コード9「中央衛星都市サテリッズ」
第9話
前回、マナと魔術の訓練をした後から
街道の真ん中で言い争いをしている男の子と女の子。
歳は私たちと同じくらいだった。
「ちょっと!あなたが歩いて行こうと言ったんじゃなくて?そんなんじゃ、強い魔術士になれなくてよ!」
お嬢様風の口調の女の子のエルフが物静かな雰囲気の男の子に対して物申していた。
「ぼ、僕だって頑張ってるよぉ…だって、僕んち…貧乏だし…馬車とか、借りられないし…。」
人間の男の子は今にも泣き出しそうであった。
「マスター、このままでは通れません。いかがなさいますか?」
マナがこちらに指示を仰いでいる。
もちろん、答えは決まってる。
「あ、あの!この街道を使ってるってことは、街まで行こうとしてるんですよね?もし迷惑でなければ、うちの馬車で一緒に行きませんか?」
カナリーが2人に対して一緒に行こうと言った。
それに対して、お嬢様風の女の子と物静かな男の子は顔を合わせ、
ひそひそと話し合っている。
それもそのはずか。見ず知らずの者に一緒に行こうと言われたら、
怪しむのは当然のこと。
マナはカナリーの耳元で確認をとった。
「マスター、この者達が乗車する際、対価などはどうされますか?」
なるほど、そのことを気にしていたのかな。
対価など求めないよと、マナに伝えると、マナはそのことを2人に伝えてくれた。
「本当ですの?それならば、乗ります!乗らさせてくださいまし!」
「はい…街まで一緒に送ってくださるのでしたら…是非お願いしたいです…。」
改めて2人と自己紹介をした。
「私の名前は、カナリー・アステライト。こっちは、マリナ・アステライト。通称マナ。よろしくね。」
「ご丁寧にありがとうございますわ!わたくしの名前は、『ケーシィ・ライジェル』と言います。わたくしは見ての通りエルフですの。よろしくお願いしますわ。」
思ったよりかは短めのとんがった耳に綺麗な金髪で笑顔がかわいい女の子。
なんだかとてもお上品な人だと感じた。やっぱり言葉遣いかな?
というか、エルフなら…見た目で判断はできないと思ったが、
多分…同い年くらい…かな?正直なところ分からなかった。
魔術で遠距離戦が得意そうだなというのが、カナリーの第一印象だった。
「ぼ、僕の名前は…リ…、『リルフ・イオタル』…です。一応、人間です…よろしくお願いします…」
緑色のショートカットの髪に、丸メガネの男の子。
物静かというよりかは、緊張しているのかなと思った。
なんでも、2人は幼なじみらしく、小さなころからの友達らしい。
ケーシィとリルフもオービット魔術学園への入学試験に来ているとの事だった。
「聞いてくださいまし。リルフが歩いて、街まで行こうと言い出したのですのよ。10キロも離れているのに。それで、休憩を挟みつつ街まで来ていたのです。まあ、わたくしは鍛えていますので、全く問題ありませんわ。」
リルフはむすっとした表情で、
「だ、だって…僕んち…お金…無くて…でも、ケーシィが…」
「わたくしがリルフを誘ったんですの。一緒に行こうって。そしたら、歩いて行こうだなんて言い出すんですのよ。うちの馬車を使えばよろしかったですのに。ふふ、相変わらず変なお方ですわ。」
リルフは恐らく、経済面が恥ずかしいと思ったのであろう。
しかし、あれこれ考えているうちに正常な判断が出来ず、
そして歩いて行こうと言い出したのであろう。
マナがそんな仮説を立てていた。
そんな話をしているとついに街に着いた。
大きな門の前で手続きをし、そして
その重厚な門が開かれる。
太陽の光が差し込み、眩しさを覚えた。
ロードベルト国、中央衛星都市サテリッズ。
街というより、都市である。
活気にあふれており、その街並みは
近代ヨーロッパ風の街並みでレンガ造りの建物もある。
街の中央には、超巨大な時計台があり、今でも未完成との事。
その時計台を街の中心とし、何層にも分かれた衛星都市となっている。
中央学園都市エリア、川を挟み、商業都市エリア、川を挟み、
居住都市エリア、などの数多の都市が集合している。
ちなみに、魔力をエネルギーとした
魔列車というものも街中を走っており、
エリアごとの移動が可能となっている。
この街では必要不可欠な存在である。
「んー!やっとサテリッズに着きましたわ~!本当にありがとうございますわ。この御恩はいつか必ずお返しさせていただきます。」
ケーシィとリルフが感謝の言葉を伝えてくれる。
「いえいえ、そんな!私たちもライジェルさん達と行き先が同じだっただけです。これも何かの縁ですよ。でも、お気持ちは受け取っておきます。ありがとうございます!」
ケーシィはジーンと感動していた。真面目な人なんだと思えた。
「なんと寛大なお方…!それならば、わたくしの事はケーシィもしくはケイト等とお好きにお呼びくださいまし。あなた方に出会えたこと嬉しく思いますわ!」
とても嬉しそうで私も心がぽかぽかした。
私たちも、カナリー、マナと呼んでもらう事にした。
「ぼ、僕の事も…リルフで…いいよ。」
私たちは宿に行くため、ケーシィ達と一度別れた。
「すごく良い人たちだったね。マナ。」
「はい。初めは警戒しておりましたが、敵対心を全く感じられませんでしたので、私も良い人達と判断しています。」
入学試験前であるが、私とマナに友達が出来ました。
ケーシィ・ライジェル
エルフのお嬢様口調の女の子
リルフ・イオタル
ケーシィと幼なじみの気弱そうな男の子
第9話、読んでいただきありがとうございます。




