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夜勤族の妄想物語 4.異世界ほのぼの日記2~異世界でも夜勤になったので堂々と昼呑みします~  作者: 佐行 院


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98~99

全てケデールのお陰。


-98 大きく宣言-


 この日元々遅番勤務だったが、店主である狼男ライカンスロープが空気を読んで気を利かせた事により早上がりする事になった守を連れて自宅へと『瞬間移動』しようとした光は、寸前である重大な事を思い出した。

 好美を含めた3人を見送り店に戻ろうとした店主を光が引き止めた。


光「ケデールさん、すみません。」

ケデール「な・・・、何か他にありましたか?」

光「ヤンチさんに伝言をお願いしたいんです。」

ケデール「兄に・・・、ですか・・・別に構いませんが。」


 光の伝言とは先程ヤンチが板長を務める焼き肉屋で渚が高級焼肉を馬鹿食いし、高い酒を水の様にガバガバと吞み干して光が代金を立て替えた時の領収書の宛名を「上様」ではなくはっきりと濃く「赤江 渚 様」と記入しておいて欲しいと伝えて欲しいという物だった。


ケデール「光さんも大変ですね。分かりました、お伝えいたしましょう。」

光「すみません、お手を煩わせて。」

ケデール「いえいえ、光さんにはいつも御贔屓にして頂いてますので。その代わり2人についての面白そうな話、お願いしますね。」

光「もう、人が悪いんだから。」

ケデール「お互い様でしょ、では道中お気をつけて。」


 『瞬間移動』で飛んでいくので心配される程でもない、光は好美と守を連れて自宅へと向かった。冷蔵庫には既に肴や酒がパンパンに詰め込まれている、魔学校から帰宅したガルナスに「ご飯のお供」してそのまま出せば夕飯の準備も必要なさそうだ。

 ただ、本人が不服を申し立て出したら困るので白飯は多めに炊いておくことにした。

 白飯の準備を終えた光は冷蔵庫から缶ビールを取り出して2人に配ると、乾杯を促したのだが守はまだ勤務中だと断りだした。

 一応の連絡用として光がケデールにこっそり『付与』しておいた『念話』で確認を取ると、有休扱いにしたから気にしない様にと笑っていた。

 正直言うと、元々魔法使い以外使えないはずの『念話』をあらゆる種族が使える様になったような気がしてならない、この世界でかなり強力な魔力を持つ光達転生者の影響はかなり大きいらしい。

 一先ず慣れない様子でケデールに改めて今日のシフトを確認する為に守が『念話』を飛ばした、どんだけ真面目なんだ。


守(念話)「店長・・・、俺今日遅番ですよね。今シフト表見ながら言ってますもん。」

ケデール(念話)「え?お前今日有休だろ、ゆっくりしてこいって。」


 2人の『念話』を横から盗み聞きした光は、「遅(遅番)」と書かれた該当部分を「有(有給休暇)」のマークにこっそり『変化』させた。


守(念話)「あ・・・、あれ?」

ケデール(念話)「ほらね、だからゆっくりしてこいって。(守に聞こえない様に)光さん、恐れ入ります。」

光(念話)「(守に聞こえない様に)今度またまけて下さいね。」

ケデール(念話)「仕方ないですね・・・。」


 『念話』が切れると光達は改めて乾杯する事にした、先程からずっと我慢していた好美は待ってましたと言わんばかりに酒を流し込んでいった。


光「まさか守君とこうやって呑む時が来るとはね、嬉しいよ。さて聞こうじゃない、貴方達豚舎で何をやっていたのかな(まぁ、知ってるけどね)。」


 先程よりを戻したカップルはかなり照れている、あまり酒が進んでいないはずなのに顔が2人共赤い。


好美(小声)「あの・・・、えっと・・・。」

守(小声)「キス・・・、してた・・・。」


 守は手に持っていた缶ビールを一気に煽り大声で叫んだ。


守(大声)「好美と・・・、キスしてたんだよ!!俺らよりを戻したの!!」


 すると玄関の方向からドスドスと激しい足音が近づいて来た、どうやら魔学校から帰って来た娘のガルナスが大声に反応したらしい。ハーフ・ヴァンパイアは興奮した様子でいる、どうやら種族は違えど女子高生は恋愛話に目が無いらしい。


ガルナス「何なに、今「キス」って聞こえたけど!!」


挿絵(By みてみん)


-99 回想-


 光が娘であるハーフ・ヴァンパイアにその場から離れる様に促したが、目の前の恋愛話にすっかり食らいついてしまっているガルナスはその場にへばり付く様に立っていた。


光「仕方ないね、まぁ、良いかな。さてと守君、酒の肴にご両人の馴れ初め話をお聞かせ願おうかね。」

守「光姉ちゃん・・・、そんな事別に良いだろ。」

光「おっと・・・、私に逆らうんだ。」

守「げっ!!」


 椅子から守を無理矢理引きずりおろした光は、昔遊んだ頃の様にまた「プロレスごっこ」を始めた。守は相変わらずまんざらでもない様子だ。目の前でよりを戻したばかりの恋人が嫉妬している。


好美「何それ、守どういう事?!」

光「好美ちゃんもどうだい、私が許す。」


 すると好美も加わってより強力なプロレス技が掛かりだした、流石の守でもニヤついている場合では無いらしい。


守「ギブギブギブ!!分かったよ!!」

光「「分かったよ」?何それ、「分かりました」でしょ!!」

守「分かりました、分かりました。言います、話します!!」

光「もう・・・、最初からそう言いなさいよ。」


 守は新しく開けた缶ビールを煽るとそれを片手にゆっくりと語りだした。

時代は守と好美がまだ学生だった頃に遡る、2人は同じ大学だったが学科どころか学部が違っていた。ただ週に1度、金曜日に学部学科関係なく授業を受ける「共通教養」の授業があったので様々な学生が1つの教室に相まみえる事があった。

 当時全くもって面識の無く、異なる都道府県出身だった2人。各々女の子同士と野郎だらけの友人グループに所属しのほほんとした毎日を受けていたのだが偶然ながら同じゼミを受けていた、教室の通路は階段状になっており守は好美の数段下に座っていた。各々の友人グループ同士で集まっていた2人は両人共に端の席に座っていた。

 大学に入学する以前からつなぎ姿の好美はドジっ子であった、この日もドジを踏んだ好美は手を滑らせボールペンをデニム姿の守の座る席の真横に落としてしまった。

 それだけだったら別に良かった、ただその時守も偶然手を滑らせボールペンを落としてしまっていた。


挿絵(By みてみん)


別にこの事にも問題はなかった、ただ2人が落としたボールペンが同じ種類で知らぬ間に互いの筆記用具を誤って持って帰ってしまった事にあった。

2人がいつもと違うボールペンを持って帰ってしまった事が発覚したのは先ず守の自宅であった、双方のボールペンは見た目は全く同じだったが触り心地に妙な違和感があった上に守の物はインクが切れかけていた。

 自宅でゼミのレポートを書こうとしていた守が先に違和感に気付いた。


守(当時)「このボールペン、新しく買った覚え無いんだけど妙にスラスラ書けるな。」


 ラッキーと思った守は思った以上に効率よくレポートを書き上げた。

 ほぼ同刻、当時居酒屋でアルバイトをしていた好美は客からの注文を取ろうとした時に全く書けないボールペンに苦戦していた。


好美(当時)「あれ?壊れちゃったかな・・・。」


その日は店長にペンを借りて何とかやり過ごしたが、家に帰って今日の出来事を思い出した。これは後で分かった事なのだが守もほぼ同時に思い出したという。

 面識のない2人は勿論互いの連絡先を知らなかった。


2人(当時)「来週の金曜日に返すか・・・。」


 金曜日になり、ゼミの時間がやって来た。2人は誤って持ち帰ったボールペンを手に教室に入った、ちゃんと気付いて貰える様にと先週と同じデニム姿をした守とつなぎ姿の好美。


守(当時)「すみません、これやっぱり貴女のボールペンだったんですか?」

好美(当時)「やっぱりですか、私もごめんなさい。」


 その瞬間から何故か互いを意識する様になった2人は次の金曜日に電話番号を交換し、ドキドキしながら連絡を取り合っていた。

 連絡を取り合う内に2人はプライベートで会う事が増え、いつの間にか大学でも一緒に昼食を摂る中になっていた。暫くしてまた2人で遊んでいた日、2人は同時に。


2人(当時)「あなたが大好きです、僕(私)と付き合って下さい・・・。」


偶然が引き寄せた恋。

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