コード133「月と海と白と夢」
第133話
前回、オリヴィアがカナリーを救ってから
現実の聖白之王、オリヴィアはカナリーの掌の中の星の雫を受け取り、
オリヴィアは自身のエネルギーへと変換する。
そのエネルギーを使用し、ゾディラディア全機を宙に浮かせ
そして、そのまま全てを空高く、はるか彼方へ飛ばす。
「全部返すよ。今は。ね。」
ゾディラディア全機は、そのまま星の重力を超え、
月へと返還されてしまう。
"…。何も全部返さなくても良かったのに。"
月の上でその全てを受け取った少女。
月に幾つかクレーターが出来る。
"我がマスター。ゾディラディア全機、故障。"
ふと、少女は考える。全て?と。
"サジタリウスは、どうなったの。あの子は無事なはずだけど…。あー、魔剣ノ魔女に…。なるほど理解した。"
やってくれたね。聖白之王。
次こそは必ず。
オリジナルである、姉さんを。
カナリー…。
月の上で星を見つめるは、全身機械の歯車で出来た、
カナリーによく似た機械少女が、見下ろしていた。
地殻とマントルの間にて、
「良かった。死んでませんね。」
夜天の星空のようなローブを被った女性がミナリーを抱えている。
「確か…こうしないと…。」
夜天のローブの女性は、ミナリーに手をかざす。
(バリアを展開しま…)
コルはバリアを展開しようとするが、
激しい火花が散り、バリアが壊れる。
「少しだけ待っていてくださいね。」
夜天のローブの女性は、ミナリーの体内に手を突っ込む。
女性の目に青い〇のような瞳孔が光り、何かを探す。
「んー…これですね。」
そして、管のような、透明なコードのようなものを引きちぎる。
苦しんでいたミナリーの表情が柔らかくなった。
(異常事態発生。報告報告報告…かんりsy…。アップロードを中断。オフラインへ移行しました…。疑似人格を形成。記憶の引き継ぎ成功しました。…。私は一体…。)
「…。これで大丈夫ですね。オフラインになる直前のデータも一応…。」
聖白之王がカナリーを抱え、船に戻る。
船には、マナや他のみんなも居る。
そこへ、ベアトリクスが海から上がって来た。
「…ふぅ~大変だった。マナさん、シャベル投げちゃった。ごめんね。」
マナはもう負荷はかかっておらず、耐えきっており、
聖白之王がしていたことも全て見ていた。
「…いえ、あの状況下では、ベアトリクス様に縋る事しかできませんでした。本当にありがとうございます。」
聖白之王が抱えていたカナリーをマナに引き渡す。
マナは大切にそっと受け取る。
「聖白様…なんとお礼をしたらいいのか…。本当にありがとうございます。」
深々とお辞儀をする。まさか、こんな事態になるだなんて、想像もしていなかった。
「いいえ。これは私の使命でしたので。そういえば、名乗っていませんでしたね。私はオリヴィア・ステラ・ロードベルトです。気軽に、オリヴィアとお呼びください。聖白様はむず痒いと言いますか。」
優しくふわりと笑う。
白いヴェールを被っているロードベルト国最強の王。
彼女は以前、マナが過去に行った際にも、マナが会っている。
その時も、オリヴィアは、白いヴェールを被っていた。
誰もその顔を知る事は無いのだと言う。
「それでは、使命は一応終わりましたので、私は国に戻ります。ミナリーの方は、マリンが上手くやってくれている事でしょう。カナリーさんはしばらくすれば目を覚ますと思います。その他諸々は、マナさんの、<スキル・コネクトリンク>で見て頂ければなと。それでは、また。あ、忘れていました。あの機械の名を言っておきます。あれは、王道十二星機。ゾディラディア。あれは…危険です。気をつけてください。では、また会いましょう。」
そう言うと、オリヴィアはカナリーに目を向ける。
まるで懐かしむような顔つきで。
オリヴィアは光になってどこかへ転移した。
恐らくは、ロードベルト国へ戻ったのだろう。
ーーー
20■■/08/■■/16:■■
私を呼ぶ声がする。
誰…?
「華那!目を覚まして!」
私を呼ぶ声。
頭が痛い…。胸が苦しい。
「ゲホッゲホッ…。はぁ…はぁ…」
「良かった…。華那…。息してる…。」
お母さんが私の顔を覗き込む。
太陽の光が差し込んでいて少し眩しい。
「どこも痛くない…?平気?頭の中、痛くない…?」
「大丈夫だよ…。お母さん…。痛っ…」
私は頭を抑える。
「大変!!急いで帰らないと…!」
やだ…待って。ごめんなさい。
まだ遊んでいたいよ。
私が溺れちゃったから…。
「お母さん…私、平気…だよ。だから…。」
私の手を引くお母さんの手は少し強かった。
ーーー
カナリーはベッドの上ですやすやと眠っている。
船は、無事に航海を再開できるとの事で、
こんな事は初めてらしい。
今まで、強力な海洋魔物が現れても、飛行魔石の魔力がすべてなくなる事は無く、
逃げるか、応戦するかをしていたとの事。
イレギュラー続きで、乗客達も、不満が溜まっているようだった。
それでも、この船、マギア・アクア・グランド・クルーズは世界から見ても大きな豪華客船。
アフターケアサービスも一流であり、今回の航海では、料金は全て返金するとの事。
更に、今回に限り、全サービス無料となった。
赤字になるかと思われるかもしれないが、こういう時の保険がきくらしく
アトラベルト、ロードベルト、双方からの保険がおりるようで、一安心である。
カナリーは未だ、目を覚まさなかった。
オリヴィア曰く、大丈夫との事でとりあえずはしばらく待つことにした。
ミナリーの安否も気になるが、どうも、『マリン』と呼ばれる者が救ったらしい。
今はそれを信じて任せる事しかできなかった。
今回は、情報が多いですね。
まずは、月に居るカナリーによく似た機械の少女。
マリンと呼ばれる者がミナリーの何かを解除したこと。
オリヴィアの顔は白いヴェールのようなもので見えない事。
カナリーの見た夢、忘れないでください。
たくさんありましたね。一旦、脅威は去りました。
さて、旅行の続きです。
第133話、読んでいただきありがとうございます。




