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神がハヤシライスのレシピを習う中。
-96 放置された酔っ払い-
パートのエルフ達やケデール、そして守の賄いを作る小さな厨房で今夜の夕飯を兼ねたハヤシライスの準備を始めた御厨。その隣で元アーク・ジェネラルの一言ひとことを必死にメモするエプロン姿の古龍がいる。その光景を見た光は少しほっこりとした気分になっていた、「一柱の神」であるトゥーチも一人の少女なんだと何となく微笑ましくなっていた。
一方その頃、好美は何か忘れているように思えた。そう言えば1人いない様な・・・。そう思っていた好美と光の所に肉屋の店主が近づいて来た、右手には電話の子機が。光が未だに家電を使う人がいるんだと感心していたその時。
ケデール「光さんすみません・・・、私の兄から電話なのですが。」
光「私にですか?もしもし?」
ヤンチ(電話)「もしもし、光さん良かった!!渚さんをうちの店に忘れていませんか?」
そう、3人は焼き肉屋に渚を置きっぱなしにして肉屋に来ていたのだ。ほったらかしにされた本人はやけくそになりランチタイムなのにも関わらず高級焼肉を肴に1人昼呑みしていた、ヤンチが言うにはかなり出来上がっているらしい。
ヤンチ(電話)「私自身は儲かるので良いのですが、お代は光さんから受け取る様にとの一点張りでして。それに本人帰る方法あるんですかね、かなり赤くなってますよ。」
「暴徒の鱗」の屋台は今日は1号車のみの営業なので別に問題ないのだが、本人自身かなり酔っていて『瞬間移動』も使えない位にへろへろになっており下手すれば焼き肉屋に迷惑を掛けかねない。
光「因みに今母の食事代っておいくらになっているんですか?」
ヤンチ(電話)「少々お待ちくださいね。今ですね、えっと・・・。」
光は恐る恐る聞いてみた、電話の向こうでヤンチが途轍もなく長い伝票を見ているのが音だけで伺えた。
ヤンチ(電話)「恐れ入ります、お1人で37万6200円ですね・・・。」
光「え?嘘でしょ?」
ヤンチが言うには店で一番高額な「黒毛和牛ロースの焼きしゃぶ」を1頭分食べ、水の様に生ビールをがぶがぶと呑んだ結果だそうだ。光やガルナスが大食いなのは渚譲りだったのだろうか。
光が1人ドン引きしていると、電話の向こうで遠くからとても嫌な言葉が。
渚(電話)「ヤンチさぁ~ん、焼きしゃぶ追加~。後ビールね。」
光「げっ!!」
これは早く迎えに行かなければとんでもない大騒動になってしまう、『瞬間移動』で迎えに行っても良いが好美は免許を持っていないので軽バンはどうしよう。
一先ず電話を切ってケデールに駐車場で車を預かって貰う様に一言。
光「すみません、すぐに戻りますので。」
ケデール「大変ですね、私の方は全然大丈夫ですよ。」
『瞬間移動』でヤンチの店に向かった光は、中央のテーブルで1人お楽しみの渚を発見した。積まれたジョッキと大皿の量が色々と物語っている。
光「お母さん、どんだけ呑んでんの!!」
ヤンチ「ははは・・・、どうやら私達が別の部屋で話していた頃からお楽しみだった様で。」
渚「光ぃ~、あんたも加わりなさ~い。」
光「馬鹿な事言ってないで帰るよ、それに何で私が代金払わなきゃいけないの。」
渚「良いじゃないか、あんた金持ちなんだからさ。」
光「何言ってんの、後で返しなさいよね。ヤンチさんおいくらですか?」
ヤンチは改めて伝票を取りに行った、数秒後・・・。
ヤンチ「えっとですね・・・、48万9800円ですね・・・。」
光「お母さん、あれから数秒の間に何食べたらそんなに高くなるの!!」
どうやら焼きしゃぶの間に牛タンやカルビ等も注文していて代金が跳ね上がったそうだ、酒もビールだけではなく焼酎やワインにまさかの古酒まで呑んでいる。
ワインに至っては「ロートシルト」をグラスで何杯も呑んでいるのでこの代金になっているのも納得がいった、光は渋々代金を立て替えた。
ヤンチ「ありがとうございます、何かお手伝いしましょうか。」
光「いや大丈夫です、家ですぐベッドに放り込みますので。失礼します。」
何処の世界でも酔っ払いはめんどくさい。




