推し騎士に握手会で魔力を貢げる世界
天幕で区切られた握手会場で、私は興奮気味に彼の手を取りました。
「今回の任務も無事に帰ってきてくださいねっ。私、信じて待ってます!」
「ありがとう……また俺のところに来てくれたんだ、メリィちゃん」
「もちろん、ずっと来ますよ。わ、私は……ネロくん一筋ですから!」
言っちゃった。
私の推し騎士――ネロくんは「そっか」と呟いて目を逸らしました。とても居心地が悪そうだけど、お耳が少し赤くなっています。
ああ、この初心な態度が最高に可愛い!
これを見るためにこの一か月頑張って生きてきたと言っても過言ではありません。
色素の薄い柔らかい茶髪と、アイスグレーの瞳。
前髪が長いせいですぐに気づけない人も多いですが、はっとするほど綺麗な顔立ちをしています。彼は平民ですが、王侯貴族と比べても全く引けを取らない美しさだと思います。
年齢は私より一つ年上の十六歳。顔立ちは幼さが残っていますが、苦労してきたのかなと思わせる憂いを帯びた眼差しがたまりません。
ずっと見てられる……。
もちろん見た目だけではなく、寡黙で控えめなところも魅力的です。握手した手は固くてマメがあって、訓練を頑張っているのが分かるのもポイントが高いです。
は、いけない、いけない!
これから彼は国に害をなす魔物討伐に向かうのです。死と隣り合わせの危険な任務から無事に生還してもらうためにも、私も真剣に国民の務めを果たさないと。
「我が騎士に、聖なる加護を」
お決まりのセリフとともに、触れ合う手のひらからネロくんに魔力を流し込みます。
怪我がありませんように、活躍できますように、私のことを少しでも可愛いって思ってくれますように!
願いとともにありったけの魔力を譲渡すると、ネロくんの手の甲がぴかっと光りました。紫色の射手の紋章が浮かんで、私の魔力を蓄え終えたことを示しています。
「……我が姫君に、必ずや勝利を」
ネロくんは即座に跪き、私の手を取り直してくれました。そして、まるで忠誠を誓うかのように恭しく礼をしてくださいます。
これも一連の流れではあるのですが、何回見てもうっとりしてしまいます。大好きな人に疑似的にでもお姫様扱いをしてもらえるなんて最高……幸福の妖精が両頬にぶら下がって、きっと今だらしない顔になっています。
「……あの」
「はい、なんでしょう?」
ネロくんは立ち上がってぱっと手を離すと、戸惑いがちに言いました。
「今回の任務はただのスライム退治だから、こんなに魔力をくれなくていいよ」
「そんな! ネロくんの体に傷一つでもついたら困ります。虫刺され一つでも許せないのに」
「でも」
「譲渡した魔力が多く感じるのだとしたら、私の想いが強いってことです。そのまま受け取って使ってください」
「…………」
ああ、重すぎる愛にドン引きされています。でもいいの。気持ち悪がらせていたら申し訳ないけれど、ネロくんの体の方が大切ですもの。
でも、やっぱり恥ずかしい。もう限界!
「お仕事頑張ってくださいね! 星灯騎士団に栄光あれ!」
名残惜しさを噛みしめながら、私は急いで天幕を後にしました。
このエストレーヤ王国はいろいろと変わっています。
その最たるものが星灯騎士団――選ばれた見目麗しい百名の若者による、魔物討伐専門の騎士たちの存在でしょう。
大昔、この国は魔女に呪われてしまい、定期的に“使い魔”と呼ばれる特殊な魔物に襲われるようになりました。
使い魔の特徴は三つ。
「一、やたらと強くて巨大。
二、美男子を前にすると弱体化する。
三、恋人や妻を持つ者が戦場にいると暴れ狂う」
私は最近できた留学生のお友達に、騎士団設立の経緯についてレクチャーをしていました。
「なんだか、なんとも言えない痛々しさのある魔物ね」
「きっとこの魔女さんは非モテで、コンプレックスの塊だったんですよ!」
しかしこの使い魔は侮れません。なにせやたらと強いのです。
従来の使い魔との戦いでは大量の兵士を投入し、多くの戦死者を出してきました。
それを憂いた歴代の国王陛下は、長年の研究の末、なんと魔力の譲渡を可能とする特殊な魔術を開発したのです!
戦闘に長けた美男子に魔力を集めて強化すれば、使い魔との戦いを有利に進められるというわけです。
そうして少数精鋭の騎士団が結成されました。
魔力量が増えるだけで身体能力がぐっと上がるし、魔術の詠唱時間も短くなります。少人数の部隊であれば連携も取りやすく、戦死者の数は驚くほど減少しました。
「なるほど。使い魔と効率よく戦うために設立されたのが星灯騎士団ってことね。この握手会が魔力譲渡の儀式?」
「そうです。騎士様の手には魔力を蓄えるための特殊な紋章があってね、手と手で触れあって、念じるだけで譲渡できるんです。五日間くらいは魔力を蓄えられるそうですよ。エナちゃんも参加してみれば良かったのに。ほら、これが今回の任務に参加する騎士様たち。格好いいでしょう?」
会場の掲示板には、今回の任務に就く騎士の顔写真が貼られています。
私にとってはもちろんネロくんが最高で最上なんだけど、素敵な人はたくさんいます。揃いも揃って顔がいいです。
お友達のエナちゃんは困ったように笑いました。
「この国の文化に文句をつけたいわけじゃないけど、いくら見目麗しくても、見知らぬ異性といきなり握手なんて……」
「私も最初はそうだったよ。ネロくんと出会うまでは! あれは半年前のよく晴れた日の――」
ネロくんの魅力を語り出そうとしたところでストップがかかりました。
「待って。星灯騎士団のこと、もう少し教えて。結成自体はわりと最近なのよね?」
「はい! 昔は使い魔が現れる度に既存の騎士団や軍から美形を選抜してたんですけど……やっぱり格好いい人には恋人がいるでしょう? 任務の度に別れさせるのも可哀想だし、パートナーの存在を隠して戦いに出て使い魔が大暴れしちゃうことがあったそうです。それならもういっそ恋愛禁止の騎士団を専用で作っちゃおうって、五年前に現女王陛下が星灯騎士団を設立したんです。普段は今日みたいに、使い魔以外の魔物の討伐もしていますよ」
星灯騎士団に所属している間、彼らは結婚するどころか恋人すら作れません。必然的に騎士たちの年齢層は低くなり、十代半ばから二十代前半の美男子のみが在籍しています。
もちろんネロくんも今はフリーのはず。片想いはセーフなので、好きな人自体はいるかもしれませんが……。
「それに、最近の魔術研究で分かったことがあるんです。魔力の譲渡に恋愛感情が絡むと、受け渡される魔力量が膨れ上がるそうです。つまり……」
「つまり?」
「私たちの愛が強ければ強いほど! 推し騎士様の力になれるってことです!」
使い魔が現れた時、騎士たちに魔力を譲渡するのは国民の義務とされていますが、今では強制されなくたって、魔力という名の愛を注ぎに行く乙女は多いです。
大好きな騎士様の力になれるなんて最高の快感ですから!
エナちゃんは大きなため息を吐きました。
「星灯騎士団の強さの秘密がよく分かったし、ファンの女の子を姫扱いしてちやほやするのも当然だわ。その方がたくさん魔力を貢いでもらえるものね」
「なんか人聞きが悪くないですか?」
「だって、国が見目麗しい騎士たちを利用して、女性をその気にさせて魔力を巻き上げてるってことでしょう? 魔力をお金に置き換えて考えると、かなりエグいわよ」
「異議ありです! 騎士たちは国を守るために命懸けで戦ってるし、それを応援させてもらって、少しだけ乙女の夢を叶えてくれる……素敵なシステムですよ。女王陛下万歳!」
握手会を企画・実行したのも、何を隠そう現女王陛下なのです。
その他にも、定期的に写真撮影会や舞踏会が催され、大通りには下位の騎士たちが店員として働くカフェもあります。それらの参加料などが騎士のお給料になり、美味しいものを食べてもらって、巡り巡って彼らの血肉になっていると思うとものすごく幸せな気分になって――。
「お金も貢がされてるじゃない!」
「変な言い方しないでください。払わせてもらってるんです。そうだ、今度一緒にカフェに行きましょうよ。トップ騎士たちがプロデュースした推しメニューが食べられますよ! まぁ、ネロくんは基本的に厨房スタッフなんですけど、運が良ければ会えますから」
「目を覚まして、メリィ。魔力はともかく、お金は減ったら自然には戻らないのよ」
外国出身のエナちゃんには、受け入れがたいシステムのようです。とても健全で楽しい体験ができるのに。
☆
今日も彼女と上手く話せなかった。
もっと日頃の感謝を伝えたいのに、どうしても照れが邪魔をする。
「おい、ネロ。ぼうっとするなよ」
「あ……すみません」
周囲への警戒を失念していた俺を、ジェイ先輩が注意した。
先輩が指さした茂みが動いたので、俺は矢を番えて構える。出てきた水色のスライムの核を即座に射抜き、ほっと息を吐いた。
「やっぱりお前、腕がいいな。さすが狩人の息子」
「ありがとうございます」
王都近郊の街道の近くにスライムが大量発生したという報せを受け、新人の訓練も兼ねて、星灯騎士団が出動することになった。
出発前にたった数時間だけ広場で魔力譲渡の握手会が開催された。通りかかった心優しい王都民の方々が、募金感覚で魔力を分けてくれる。
ファンがついている騎士の天幕には、若い女の子が列をなしていたけれど、基本的に俺のところには行列に並ぶのを面倒がった善意の民しか来なかった。
……あの子以外は。
ほとんどのスライムを倒し終えて、素材の回収を始める。スライムの粘液は様々な薬や顔料になり、星灯騎士団の大切な活動資金に変わる。
この任務の報酬は俺にとっても有難い。もっとたくさん魔物討伐の任務に就きたいものだ。
俺が星灯騎士団に入ったのは、金を稼ぐためだ。
父が他界し、母が病に倒れてから、俺の生活は一変した。村の医者では埒が明かず、父の仕事道具を売ってなんとか金を作って王都の医者に母を診せたところ、手術が必要な難病だと判明した。
狩りくらいしか特技のない俺には、他に高い入院費と手術代を稼ぐ方法はなかった。
半年前、たまたま病院に来ていた星灯騎士団の関係者が俺の話を聞いて、スカウトしてくれなかったら今頃どうなっていただろう。
父は村一番の狩人で、母は村一番の美女だった。一人息子の俺は、両親の良いところを受け継いだらしく、騎士団の採用要項を満たし、運良く入団試験にも合格できた。
平民ゆえに魔力は少ないと言われたが、前線に出る剣士や盾持ちと比べ、射手はそこまで魔力を求められない兵種だった。本当に俺は運に恵まれているようだ。
入院中の母はとても心配している。
なにせ、危険な仕事だ。スライム退治ばかりなら良いが、魔女の使い魔が出現した時には命懸けで討伐しに行かなければならない。
「危険な仕事で治療費を稼ぐよりも、結婚して孫の顔でも見せてくれるほうが嬉しい」なんて母親に言われた日には、どういう顔をすればいいのか分からなかった。
星灯騎士団に在籍している限り、恋愛はご法度なのに。
「そう言えば、今日も来ていたのか? メイちゃんだっけ?」
「……メリィちゃん、です」
「そうそう! 羨ましいなぁ、おい。あんなに可愛くて、胸もでかくて、魔力をたっぷりくれる子、なかなかいないぜ。カフェにも通ってくれてるんだろ? 金もあるってことは、もしかして貴族のご令嬢か? 本当愛されてるよなぁ、ネロ。俺もああいう固定ファンが欲しいぜ」
「やめてください。“姫君”をそういう目で見るのは」
ジェイ先輩はからかうように口の端を持ち上げた。
「悪い悪い。お前にとって、唯一のお姫様だもんな。大切にしなきゃな」
「…………」
星灯騎士団を熱心に応援してくれる女性を、俺たちは“姫君”と呼んでいる。その多くは平民で、推し騎士に想いで増加した魔力を譲渡しに来てくれる。
人気の騎士のほとんどが王侯貴族だ。平民の少女たちにとっては雲の上の存在で、このような機会がなければ関わることなどできないからだろう。憧れの騎士様の力になれるとあって、少女たちは張り切って行列に並んでいる。
もちろん平民出身で人気の騎士もいないことはない。彼らは明るくて面白いか、とんでもなく強い近接戦士だ。根暗で口下手で地味な射手……俺とは違う。
俺も顔立ちは綺麗だと言われるが、そもそも騎士たちはみんな美麗だ。男の俺でもドキドキするような美しい顔が並んでいる。どうやったって俺は目立たない。
ところが。
あの子――メリィちゃんだけは、俺が任務に出る日は必ずと言っていいほど握手会に来てくれる。彼女と握手すると、尋常ではないほど魔力が渡される。未だに信じられないが、どうやら本気で俺のことを“推して”くれているらしい。
メリィちゃん以外に握手会に来てくれるのは、推しを持たない善意の民くらいだ。おじいさんおばあさんや、小さな子ども連れのお母さんなんかは、列が空いている俺のところに来てくれる。とても有難いが、正直、彼らからもらえる魔力はとても少ない。
ただでさえ俺は魔力が乏しいのだ。メリィちゃんが推してくれなくなったら、騎士団の足手まといになるかもしれない。最悪、任務に出ることもできなくなって、母の手術代が稼げなくなってしまう。
そういう意味でも、彼女の存在は生命線だと言える。
「大切にするって、どうすればいいんでしょうか? 何をすれば喜んでもらえるか分からなくて」
彼女に少しでも何かを返したい。
メリィちゃん頼りではなく、もっとファンを増やす努力をすべきなのは分かっているが、なかなか成果が出ない。
いざ女の子を前にすると、口ごもってしまうのだ。村の同年代は男ばかりだったし、王都のキラキラした女の子は眩しくてちょっと怖い。
自信なさげに「応援して下さい」と言ったところで、また会いに来てくれるはずがない。誰だって格好良くて、活躍が期待できる強い騎士を推したいだろうから。
それに……いけないことだと思いつつも、俺はたくさんのファンに応援してもらうよりも、メリィちゃん一人がずっと俺を推してくれる方が嬉しいんだ。
ジェイ先輩は知る由もないだろうが、初めて会った時のメリィちゃんはあんなにキラキラと輝いていなかった。どちらかと言えば地味で、俯いていて、声も小さかった。
しかし二回目以降の握手会からは、どんどん明るくおしゃれになっていった。
『私が推していることで、ネロくんに恥ずかしい想いをさせたくないですから』
俺のために着飾ってくれているんだと思うと、もう直視できなかった。
笑顔も恥じらう仕草も可愛くて、いつも貴重な時間を割いて会いに来てくれる。俺にとって本当に特別な存在で、もし他のファンができても公平に対応できるか分からない。
今もそうだ。何をすれば喜んでくれるのか、いつもメリィちゃんのことばかり考えてしまう。
「そりゃやっぱり、丁寧に対応することじゃねぇか」
「騎士の礼はきちんとしているつもりです。でも、喋るのはやっぱり苦手で……会話が長続きしないんです。五分も何を話せばいいのか。個人情報の質問は禁止されてるし」
「え、お前、一人五分も使ってるのか?」
「ほとんど誰も来ないんで」
握手会での一人当たりの対応時間はそれぞれだ。
騎士団のトップたちは行列が長すぎて、握手の時間が三秒程度しかないらしい。ほとんど流れ作業だが、それで人間を超越した魔力を手に入れている。
トップたちのことは心の底から尊敬しているが、羨ましくはない。一日に何百回も握手するなんて、考えただけで気疲れする。
想いと魔力の外に、期待を託されているのだ。俺はその重責に耐えられる気がしない。
「じゃあ、そうだな……騎士として活躍すればいい。功績授与式で名前を呼ばれりゃ、喜んでくれるだろ」
「活躍……」
「周期的に、そろそろ使い魔が出てもおかしくない。お前はまだ戦ったことないよな?」
「はい。前回は選抜漏れしてます」
半年前の使い魔討伐の際は入団したばかりだったから、選ばれなくても仕方がない。むしろ、選ばれなくて良かったと安心していた。
母が嫌がるだろうし、正直俺も怖かった。
「射手は人数が少ねぇから、お前の腕なら選ばれる可能性はあるぞ。アピールしていけ」
「……はい」
「はは、そんなにビビるなよ。これが星灯の騎士の本当の使命だろ」
ジェイ先輩は励ますように俺の肩を叩いた。
そうだ。俺たちの仕事は女の子にちやほやされることではない。使い魔を倒して国を守るために存在している。
「尽くしてくれる姫を守るためにも、頑張らないとな」
俺は深く頷いた。
☆
私がネロくんに出会ったのは、半年前。
学校でお友達と上手くいっていない時期でした。
実は私、祖父の代で没落した貴族家の出身なのです。父に商才があったおかげで生活はできていますが、学校でその話が広まって浮いてしまっていたのです。仲良くしていた子とも疎遠になって、口数も笑顔も減っていました。
そんなときです。
広場で星灯騎士団の握手会が催されていました。普段は使い魔の出現時にしか握手会に行ったことはありませんでしたが、きっと人恋しくなっていたのでしょう。いつの間にか賑やかな空気に惹かれて足が動いていました。
近づいてから気づいたのですが、人気の騎士の列には同じ学校の生徒が並んでいるかもしれません。私は慌てて一番隅っこの空いている天幕に入りました。
私が足を踏み入れた瞬間、そこにいた騎士様――ネロくんは目を見開きました。
「あ……」
「えっと……」
介助のスタッフすらいない空間に、私は面食らいました。とても綺麗な顔立ちの男の子と二人きり。
思わず逃げ出したい衝動に駆られましたが、
「ありがとう、ございます」
ネロくんが心の底から安堵したように頬を緩めたので、私もなんだか気が抜けました。
「俺、その、今日が初めてで……誰も来てくれないと思ってたからびっくりして」
「そ、そうなんですか。新人騎士様なんですね」
お互いぎこちなく手を差し出し、私は握手とともに魔力をお渡ししました。
お姫様扱いされたい時はここでお決まりのセリフを言うのですが、その日の私はすぐに手を放してしまいました。
「が、頑張ってください。怪我がないように祈っています」
そう言うのがやっとでした。単純に心配でした。こんなに優しそうな男の子に騎士が務まるでしょうか。
「ありがとう。応援してくれたきみのためにも、精一杯頑張ります」
ネロくんはそう言って淡く微笑みました。
その瞬間、世界中の時間が、いえ、私の心臓そのものが止まってしまったのかと思いました。
か、かっこいい!!!
こんなにも唐突にあっさりと、恋に落ちることがあるのですね。
その日、ネロくんに出会ってから、私の人生は一変しました。寝ても覚めても彼のことしか考えられず、星灯騎士団の動向を追いかける生活が始まったのです。
なんて充実した毎日でしょう。
学校での視線なんて気にならなくなりました。気になるのは彼に関することだけ。
身だしなみに気を付けるようになり、父の仕事を手伝ってお小遣いをもらって、メイクやファッションの研究もたくさんしました。
だって、少しでも彼に可愛いと思われたい。私のことを覚えてほしい。
幸か不幸か、ネロくんを推しているのは今のところ私だけのようなので、すっかり認知してもらっています。嬉しい反面、他の方たちの審美眼を疑います。どうしてネロくんに人気が出ないのか分かりません。
私は随分と欲張りになりました。
もっと彼のことを知りたい。私のことを知ってほしい。このままの関係でいたい。もっと親しくなりたい。みんなに愛されて欲しい。私だけの騎士様でいてほしい。
日によって想いは変わります。純粋なファン心理と、乙女心が殴り合いの喧嘩をしています。
だけど、一つだけいついかなる時でも変わらない願いがあるのです。
ある日、使い魔の出現が報じられました。
すぐさま任務に向かう騎士の選抜が行われ、広場で大規模な握手会が催されることになりました。
掲示板にネロくんの顔写真が貼られているのを見て、血の気が引きました。ついに、ついにこの日が来てしまいました!
使い魔出現時の握手会への参加は、国民の義務です。
重要な仕事やのっぴきならない用事で動けない人、病人以外の王都民は全員参加となります。学校も休校になりました。
「すごい人ね」
「うん……」
大混雑している会場を前に、私とエナちゃんは圧倒されていました。
留学生のエナちゃんに義務はないのですが、周りの空気に当てられたようで参加を決意して下さいました。人命が関わっていますからね。
「メリィは、いつもの彼のところでしょう?」
「もちろんです。エナちゃんは?」
「そうね。メリィには悪いけど、せっかくだから、トップの騎士様のところに並んでみようかしら。この国の第二王子様にお会いできるなんて、すごいことだもの。貴重な体験だわ」
使い魔の討伐任務には、当然騎士団の最高戦力が駆り出されます。
五年前の設立時から不動のNo.1にして、絶対的エース。
エストレーヤ王国第二王子のアステル殿下。強くてかっこよくて国民想い、最強最高の騎士団長です。
星灯騎士団の存在が国民に受け入れられたのは、女王陛下が愛する息子に危険な役目を託したことが大きいと思います。アステル殿下はその期待に見事に応え、多くの民に愛され、騎士たちを引っ張っています。
「多分、三秒しか会えませんよ? 騎士の礼もしてもらえませんし」
「いいわ。その分、順番が来るのも早そうだし」
エナちゃんと別れて、私はネロくんの元へ向かいました
さすがに今日は少し混雑していますし、一人当たりの時間も短いようです。相変わらず、善意の参加者ばかりで、姫扱い希望のファンは少なそうですが。
私の順番が来ました。
ネロくんにとっては、初めての使い魔討伐任務。心配でたまりません。
「ああ、ネロくん。どうか、無事に帰ってきてくださいね……!」
いつだって、私の一番の願いは彼の身の安全です。
正直、行ってほしくありません。全力で引き留めたい。
でもそれは、他の騎士様を推しているファンも同じ気持ち。誰かが命を懸けて使い魔と戦わねばならず、そのために設立されたのが星灯騎士団です。
だから、口が裂けても「戦わないで」なんて言えません。これは姫君たちの暗黙のルールです。想いと一緒に魔力を託して、無事を祈るのが務めです。
「うん。ありがとう、メリィちゃん。俺、頑張るから」
頑張らなくていい。安全な場所にいてください。
その言葉を堪えて、私は差し出された彼の手を握ります。
いつもよりも冷たい指先に、彼も緊張しているのだと悟りました。私、泣いてしまいそうです。
「わ、我が騎士に、聖なる加護を……っ」
魔力と心の全てを、彼に差し出します。
「我が姫君に、必ずや勝利を」
ネロくんはいつもよりもずっと丁寧に、騎士の礼をしてくれました。
そしてすぐに離すかと思われた私の手を、もう一度両手で包み込み、言いました。
「メリィちゃんのことは、俺が……俺たちが守るから。大丈夫だよ」
いつもはほとんど目が合わないのに、ネロくんは真っ直ぐ私を見ていました。
結局、我慢できずにその場で泣いてしまいました。
☆
メリィちゃんの涙は、初めて見た。
こんな時でも彼女のことを考えてしまうなんて、俺はどうかしている。
「くっ! 早く立て直せ!」
「来るぞ! いったん退避だ!」
騎士たちの怒号が飛ぶ。
巨大なカラスの使い魔が、不気味な鳴き声とともに宙を旋回している。大地には同じ団服を身にまとった騎士たちが倒れ伏していた。
敵は空を飛ぶ上に、風を自由に操り、動きも早い。随分と苦戦していた。ヒットアンドアウェイでじわじわと戦力を削られ、こちらの攻撃はほとんど当たっていない。
近距離戦闘を得意とする騎士たちも今日は魔術を駆使しているが、敵の動きが早くて狙いが定まらないようだった。
「……っ」
こういう時こそ、射手の出番だ。魔術の発動よりも早く攻撃できて、矢がある限り戦える。
俺がやらなきゃ。頑張らなきゃ。
しかし、強大な敵を前にとっくに冷静さを失っていて、矢を番える指先の震えが止まらない。
俺たち弓兵は主戦場から少し離れた岩場に身を隠して、攻撃のチャンスを窺っていた。先ほど何人かが業を煮やして突撃し、使い魔の攻撃を受けて戦線離脱してしまった。
他の部隊も同じような状態だ。どんどん追い詰められていく。
「使い魔ってこんなに強いのかよ! 弱体化してこれか!?」
「いや、今回は特にヤバいぞ。強いだけじゃなくて、知能も高い。こんなの、どうすりゃいいんだ……」
新人だけではなく、先輩騎士たちの心も折れかけていた。
もう駄目だ。勝てっこない。戦い続けたら待ち受けているのは死だ。
空を覆うほど巨大な黒い翼を前に、俺は弓を握り締めて、頭を抱えた。本物の戦場を甘く見ていた。半端な覚悟で来ていい場所ではなかったのだ。
「まだだ! 諦めるな!」
強い声が荒野に響いた。
「団長……」
星灯騎士団長であり、この国の第二王子。
アステル・エストレーヤが剣を高く掲げた。透き通るような金髪と対を成すように、鈍色の剣が空に映えた。
そして、彼の右手の甲の紋章が赤く輝く。その膨大な魔力は、彼の人望の証だ。
ああ、なんて格好良い背中だろう。
「俺たちの後ろには誰がいる! 愛する家族を、友を、姫たちのことを思い出せ!」
空中で身を翻したカラスの使い魔が、アステル団長を狙って急降下した。
一閃。
団長の剣と交差し、カラスは空高く逃げるように上昇した。大したダメージにはならなかったようだが、その一撃は間違いなく騎士たちの心に希望を灯した。
「俺は逃げない! 一歩も引かない! 信じて力を託してくれた民のため、命を賭して最後まで戦う! 同じ志の奴は、前へ進め!」
その声に、俺の覚悟も定まった。
今も俺の帰りを待ってくれているだろう彼女の顔を思い浮かべる。いつもあんなに応援してくれているんだ。ここで応えなきゃ男じゃない。
「来るぞ!」
また使い魔が攻撃の体勢を取る。
この距離では分が悪い。俺は岩場から駆け出し、走りながら狙いをつけて射った。
「っ!」
一射では当たらない。それは想定内だった。
避けたところを先読みして、二射目を放つ。巨大な使い魔にとっては小さな矢だろうが、眼球を狙われたらさすがに無視できないだろう。案の定、使い魔はほとんど反射的に風を操って矢を絡めとった。
「ここだろっ!」
全てが布石。獲物の動きを予見する方法は、亡き父に叩き込まれた。それに、この距離で外すようなら、狩人失格だ。
風が吹き荒れ、翼が羽ばたいた瞬間、俺は即座に番えた三本目の矢を放った。
右手の紋章が紫色に光り輝く。メリィちゃんが俺にくれた魔力の全てをこの一矢に込めた。それが俺にできる最高出力の攻撃だった。
地面に叩き落としてやる。そうすれば、絶対に俺たちは負けない!
☆
その日、王都全域に鐘の音が響きました。
通りを歩く人々が顔を上げ、瞬く間に笑顔の花を咲かせます。
「騎士様たちの凱旋よ!」
「この叩き方……戦死者ゼロだ! 良かった!」
「出迎えに行きましょう! わたしたちの騎士様を!」
私とエナちゃんは顔を見合わせ、広場へ向かって駆け出しました。
門から広場へ続く大通りはすぐに民衆でいっぱいになりました。
やがて星灯騎士団の旗持ちを先頭に、馬に乗った騎士様たちや馬車が広場に入場してきます。
歓声と拍手が鳴り止みません。
私はめいっぱい背伸びをして、彼の姿を探しました。
「ネロくん!」
馬車の荷台から降りてきた彼の姿を見つけて、私は叫びました。その声は掻き消されて届かなかったようです。この大勢の人の中で、私を見つけてもらうことは不可能でしょう。
距離が遠い。でも、大きな怪我をしているようには見えません。それだけで、私はここ数日の不安から解放されました。
そのまま凱旋のセレモニーが始まりました。
壇上の前面に騎士団のトップたちが並びます。それだけで乙女たちの黄色い悲鳴が響いて耳を塞ぎたくなるほどでした。
後ろにいるはずのネロくんの姿が見えなくて、私は不満でいっぱいでした。今度は絶対に舞台の最前列に陣取れるように帰ったら作戦を練らないと。
「みんな、ただいま!」
拡声の魔術を使って、団長のアステル殿下が手を挙げて叫びました。
王族とは思えぬ気安い挨拶に、広場に笑い声が響きます。
騎士様たちの中には包帯を巻いている方もいますが、集まった民衆に笑顔で手を振っています。その姿に胸が熱くなりました。
「今回は特に厳しい戦いだったけど、誰一人として犠牲を出さずに帰ってくることができた。全部、ここにいるみんなの応援のおかげだ。本当にありがとう!」
アステル殿下は朗らかに、よく通る声で言いました。少し前に使い魔と激闘を繰り広げたとは思えない爽やかさです。
そして広場に集まった民を見渡し、振り返って仲間の騎士たちの顔を一人一人確認してから、ふっと顔を伏せました。
「本当に、よかった……。またみんなを家族と会わせてやれて」
殿下の涙で震えた声に、どよめきが起こりました。
ああ、これだからアステル団長の人気は不動なのです。底抜けに明るくて頼もしい王子様のこんな姿を見て、心を打たれない国民はいません。
「アステル様……!」
国民ではないエナちゃんですら、私の隣で口元を両手で覆って息を呑んでいます。どうやら人生を賭してお慕いする相手に出会ってしまったようですね。ようこそ、こちら側へ。
「あー、ごめん! じゃあ功績授与式を始める。よろしくお願いします、兄上」
副団長の肩を借りて泣いているアステル殿下から、第一王子のサミュエル殿下へと進行役が変わりました。
呆れたような、慈しむような瞳で弟を見つめながら、サミュエル殿下がこの度の騎士団の活躍を称えました。
「では、功績授与に移る。アステル・エストレーヤ。団を鼓舞し、見事使い魔の首を討ち取ったそなたに、第一戦功を授ける!」
盛大な拍手とともに、魔術を使える民衆が、それぞれ赤い光球を発現させました。ファンの数が段違いということもあって、広場全体が赤く燃え上がっているようでした。
アステル様が大きく手を振ってそれに応える光景は、何度見ても感動的です。
「第二戦功は、バルタ・ダルト! 使い魔の決死の猛攻から騎士たちを守り切った! また、負傷者をいち早く回収したことで、戦死者ゼロという喜ばしい結果を生んでくれた!」
盾持ちという防御の要のトップが、バルタ様です。
バルタ様が逞しい腕を天に突き上げると、彼のファンが喜びの声とともに、彼の紋章の色である黄色の光球を放ちました。男性ファンも多く、雄叫びのような声も聞こえてきます。
「第三戦功、トーラ・クロム。勇敢にも囮となって使い魔の注意を惹きつけ、勝機を呼び込んだ。彼は怪我の治療のために不在だが、命に別状はない。安心せよ」
アステル殿下と双璧を成す、騎士団で二番目の剣士です。
彼のファンたちは壇上に姿が見えないことに動揺していたようで、無事だという発表にすすり泣く声が聞こえました。青い光がそこら中から打ち上がり、広場が海のように美しく波打ちました。
「そして最後に、第四戦功……ネロ・スピリオ! 空を飛ぶ使い魔の翼を射抜いて飛行能力を奪い、反撃の糸口を作った。入団して半年にもかかわらず、よく立派に戦ってくれた!」
一瞬、広場全体が無音になりました。
え、誰。知らない。
そんな動揺が広がっています。
私もまた、驚きのあまり一瞬声を失くしてしまいました。
しかし、普段から妄想で鍛えていた結果でしょう。何をすればよいのか瞬時に理解し、反射的に動いていました。
さぁ、皆様、彼が私の推し騎士様です! とってもカッコイイでしょう!?
「おめでとう、ネロくん!」
誰よりも先んじて、紫色の光球を上空に派手に打ち上げました。
壇上の後ろから、トップの騎士様たちに前面に引きずり出されたネロくんが、その光を見て目を見開きます。
そして、私を見つけてくれました。
遠く離れていたけど、ほんの刹那、瞳が交錯して……。
彼が小さく手を振り、私に向かってにっこりと微笑んでくれました。
まさかの個レス! こんな満面の笑顔見たことありません!
幸せのあまり、私はその場に崩れ落ちてしまったのでした。
☆
「本当にありがとう。俺が戦えたのは、全部メリィちゃんのおかげだ。あの紫の光も、嬉しかったよ」
使い魔の討伐記念感謝祭で、俺は改めてメリィちゃんに礼を述べた。
今日は魔力譲渡の目的ではなく、本当にただの握手会だ。ファンに感謝を伝えるために催されている。つまり列に並んでくれるのは、純粋に俺に会いに来てくれる人だけ。
「いえ、そんな、ネロくんのお力になれるのは、私にとっても最高に幸せなことですからっ。とてもご立派で……本当におめでとうございます」
メリィちゃんは後ろを気にしながら、ぎこちなく笑った。
いつもだったら誰も待っていないのに、今日は女の子たちが並んでいる。
功績授与式で無名だった俺がいきなり引き立てられたから、興味を持ってくれたのだろう。魔力譲渡のない感謝祭だと一人ではなく、たくさんの騎士に会いに行く子もいると聞くし、それほど驚くことではなかった。箱推しというらしい。
「これは喜ばしいこと、素晴らしいことなんですから。古参の害悪だと思われないように、気を付けます。大丈夫ですよ、あはは……」
しかし、どうやらメリィちゃんは他の女の子が気になるらしい。きっと、あの子たちはただの興味本位で立ち寄っただけで、本気で俺を推すつもりはない。
活躍すれば喜んでくれると思ったけど、そんなに単純な心理ではないらしい。俺は、なんだか嫉妬してもらっているようで、嬉しいけど……。
いや、ダメだ。俺はメリィちゃんに喜んでほしいんだ。悲しい思いをさせるために頑張ったわけじゃない。
いろいろ考えてきたはずなのに、頭が真っ白になってしまった。
どうすれば伝わるだろう。何を言えば、笑ってくれるのか。
「あと三十秒でーす」
残念なことに、今日は一人当たりの対応時間が一分しかなかった。スタッフさんが無慈悲に時をカウントしていく。
こうしてまごついている間にも、どんどん時間が無くなってしまう。
とりあえず手を差し出すと、メリィちゃんはそっと握り返してくれた。いっそのこと、俺も彼女に魔力譲渡したい。そうすれば、どれだけ想いが強いのか分かってもらえるのに。
「あ、あの、メリィちゃん。俺は……」
きみさえいればそれでいいんだよ。他のファンは要らない。
焦った俺は、思わず告白みたいなことを言いそうになった。
それはいけない。即行で騎士をクビになる。
「俺は、えっと」
「?」
「……二年契約なんだ」
絞り出した言葉に、俺自身ががっかりした。
二年間騎士を続ければ、母親の手術費用を賄えるから、そういう契約をした。
「知ってます」
何で当然のように知ってるんだろう。そう思いながらも、時間がないのでそのまま伝える。
「あと一年半は、契約に従って騎士を続ける。功績を増やして、最後まで立派に務めを果たすよ」
たくさん活躍した騎士団員は、女王陛下から一代限りの貴族位を授けてもらえる。そのために、これからも積極的に使い魔の討伐任務に立候補しようと思う。
メリィちゃんのことは、ほとんど何も知らない。もしかしたら本当に貴族のお嬢様かもしれなかった。見るからに裕福そうだし、見た目も魔力量も貴族のそれだ。
彼女がお嬢様なら、平民のままでは釣り合いが取れない。だから、今まで以上に騎士の任務を頑張ると決めたのだ。
「それで、俺が騎士を辞めた後のことを、考えておいてほしくて……」
あと一年半、メリィちゃんが変わらず俺を推してくれるのなら。
残りの一生、今度は俺に尽くさせてほしい。絶対にきみにふさわしい男になるから。
こんなの、愛の告白どころか求婚だ。
そんな恥ずかしい言葉を、俺が口にできるはずもなく……。
「っ! 分かりました! ネロくんに会えるのはあと一年半ということですね。これからも全力で推させていただきます! 後悔が残らないように!」
「え、違――」
そこで時間切れとなった。想いが伝わった様子はない。
少し自信を無くしてしまう。
もしかしたらメリィちゃんは、騎士としての俺を強く推してくれているだけで、特別な感情は持ってないのだろうか。
いや、渡される魔力量と重い言葉の数々を思い出せ。そんなはずない。きっと全く期待させられない俺が悪いのだ。
他の先輩騎士たちを見習って、もっと甘い言葉を囁けるようにならないと……。
俺が肩を落としていると、最後にメリィちゃんが手に力を込めた。
「これからもずっとずっと大好きですよ、ネロくん。生まれてきてくれてありがとうございます。退団するまで絶対大きな怪我はしないで下さいね!」
逆に火が点いたのか、メリィちゃんはピカピカの笑顔で去っていった。
胸がきゅうと痛む。
メリィちゃんが男だったら、アステル団長と人気を二分するくらいの騎士になっていたかもしれない。一瞬で魅了されてしまった。
「…………」
どうか待っていて、メリィちゃん。
いつか格好良く求婚できるように、俺はこれからも精一杯頑張るよ。
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2023/7/29 連載版の投稿を開始いたしました。よろしくお願いいたします。
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