コード145「蠢く深海の者ら」
第145話
前回、ポーラがヤドカリを仲間にしてから
ポーラがヤドカリの体を借り、他の生物達にも呼びかけ
捜索範囲を広げていく。
ヤドカリ自身も海流に身をまかせ、怪しい人物らを探す事1時間。
小魚達が怪しい人物らをついに発見する。
小魚から他の生物へ、ヤドカリへ伝言されていく。
(ポーラ、見つけたぞ。)
(えぇ、視えてる。ありがとう。)
深海に存在する神殿から謎の気泡を確認。
中はシャボンルームになっていた。
ヤドカリがひっそりとその神殿へ潜入していく。
「……画……なって…」
(発見はしたが上手く聴こえないな。どうする?リスクはあるが、もう少し近づくか?)
(いいえ、口の動きから分かります。会話内容はばっちり。)
ポーラは読唇術を会得している。
これは魔術的な不思議な力でもなんでもない。
ポーラ自身の単純な特技であった。
「『計画はどうなっている?』」
「『順調です。やっと今までの屈辱を晴らせますね。』」
(屈辱…?一体何を企んでいるの…?)
「『にしても、こんな文献どこから出て来たんだか。』」
「『あまりにも非人道的であるが故に、意図的に封印されていたのかと。完全に消失させなかったのは、軍事的利用が出来るかもと思ったからでしょうね。まあ、こんな深海の海底火山付近の神殿、基本的に誰も来ないでしょうし見つけられなかったのでしょう。』」
(軍事的利用…、聞き捨てならないワードね。)
「『あくまでも、エネルギー問題を解決するためにやっている事だ。戦争を起こそうとは思わないさ。しかし、この力でアトラベルトのトップに立てるというのなら、それも悪くないかもな。』」
「『ははっ、戦争?おいおい冗談やめてくれよ。俺達の仕事が増えるじゃないか。俺はじいちゃんの為にやってるだけだ。勘違いするなよ。』」
(情報を整理する必要がありそう。封印されている何かを復活させれば、アトラベルトのエネルギー問題を解決することが出来ると。その力は絶大で、クーデターも可能…?大変じゃない。それに非人道的って、まさか…。)
「『攫うのはお前たちに任せる。頼んだぞ。くれぐれも傷物にしたりはするなよ。そして計画の決行は、噴海祭初日。ショーの一目が多い時、月が上がり始める時、あの方を復活させるんだ。夜は魔力が満ちるからな。いいな。』」
ポーラはある最悪の可能性に気が付いてしまう。
(まずい…、これは1人の力では止めることが出来ない…。自国だったなら、秘密裏に動けるけど…政治的問題が…。というか、私、アトラベルトの為に動こうとしてる…?いやいや、困る人がたくさん出てしまう上に、何より、非人道的行為は絶対に許せない…!)
ポーラがヤドカリにその場を離れさせようとしたとき、
気になるワードが見えた。
「『…術だ。噴海祭で使うくそでかい魔術書のコピー。あれを忘れるなよ。あの方の力は絶大だが、予備はあった方がいいからな。先にこちらが仕掛ける。おい、新人、色々準備しとけよ。』」
(噴海祭で使う魔術書…?何の魔術書?先に仕掛ける…?最初が見えなかった。重要そうなのに。先走っちゃった。)
しかし、その者らの会議が終わってしまい、重要な所が分からずにいた。
(視界を外した私が悪い。すまない。ポーラ、食い止めねば大変な事が起こるかもしれない。ポーラ、私からのお願いだ。必ず食い止め、あ)
視界ジャックが途切れてしまった。
(え?ヤドカリさん!?どうしたの!?まさか、見つかっちゃった!?って、もう会話できない…、どうしよう。)
(…。食い止めなきゃ。私は、諜報員だ。ルナリアは無くなっちゃったけど、それでも、誰かのためになりたいという思いは消えない!見てるだけなのは嫌!なんとかしなきゃ…。)
ポーラは海辺から離れ、都市へと走り出した。
一方その頃、カナリー達はというと
「お~~!これが海藻!すごい!すごいよ!わぁ~!」
リルフ、大はしゃぎである。
アミアとも無事に合流することが出来、海中都市のマーケットを散策していた。
「まさか、海中に来てるなんて。というか、メンバーも違うんだね。」
アミアは病院から直行してきた為、学生服を着ている。
デザインがとてもかわいい。
「そうだ。なんなら、ネプトゥスも見て行かない?すぐそこだしさ。」
こうして、カナリー達はネプトゥス海術学園へと向かうのだが、
そんなカナリー達を監視している者達が居た。
マナがなんとなく気が付いているが、その目的までは予測不可能であった。
「あ~ごめんねぇ、今ネプトゥスの一部改修工事してて。入れないんだよ~。ごめんねぇ。」
ネプトゥスに入ることが出来なかった。
メイスィとアミアが若干怪しんでいたが、特に問題無い為、
仕方なく、マーケットへ戻って来る。
みんな各々、観光を楽しみ、そしてホテルへ戻る時間となる。
正直、もっと見て回りたかったのだが、
日が落ちてきた為、カナリー達はホテルへ戻る事となり、
メイスィとアミアは2人で帰路につく準備を始める。
ポーラの読唇術、そして視界ジャックの魔術。
合わせるとかなり強く、更に、視界ジャックには
その生き物の言語翻訳まで出来るという代物。
ヤドカリはどうなったのか、
一体何が起ころうとしているのか。
カナリー達の知らない所で何かが動いています。
第145話、読んでいただきありがとうございます。




