。何枚もの壁を突破し、
マナは第2内隔壁へ侵入してしまう。
(ここは、管制室のような…しかし、まだ内側、深部がありそうですね。)
リュカがマナを追い、第2内隔壁エリアへ入ろうとしたその瞬間、
壁が突如、修復され、リュカが壁に挟まってしまった。
「これは!?急に壁が!?」
割込巻戻魔術<スペル・小戻球魔>
マナは小戻球魔を事前に微量の魔力にて
少しずつ修復させていた。
そして、リュカが侵入してきたと同時に魔力を送り、一気に巻き戻す。
そうすることでリュカを壁に挟み込んでいた。
「もしかしてですけど、常時魔術持ちで、更に詠唱破棄とは…!私を楽しませてくれますね!」
マナは真顔でリュカを見つめ考える。
「…。」
(壁に挟まりながら…。)
それでも、リュカはマナに対して敵意を持っていると言うより
好奇心が強いように感じられる。
本気で楽しそうなのが、何とも言えない。
リュカは尻尾で壁を破壊し直し、リュカはマナの居るエリアへ突入する。
「さて、マナさん、続きですよ。」
マナはある違和感を感じる。
(リュカ様…そういえば、どうして私の名前を…?鑑定持ちか、あるいは元から知っていた…?)
「ははっ!なら…これならどうですか!
緑翼龍ノ魔術<スペル・龍ノ樹枝>!」
樹木で作った龍の翼を手足のように動かし、
翼部分でマナを殴り飛ばそうとする。
お腹に入る直前、手を置き、
マナは片手で翼に逆立ちをし、そのまま小戻球魔を発動。
樹木の翼を分解する事に成功した。
体勢を崩したリュカのもう片方の樹木の翼を掴み、
小戻球魔にて分解する。
「申し訳ございませんが、私は今急いでいるので。」
魔力玉をリュカの顔面へぶつける。
後ろへ倒れ込んだリュカだったが、一瞬目を離した隙に姿が見えなくなる。
(姿が見えない。魔力探知を…。どこに…。)
大噴水塔の外へ向かおうと
外へ向いたその瞬間、後方から、鱗で作られたチェーンで巻き取られ
更に内側へと引っ張られ、壁を突破していく。
噴水の通る管のある立ち入り禁止第1中隔壁
中は巨大な円柱空間であり、第1中隔壁の中の中央には水が通っているのだが、
一番外側は水も通っておらず、足場がある。
「"大噴水塔内に異常を検知しました。異分子です。防衛兵を出動させます。誤って侵入してしまった者は5分以内に退出してください。繰り返します。…"」
アナウンスが内部で響き渡る。
「おや、何か来るようですね。ちなみに、ここの職員は皆、睡眠魔術で眠ってもらいました。色々弄って、換気出来ないようにしたらとてもとても楽でした。」
姿が見えず、声だけが響く。
声のする場所へ向けマナは魔力玉を飛ばすが、音を発する魔術印があっただけだった。
マナは毒ガスじゃなかっただけマシだとは思ったが、一大事である。
(職員が皆、眠っているということは!大変です!!)
マナは急いでリュカを追おうとするのだが、防衛兵に阻まれる。
いくつもの防衛兵を壊していくのだが、間に合わない。
リュカが透明状態にて、色々と操作をする。
4つのボタンを同時押ししなくてはならず、
リュカは分身を出し、その4つのボタンを押した。
回転していた大噴水塔が音を立てながら
完全に停止し、回転しなくなった。
噴水が、止まる。
「ママ~?あれ~。」
「噴海祭の出し物か?」
「あれ?なんか、いつもと違うような」
「あれ、大噴水塔止まってね?」
「え~?まじ?ウケるんですけど~w」
天然のバリアも解除されていく。
「"大噴水塔が停止しました。これにより、8基の補助塔からのエネルギーを送り、バリアを再展開します。"」
補助塔がエネルギーを充填し、バリアの再展開を行おうとする。
「ふふ…ふふふっ!全て!計算通り!!今この時を待っていたわ!!複数同時展開!!!
吸射魔龍高等魔術<ハイスペル・靄雲龍>!!!」
リュカは大噴水塔の中央、最上部にて巨大な翼を広げる。
4体の謎の龍が大噴水塔を囲うように出現し、
補助塔から放たれるエネルギーをその龍達が歪曲させ、
大噴水塔内部に逆流させていく。
マナ達が居る空間が光に包まれ、地下へ地下へエネルギーが送られていく。
(凄まじいエネルギーが…!地下…さっき、ポーラ様の話を共有されて…はっ!!まずい!)
「"こちらマナです!モニカ様!ポーラ様を早く避難するようにお伝えください!!!"」
ポーラの居る深海へ向け、エネルギーが送られ、光に包まれる。
光を受け取ったリヴァイアサンは更なる力を得ていく。
「さあ、君達は、本物となる深海の淵龍を止める事は出来るかな…?あはっ!」
海術警察本部では、
「一体何がどうなっているの!?補助塔からのエネルギーが逆流!?下へ行ったというのはどういうことなの!?」
リーナ視点
「なんなの!?あの光の柱は!」
リベラ視点
「轟音が!さっきの雲のような龍は一体!?」
モニカ視点
「"ポーラさん!!返事して!お願い!!!"」
ポーラ視点
「…」
全て、上手く行っていたはずだった。
順調だった。それなのに。
4方向の8基の補助塔からの予備バリアのエネルギーが
放たれるのだが、靄雲龍により、歪曲され、
下へ、淵龍リヴァイアサンに向けて、反射される。
大噴水塔の完全な停止。
それによってもたらされる被害。
更なる力を得た深海の淵龍。
アトラベルトはどうなってしまうのでしょうか。
第168話、読んでいただきありがとうございます。