105
流しそうめん大会は続く・・・。
-105 言っちゃった・・・。-
孤児院の子供の一人が昼呑みしているメイスや光に気付き職員のプリーストに状況を大声で報告した、よくある「チクり」だ。
子供「せーんせーい、メイス先生とお姉ちゃんたちがお酒呑んでるー。」
プリースト「えっ?そんな訳・・・、アーク・ビショップ!!子供達の前で昼間から何しているんですか!!」
メイス「良いじゃないの、明太子と明太マヨ胡瓜があるんだから呑まない訳には行かないじゃない。」
プリースト「光さんも好美さんまで・・・、仕方ないな。」
ほぼ諦めムードのプリーストは子供達の世話役に戻った、デルアと守が交互に麺を入れているので黄色と白の2種類で飽きが来ない様になっていた。
気を利かせたデルアが「暴徒の鱗」門外不出の醬油ダレを使ったつけ麺のつゆも持って来ていたから味変に困らない、ただ好美やイャンダにバレたらまずいのではなかろうか。
子供「おじさーん、これ冷え冷えで美味しいね。」
デルア「おじ・・・、まぁいいか。気に入ったか?」
実年齢287歳(人間で言う28歳)の副店長にはまだ「おじさん」には抵抗があるらしい、顔をヒクヒクさせながらも子供が相手なので許容した。
流石に辛くしてしまうと子供達が食べれないだろうと、店で出す時と違って辣油の代わりにごま油を加えておいたのが功を奏したのか、思った以上にデルアのつゆは好評だった。
好美はスマホの振動に気付いたので出てみた、デルアが一向に帰って来ないので何か知らないかとの連絡だった。客足が増えだして店が回らなくなっている、それは流石にまずい。
楽しそうにしているので本人には悪いが店に『転送』し、仕事に戻らせた。後は守が何とかしてくれるだろうと期待し、好美は目の前の酒と肴に戻ろうとした。
好美「あの・・・、開けたばかりの缶ビールが既に空になっているんですが。」
メイス「はい?何の事ですか?」
犯人はメイスだったらしい、一瞬にして好美の缶ビールを空にした本人は胡瓜片手に知らないふりをしている。
よく見てみれば明太子も無くなっている、好美はお楽しみが無くなり泣きかけていた。
まずいと思った光が改めて『作成』した明太子と缶ビールを差し出した、好美はぐずりながらも受け取った缶ビールを一気に煽った。
光「こんな事で泣かないの、あんた一応マンションの地主なんだから。」
守「え?好美は拉麵屋のオーナーだろ?」
光「何言ってんの、この子はこの世界で買ったビルの1階部分にある店舗のオーナーだけど。」
好美「光さん・・・、内緒にしていたんです・・・。」
まだこの世界での住まいを見せていないのでそれまではただ、王宮で見回りをする夜勤族で拉麵屋のオーナーをしているだけと伝えてあった。15階のビルの事は、流石にこの世界でただただ養豚に励んでいた守にはまだ刺激が強すぎる話だと抵抗していたのだ。
守「まさか・・・、あの凄い大きいビルの事か?」
好美「う・・・、うん・・・。」
街の中心部に聳え立つビルを思い出した守は目を白くし、その場に倒れてしまったが手に持っていた麺はギリギリで光が受け取ったので子供達の食事が無くなる事は防がれた。
子供達「お兄ちゃん、もう無いの?」
守「悪い悪い、すぐ行くから。」
腹を空かせた子供達の声で飛び起きた守は改めて麺を流し始めた。
守「それにしても俺だけ働かされている様な・・・、誰か代わってくれよ。」
好美達は酒に夢中になっているので守の言葉を無視した、それに怒った守は職員のプリーストに麺を預けて3人のテーブルへと向かった。
守「あんたらだけずるいじゃないか、もう・・・。俺も呑む!!」
守はまだ開いていない缶ビールを掴んで開けると一気飲みした、知らぬ間に肴として叉焼やチーズ鱈がテーブルに並んでいる。
ヤケ食いとヤケ酒で何とか気持ちを落ち着かせた守は改めて麺を流した、先程までと比べて朗らかな表情と共に。
守は何となく緊張していたらしい。