コード144「ポーラの魔術とヤドカリと」
第144話
前回、ポーラが怪しい会話を聞いてから
ポーラはみんなが楽しげにお昼ご飯を食べている様子を見て、
何かできる事は無いかと、怪しい人物達を追跡することにした。
(私は…本来、誰かのために、本を探してあげる事が好きなだけのただの司書でした…。私にできるのは、
視界共有魔術。この力を使って、誰かのためになるのなら…!)
ポーラは、生身で追跡するタイプではない。
浜辺に移動し、辺りの生物を探す。
(この辺りには居ないのかな…、うーん…あ!居た!)
貝を拾い上げると、手のひらサイズのヤドカリが出てきた。
「かわいい。初めまして。私、ポーラって言うの。ここで何していたの?」
視界共有魔術とは、対象と心を通わせる必要がある。
つまり、友達になれば、視界共有をすることが可能となる。
そして、ポーラには特異的な声色を持つ。
とても優しい声色であり、その声を聴いた者は微弱であるが少々の催眠状態へかかる。
人にも若干の効果があるのだが、ポーラはどちらかと言えば動植物の方が効果が高い。
ヤドカリが両ハサミを上に上げ、バンザイしている。
「か、かわいい…。」
5分ほど話したのち、ポーラはヤドカリと仲良くなった。
(よし…。)
「あのね、お願いがあって…行ってもらいたい所があるの。見てるだけでいいから。」
そう言うと、ヤドカリが頷いていた。
良かった。協力してくれるみたい。
「ありがとう。それからあなたの視界、見てもいい?」
大丈夫だった。たまに、嫌がる子も居るため、こうやって事前に聞いておかなければならない。
「それじゃあ、さっそく。視界共有魔術<スペル・視生共書>!」
ポーラの手に本が現れ、その本から、ポーラのメガネに
ヤドカリの視界が直接映し出され、心魂で繋がりを得る事に成功。
これにより、ヤドカリと心の中で会話が可能となった。
(私の名前は、ポーラ。よろしくね!ヤドカリさん!)
(あぁ、任せておけ。)
一方その頃、カナリー達は珊瑚のマーメイドにて、
ご飯を食べたのち、話し合っていた。
「お腹いっぱい~!エビチャーハン美味しかった~!」
「この後はどうする?みんな行ってみたい所とかあったりしますか?」
珍しくリルフが意見を出した。
「あの、僕、もう一度海中を見に行ってみたいな。珍しい海藻とかあったら、見てみたくて。」
続いて、フェニもまた声を上げる。
「それならば、私も上層にある都市に行ってみたいと思っていたんだ。」
エリナもそれに便乗する。
「私は、ロープウェイと言うものに乗ってみたいです。」
と、ここまで意見が出たところで、モニカがまとめる。
「なら、お昼からは各々行きたい所に行きましょう。ホテルの夕食までに帰って来る事です。」
綺麗にまとまり、
カナリー、マナはリルフ、メイスィと共に海中へ
フェニ、モニカ、リベラ、ケーシィが上層へ
リーナ、グラシー、エリナ、ノーマンはロープウェイ乗り場へ
3手に分かれる事となった。
カナリーサイド、海中都市。
「わぁ~!やっぱりシャボントンネルはすごい綺麗~!」
リルフとはあまり話していないイメージがあるかもしれないが、
実のところ、割とよく話している。
リルフは魔術が好きらしく、カナリーやマナと話して魔術の参考にしているらしい。
「なんか、来てもらったみたいですみません。僕、1人になるか、いつものノーマンと行動するのかと思ってましたから。」
カナリーらとよく話すとは言っても、やはりノーマンと行動することが多くなっているらしい。
ノーマンはロープウェイに乗ってみたいらしく、別グループとなっている。
「いやいや!私も海中にもう一度来たかったんです。この景色が綺麗だったから。」
カナリーらは上を見上げる。
海中からの水面は、陽の光に照らされ、とても綺麗だった。
メイスィはヴィーヴルの速度を少し落とす。
この幻想的な光景をゆっくり見れるように。
上層組
大噴水塔にはエレベーターがあり、
かなり現代的である。少し近未来さまでも感じさせる。
だが、ここに居る者らは特に気にしていない様子であった。
こういうものなのだと、認識している為である。
「よーし!カナリーへのお土産を探しに行くか!」
フェニはカナリーに合うアクセサリーや服などを探し回っている。
とても楽しそうだ。
モニカ、リベラ、ケーシィはフェニのあとに続いた。
ロープウェイ組
ロープウェイはガラス張りとなっており、
景色がとても綺麗だった。特に、ノーマンがはしゃいでいる。
エリナはと言うと、仕組みがどうなっているのか気になっている様子であった。
メイスィのヴィーヴルに連絡が入る。
「あ!出た!もしもし~!アミアだよ!私、暇になった!どっかで落ち合おうよ!」
「もしもし、アミア。あ~~…、あ、そうだ。海魔列車で、海中まで来れる?今、ちょうど駅近くだし。」
メイスィが振り返り、確認を取る。
「アミアを待っても良いですか…?」
みんなは全然OKとの事。
むしろ迎えに行っても問題なかったのだと言う。
「何度も行き来すると時間がもったいないですし、駅近くですので。流石にそこまではしませんよ。」
「と言う事だから、駅で待ってる。海魔列車で来てね。」
カナリーサイドは海中都市の駅近くでアミアを待つことにした。
ポーラには特異的な声色があります。
その人の魔力が声に乗る事で、様々な効果をもたらします。
これは、常時魔術等ではなく、その者の特性という事となります。
視界共有魔術<スペル・視生共書>
相手の視界と共有する魔術となっており、
ポーラはヤドカリの視界を得ましたが、
同時に、ヤドカリもまたポーラの視界を見れています。
実はこの魔術かなり高度な魔術です。
海中は基本的には、シャボンに覆われている都市が多いです。
そのシャボンは大噴水塔で生成していたり、
補助塔で生成。また、内部から膨らませている魔道具もあったりなど様々。
大噴水塔の製作者曰く、一つのものに集中してしまった際、
大噴水塔がもし壊れでもしたら大変な事が起こるからであるとの事。
第144話、読んでいただきありがとうございます。




