92
重い口を開く「一柱の神」。
-92 来訪の理由-
深夜のビル前に降り立った「一柱の神」の一人で「三つ巴の三姉妹」の三女こと古龍のトゥーチ・ラルーは以前王宮で食べたカレーやハヤシライスの味に感銘を受けたらしく、自分でも作れない物かと天界で試行錯誤していたらしいのだがどうしてもあの時の味の秘訣を知りたいと降り立ったそうだ。
ハヤシライスを作ったニコフからは既に恩人である焼き肉屋の板長・御厨を紹介されていたのだが案内された焼き肉屋に行った折・・・。
光「御厨さん、いなかったんですか?」
トゥーチ「ああ、今はヤンチっていうライカンスロープが板長をやっているらしいんだが本人に居場所を聞いたら知らないって言うんだ。」
好美「どうして店を出たとかは聞かなかったんですか?」
トゥーチ「店の奴には「新しいタレを考案するヒントを探しに行く」とだけ言って店を去ったそうなんだ、だから全く見当がつかないそうでな。」
女将には会わなかったのかと聞いてみたのだが、奥でずっと電話していたらしいので全く顔を合わさなかったと言う。
一先ず昼頃に店に行ってみようと提案した光、それに対し好美はこの世界に焼き肉屋がある事を知らなかったので少しドキドキしていた。
光「好美ちゃん、別に食べに行くんじゃないからね。」
好美「な、何を言っているんですか?店の人にお話を聞きに行くんですよ・・・、ね?」
昼間から焼肉でビールも悪くないと思っていた事を光に見透かされた好美、焦りの表情を見せながらもなんとか誤魔化そうとしていた。
トゥーチ「すまねぇが、俺はこの後用事があるんだ。また来ようと思うし、こっちから何かしらの方法で連絡するから一先ず頼んで良いか?」
好美「分かりました、でもどうしてあの味に拘っているんですか?」
好美の質問を聞いた古龍は少し俯きながら口を開いた。
トゥーチ「実はよ、俺天界では一応まだ学生なんだ。深夜働くクォーツの姉御やセリーの姉御からの仕送りの世話になってばかりでさ、せめて2人の為に料理でも作れないかなと思ったんだよ。好美ちゃんも食ってた時の2人の表情見ただろ、俺もあんな料理が作りたくてヒントを得ようと今回降りて来たんだよ。」
話を聞くにトゥーチの性格や口調はただの乱暴者が故ではなく義理と人情を大切にしているからという事が読み取れた、江戸っ子に似たようなところか。
光「カレーの方はどうしますか?一応私がいつも作っているんですけど。」
トゥーチ「あん・・・、いや貴女でしたか、本当に美味しかったです。あの、差し支えなければお名前を頂戴させて頂けませんか?」
美味たるカレーへの敬意だろうか、それともそのカレーを作成した光への敬意だろうか、目の前の神の口調が急に丁寧になった。
光「光です、ダルラン光。」
トゥーチ「光さんですか、宜しければ弟子にして下さい!!」
光「止めて下さいよ、貴女神様なんですから!!」
トゥーチ「せめてご教授頂けたらと・・・。」
すると奥の調理場から聞き覚えのある、しかしこの時間帯に聞くはずの無かった声が。
女性「良いじゃないか、教えてやんなよ。あたしだって知らないんだから。」
トゥーチ「あんた、光さんの何なんだよ!!」
光「母の渚・・・、です・・・。」
渚「あんた失礼しちゃうね、自分の事神様だとでも言うのかい。」
光「本物の神様・・・です・・・。」
光の言葉を聞いた渚は夢を見ているのだろうと頬を抓りだした、痛みを感じたので現実だと知った瞬間白目になりその場に倒れ込んだ。
光「お母さん、もう大袈裟なんだから。早く起きて。」
渚「ごめんなさいね、本物の神様そのものを初めて見たから驚いちゃって。思ったよりお若い方なんだね。」
トゥーチ「こう見えて今、2136歳なんだが・・・。」
学生の三女が2136歳という事は長女や次女はどれ位長く生きているのだろうか、想像しただけでも震えてしまう3人であった。
因みに長女トゥーチ2795歳、次女セリー2390歳。




