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ネットニュースの恋人


 極左、拗らせた人、一人活動家。

 

 何か自分がsnsで政治や社会に対して発信する度に様々な誹謗中傷で、コメント欄が溢れかえる。


 おかしいのは汚職や不正をしている政治家や問題を起こして居直っている権力者達だろう、俺はただ、この国を少しでも良くしようとして、snsで発信してるだけだ、高山は誹謗中傷を受ける度、強い憤りと世間に自分の正しさが、支持を集めない事に虚無感を感じていた。


 投げかれる言葉そのものには、頭に来るが、慣れてもいく、しかし、その投げかけられる、言葉の奥にある人間の闇には慣れる事はない。


 しかし今、中堅作家である高山は信じられない高揚感を感じていた。

 まさか、この時代の寵児が、自分のファン?しかも、思想も政権や社会に対するものの見方もまるで同じ、自分の政治的主張が炎上という形でしか相手にされない。

 社会の無反応の中でsnsで発信するという暗闇の中で、高山に今、大きな光が見えてきた様な気がしていた。


 高山自身が、自覚している記憶としてニュースで流れてくる政治家達の不正に、激しく怒る様になってたのは中学生ぐらいだ、周りにの友達にその話をしたも、政治家が、悪さをしたニュースを笑い話としての肴してしか扱わず、誰も気にしていない。


 これは良く言えば、社会が安定してるとも言えるのだが、高山にとって不正を政治家が起こしても只の笑い話しにしてしまう、級友たちとは次第に折りが合わなくなっていった。


 高山の通う中学は普通の都立校だったが、偏差値の高い難関校に行けば、それだけ知的水準が高く政治に関心がある者が多いだろうと思い、必死に勉強して、難関校に合格した。


 高山の思っていた通り、その高校の生徒は知的水準が高く、幅広く世の中に関心は持っていたものの、高山が政治の話題を振っても、特に強い関心はなく、皆、エンタメや恋愛などの話題が中心だった。

 

 高山は次第に高校でもクラスメートと一線を引くようになっていた。


 高校卒業後、難関大に入った、高山は政治活動のサークルの門を叩いた、そこで出会う連中は、同じ様な社会の不正に過度に見て見ぬ振りが出来ない人達だった。


 他の学生から極端な人と思われても居場所が見つかった事、自分の思いの丈を時に口論になりながらも仲間と議論することに、喜びを感じる日々を過ごしていた。


 ある日、政治活動集会に、皆で参加しようという話になった、教務課から集会に参加すると就職に影響があるよと釘を刺されているが、皆で一緒に参加しようと約束した。しかしその日、集合場所に来たのは、高山だけだった。


 何分、何時間までども三十人程いる部員誰も来ない、集合時間少し前に来た、高山は何分もかかる事無く分かった、皆、就職で不利なるのを恐れて来ないという事を、誰一人仲間に連絡しなかったのは、仲間達から世の中を良くしていこうという気持ちよりも全員が、己の保身に走った事を確認したく無かったからだった。


 その後、高山は部室にはいかず、仲間達とも連絡を取り合う事をやめた、高山は軽く人間不信になっていた。


 その頃から高山は小説を貪るように読み始めた、とにかく現実と向き合うのが苦しく、小説を読んでる時はその辛さを忘れる事ができた。


 そんな折一人の作家の本と出会った、その作家は有名な作家で、高山も小説を読むようになる前から名前と顔は知っている。


 大ベストセラーとなったその本の主人公は弱者に寄り添い、不正をする権力者に、周囲の冷笑に怯むことなく、忖度なく立ち向かっていく、更に、文体に優しさが溢れていて、何か正義感が浮いてしまう自分を肯定してくれるような気持ちが高山はした。


 こんな本を書きたい、この本を書いた西本という作家をもっと知りたい、当時ネット黎明期だったので、図書館に行って、この作家の小説からエッセイまで、貪り読んだ。


 その著作の多くが、反権力、社会の不正に弱者の視線で、厳しく物を申す人だった。


 この人に小説で認められて、一緒に弱者の立場に立って不正を働く権力者たちの不正を正したい。


 そう思うと矢も立てもたまらず、高山は徹底的に西本の本だけで無く、売れてる本や名作を研究し、小説賞に投稿を始めて、早い段階で、賞をとり、デビューでき、しかもそれが、西本も選考委員の一人である超有名文学賞をデビュー作で取るという快挙を達成した。


 有名文学賞を貰うにあたり高山は西本から「君の文章には、優しさが溢れている、その上文学としても良質だと思う、これからも頑張ってください」当時40歳ぐらいの年齢だった西本は年齢以上に貫禄と優しさがあった。


 憧れの人に褒められ有頂天になった、高山は意を決して自分がこれまで、西本に憧れていたこと、政治的活動を試みて、周囲から浮いていたこと、戦う西本に励まされた事、止めどなく溢れるように話した。


 それを静かに頷きながら、聞いていた高山は「僕の若い頃から学生運動は下火なってた、僕も大学の頃居場所がなかった、君のような世の中ために、政治活動に興味がある、若い作家がいるのは嬉しいよ小説家も思想的に色が付けられると商売しづらいという理由で政治発言に興味が有っても黙る人も多いからね」


憧れの人に嬉しそうに語られる事に、高山は夢見心地だった。

 

「嫌がらせとかあるかもしれないが、困った時はいつでも連絡しなさいと携帯の番号を渡された。


 この一件で、免罪符を持ったように、高山は前か政治理念的に、関心があった左の代表とも言われ政党に、傾倒していった。


 その党も、気鋭の作家が支持してるという事で、広報に高山を利用した。


 その後の高山は売れない本も結構あったが、ベストセラーも何本か飛ばす事に成功し、中堅作家の地位を占めていった。


 西本は高山の支持政党は支持するとは言わなかったが、高山がメディアで、時の政権批判する事を支持してくれた、その時人に嫌われようと誤解され様と自分の信念を貫きなさい」と優しく声を掛けてくれた事を心が折れそうな時支えにしていた。


 その暫く後、snsが登場し、それを高山は自分の支持政党の応援や、政権や社会、マスコミ批判など、に活用した。


 抗議の声が上がる事も多かったが(軒並み、その声を高山はブロックした)支持してくれる人もいて、文化人にしてはそこそこのフォロワーを獲得した。


 そこで、ある変化が起こった、政局が激しく混乱した際、超巨大ネットにュースサイトで、それほどのインフルエンサーでもなく、知る人ぞ知る存在であるに過ぎない高山のsnsでの政権批判が何故か、毎日の様にネットニュースのエンタメコーナーに勝手に掲載された。


 最初それを知ったときは、俺の意見を載せてくれるなのかと少し、嬉しいかったが、その考えは間違いだと直ぐに思い知らされた。


 このニュースサイトは、記事にコメント欄がついており、そこにユーザーがコメントでき尚且つ、そのコメントに、グッドボタンとバットボタンがついており、それを可視化できる。


 そのことは高山は知っているが、自分の政権批判に大量の批判と誹謗中傷コメントがつきそれにグッドボタンが何千、何万、と付いている、更にそのいわゆるコタツ記事と言われるのsnsの切り取り記事を見た連中から、自分のsnsに今まで見たことのない様な数のリプライがほぼ、批判と誹謗中傷として埋められた。


 高山は自分のsnsにリプライしてくる連中をおかしな奴らだと思い、とにかくブロックしまくら、いつも通り政権批判を繰り返していたが、毎日の様に

極端な言葉が切り取られ、その都度ネットニュースで、炎上していた。


 ほとんどの人がこの見出しを見てもアクセスしないのは理解しているが、炎上する度に高山は心が切り刻まれる様な痛みと自分の言葉が、届かない理不尽に苛まれた。


 さらに、高山の奥さんや周囲からも何か腫れ物に触るような感じで接してきてる、学生時代から周囲から浮いて居たのでそこには高山は敏感である、決して被害妄想ではないだう、正しいと思うことをしてるのに何故、そんな、釈然としない気分に苛まれてる、毎日を送っていると西本から連絡があった。


 高山は自分が一部の人達とはいえ、炎上要因として生け贄になっている事を弱みを見せたくないため

周囲に話せなかったが、西本になら話せると思い今まで溜め込んでいた苦しみを話そうとした。


 「高山くん、君snsで発言するのを控え方がいい」そこにいつもの西本の優しさや鷹揚さは一切なく、冷たく咎める様言った。


 「君ネットニュースでしょっちゅう、見出しにされてるよね、君と僕が交流がある事はウェブメディアなどで調べれば何度もお互い口に出しているので、分かる、それでたね、僕まで、××党のサポーターと思い込まれて、ネットの掲示板やsnsで反日人物として拡散されてるんだ」


 応援してくれてると思っていた西本のまさかの反応に、高山は狼狽した。


 「でも信念を貫き通しなさいと私に言ってくれたじゃないですか」高山は心の後ろ盾がなくなる恐怖から、絞り出す様に言った。


 「高山くん、私は君の支持する政党のサポーターじゃない、君がどの政党を支持しようが、何を発言しようか構わないが、私に迷惑を掛けるのはやめてくれないか、君の方から私と政権批判活動で距離を置いた多snsや公の場で言ってくれないか」


「商売の為に先生は政治的活動をしてたんですか、この国をよくするためではないのですか」


「あのねぇ、極端な思想だと認定されるとそれだけで、人を説得する事が困難になるんだよ、それに私も、作家としてまだまだ活躍したい、勿論、政権批判などを繰り返すと商売に邪魔なのは覚悟して政権批判を私はしていたが、今のsnsやデジタルタトゥーの時代に置いては、極端に偏った奴だと思われただけでも、商売に差し障りがあるんだよ、無論、世の中を良くすると言う意味においてもね」


 そう言うと「私からは以上だ」と言って西本は電話を切った。

 その言葉とただのスマホの連絡を切る音が共に冷たく高山には感じた。

 

 「あなた」後ろに、高山の妻の和美が立っていた

 

 「今の話、書くつもりじゃなかったけど、全部聞こえていたわ」


  和美とは政治的な話をする事は無かった、それは、和美が政治に関心がないという事では無く、2人の中で、政治と宗教の話は辞めようと、結婚する前から約束していた。


 それを切り出したのは和美だが、高山も今まで、それで、人間関係が拗らせてきたのでokした。


 「あなたに今まで黙ってだけど、あなたの発言がネットニュースのエンタメや社会記事で切り取られてるのは知ってた、それから私を近所の人の私を見る目が、何か憐れなものを見る様な感じがして、この間大学の同級生達と会った時も、腫れ物を触る様な感じで接してくる、私は声高に政治的発言をする人にはついていけない」和美はやや遠慮しながらもはっきりと言った。


「政治的な話をするのは国民して当たり前だろ、何が悪いんだ」ただでさえショックを受けていた所にこの言葉を投げがられた、高山は、初めて和美に大声で怒鳴った。


 「あなたがのsnsでの政治的発言が、バランスが取れていて的を得ていたのならネットニュースの餌食になってなかったんじゃないの、言葉に需要が無いんでしょ」普段温厚な和美が、感情を昂らせて言った、それが和美が追い込まれていたのを表していた。


 「私、実家に帰らして頂きます、荷物は後で取りに来るわ」


そう言うと和美は高山に顔を近づけ「私は、活動家を好きになったんじゃ無い」切り捨てる様に言い放ち勢いよく、家を出て言った。


 高山は和美を追う事も出来ず、和美の言葉が、何度も頭の中で繰り返していた。


 落ち込んでいた高山に、出版社の編集者から、ある人が高山に会いたがってると言ってきた、先方の都合により、誰かは言えないが、面会して頂かないかと。


 高山はこの暗く沈んだ気持ちが少しでも紛らわせるならと思い、面会を許諾した。


 訪れてきたのは、キリッとした顔立ちの背の高い30歳ぐらいの男だった、高山は応接室に男を通し、高山が座る向かいのソファに座らせると男は私は高島義夫と言います。


 高山は驚いた、高島と言えば、次々と大ベストセラーを生み、その作品がこれまた次々とドラマ、映画化され世界中で爆発的な大ヒットを連発している作家だ、そしてこの作家は顔を世間に公にしていない。


 「本当、君はあの高島義雄なのか、証明するものは」高山が問うと、紹介してくれた編集者に聞いて下さい」と言った。

 

 高島を紹介した編集者に連絡をして確認してもらったところ間違いは無かった。


 「唐突にお伺いして申し訳ございません、私は高山さんの作品を見て作家になろうと志したんです、高山は僕の心の中の師匠です」


 心の中の師匠、当代一とも言える、超売れっ子作家に言われて、高山は沈んでいた気持ちも吹っ飛び有頂天になった、高山は高島の本を見た事があるか、弱い立場の者への優しい物の捉え方だったり、既得権益者たちに対する鋭い批判的な見方が自分に共通するとは思ってはいた。


 「高山さんが、これからも世の中を少しでも良くするよう、発言される事を応援してます」


言われた後、高山は現実に戻り「君がそう言ってくれるのは嬉しい、でも俺の政権批判に需要がないんだ」そう言うと、高山はこれまでのネットニュースの切り取り記事や、西本や和美そして、自分の活動に冷淡だった、友人達の話を堰を切ったように話した。


 高島は何も言わず高山の話を聞き終わった後「先生、あなたは昔著作の中で、自分の言葉がたった一人しか救えなくても、そのたった一人の為に寄り添う事は自分の命を掛けるだけの価値があるとおしゃられました、私は自分が世の中に価値のない人間んだとさいななまれる時この言葉を胸に踏ん張ってきました、需要がないって仰いますが、先生のフォロワーは10万人以上はいます、勿論、アンチや、死にアカが含まれているはずですか、先生は世間に需要が無いからと言って、政権や権力に発言する事を止めるのですが、世間の空気など、一度流れが変われば、一気に変わる物です、でも戦う事を放棄しては、その流れも来ることはない、それに少なくても、この私が、先生の権力者達に立ち向っていく発言に救われてる。例え、私一人しか居なかったとしても、その一人を救うために発信していく事が無駄な事でしょうか


 高山の行ってきた事が、意味があったと救われた気持ちがした。


 「有難う、君のおかげで、救われたよ」


高島はにこりと笑うと「心から尊敬する人に言われて嬉しいです」と言った。


 「そこで、私から先生にお願いがあるのですが、まず、はこれをご覧下さい」


 差し出された写真を見て高山は驚愕した、そこは現政権与党のキングメーカーと呼ばれる、超大物議員だった。


 この議員は高山の理想の政策と全てが違う上に黒い噂が絶えないが、マスコミをけむに巻いて、何のダーメージもなく、権力の座に居座っている。


 その議員が個室の病室で寝ている姿だった、この議員が入院したなんて話は聞いた事がない。


 「これは一体」期待の入り混じった高揚を含んだ動揺を隠さずに高山は言った。


 高島はその姿を見て話し始めた。


 

 

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