コード161「青き水流を穿つ拳」
第161話
前回、フェニが勝ってから
空中に打ちあがったケーシィとウミューシー。
体勢を立て直し、脚を天高く掲げるケーシィ。
「はぁぁぁぁ!ライジェル流!鈍回脚!!!」
ウミューシーはアーマーで防御をするが、
ケーシィの攻撃の重さで、防御ごとウミューシーを海面に叩きつける。
叩きつけた後、ケーシィは地上で待つのだが、
「…?全然、上がってきませんわ。終わった…んですの…?」
フェニの元へ向かおうとした
その瞬間、
大粒の水のパンチがケーシィの頬をかすり、
ケーシィの頬から血が少し流れ落ちる。
「待ってよ。まだ、逮捕出来てないし。先輩は伸びてるし。それにアーマー着てて負けるとか洒落にならないし。」
ウミューシーはイライラしながらもパンチを放ったらしい。
見たところ、ダメージというダメージは無いように見える。
(あの方を倒さないと、行かせてもらえそうに無いですけど…。ダメージが無さそうに見えますわね…。仕方ありませんわ。全てを出し切らないと、勝てませんわね…。)
「…わたくしにも、負けられない理由がありますの。あなたに勝てなくては、あの鬼にも勝てませんものね。」
ケーシィはウミューシーの放つパンチが、
過去、シュテンが放ったパンチに似た威力を感じ取っている。
事実、威力としては近い。
ウミューシーの着ているアーマー、
シーアーマーtypeマンティス。
シャコをモデルにしているアーマーであり、
水中限定で鬼人種並みのパンチ力を出す事が可能となっている。
直撃すれば、ひとたまりもないだろう。
ウミューシーは水中から、ケーシィへパンチを繰り出す。
なんとか、躱すが、癖が強い。
「…ふふっ、相手として申し分ありませんわ!」
(見たところ…パンチの種類が2種類…。溜めて打つパンチと、即時放つパンチ。どちらも高威力。それなら何故、常に即時パンチをしないのか。それを見極めなくてはなりませんわ。)
ケーシィの目に魔力が集まり、観察しながら戦っている。
ウミューシーもまた何かを考えながら、盤面を整えていった。
(…やっぱりこの装備、海の中で使う事を想定している。先輩が使いにくいって言ってた理由はこれだったのね。でも、私なら、この使い方分かるから平気。)
水のパンチをかわしながら戦っていると、ケーシィは
ウミューシーを見失ってしまう。
「はっ!しまった!どこですの!?ここで見失ってしまうと…!」
下から、高威力パンチにより、石橋が破壊されてしまう。
ケーシィは海の中では不利な為、なんとか片手で橋を掴むのだが、
「遅いよ~。つ~かまえた。」
足を掴まれており、ケーシィは海の中に引きずり込まれてしまう。
(しまった…!ここじゃ、わたくしの方が圧倒的不利!早く、地上に!はっ!!!)
「ちょこまかと、もう終わりだよ!出力全開!!
水鎧圧魔術<スペル・水蝦砕>!」
重く速く爆発するような一撃がケーシィのお腹に入ってしまう。
ダメ…ですわ…意識が…。それに骨が軋んで…。
ーーー
場面は、カナリーらみんなで温泉に入った後の夜コテージにて。
「ふ~~、温泉の後話し込んでいたら、湯冷めしてしまいましたわ…。」
桟橋を歩きながら、マナと話す。
「それなら後程、コテージに伺ってもよろしいでしょうか?是非使って欲しいものがあります。」
ケーシィは何のことだろうと思ったが、快く承諾する。
「お待たせいたしました。ケーシィ様、これを使ってくださいませ。」
マナの手にあったものは、
ーーー
そして時は現在。
「ん…?あれ、手ごたえが変…。何が…。え!?」
ケーシィの服は弾け飛び、水着姿になるのだが、
そのお腹周りには、
「なんで腹巻してるの!?なにそれ!ズルじゃん!」
ケーシィは、魔網目帯を腹巻代わりにお腹に巻いていた。
これは偶然ではなく、マナから湯冷めの腹巻を受け取った時から、
魔網目帯がプロテクターにも応用できると考えていた。
その為、戦闘が始まってから、編みながら戦闘を行っていた。
魔網目帯は魔力で編む為、
水で重くなるような事は無い。巻いていても何のデメリットも無かった。
(はっ!!一瞬、意識が飛んでましたわ…。しかし、魔網目帯を巻いていても、あれだけの威力、もうまともに受けられませんわ。次は確実に骨が折れる…。だから、ここで、わたくしは、新たに殻を破らなくては!!!)
実際、ケーシィのアバラにヒビが入っている。
激痛に耐えながらも、ケーシィは水中にてウミューシーを見据える。
(先輩の事も気になるし、早く決めないと。でも、この子かなり手強い…。あのパンチを受けて、意識を保っているなんて有り得ない。次は…"合わせて"打たなきゃ。もう次で、終わらせる…。)
ウミューシーは構える。その時、ケーシィは気が付いた。
魔力の揺れに。
(…魔力…。2種類のパンチ…。…。はっ!!やっとわかりましたわ!)
ケーシィはもう防御を捨てる。
ありったけの魔力を込め、手に、拳に巻き付ける。
「もう、終わり…!捕まえるんだから!!出力全開!!!
流鎧水拳魔術<スペル・蝦砕竜>!!!!!」
大量の泡を出しながら、高出力攻撃をウミューシーは放つ。
ケーシィはその泡を、見逃さなかった。
(チャンスは一度きり…あなたの攻撃は速くて、重かった…でも、あの鬼に比べたら、なんてことありませんわ!!!)
ウミューシーの蝦砕竜をギリギリで躱す。
躱したその瞬間、腕にしがみつくケーシィ。
「マヴィヴーム!」
水面へ二度目の打ちあがりが起こる。
「はぁ…はぁ…!これ、2度目ですわよ!それから…もう逃がしませんわ!!」
ケーシィは拳を力いっぱい握りしめる。
避けようと、体勢を変えるのだが、
「な、なんで!?は、放して!!」
手を伸ばし、魔網目帯をロープがわりにし、
ウミューシーの体に巻き付ける。逃げられないように。
「ま、待っ…!」
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!魔力全開!!!
ライジェル流格闘魔術<スペル・魔帯杭拳>!!!」
巻き付けた魔網目帯を巻き取り、引き寄せながら
右手に巻き付けた魔網目帯の拳がウミューシーのお腹にモロに入り
爆発を起こしながらウミューシーのアバラが粉砕し、建物を次々と貫いていく。
「はぁ…はぁ…!!押し通りますわ!!」
魔網目帯が揺らめき、
その姿はまるで、鬼のように。
何故躱せたのか、それは、ずっと一直線にしか打てなかったから、
ケーシィはその軌道を予測することが出来た。
更に、高威力である仕組みにも感づいており、
それは、溜めて打つ際には、アーマーの中で水を圧縮し続け、
そのエネルギーを利用し、放つもの。
魔力で圧縮した水で即時放つパンチの2種類であった為である。
合わせて打つというのは、この2種類を合わせ、少し溜めて魔力も合わせて
パンチを放ったという事です。
ケーシィの説明する暇が無かったので、こちらで説明する形となりました。
第161話、読んでいただきありがとうございます。




