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サプライズパーティーを楽しむ人魚
-87 一家からの贈り物-
宴の主人公は大好物の中華料理を肴にビールをどんどん吞んでいた、乾杯してから数分した後にお祝いに参加しようと元々その場にいた渚以外のダルラン家のメンバーが大きな皿を持ってやって来た。
好美「光さん、いらっしゃい。その大きな皿は何ですか?」
光「実はパーティーにぴったりな中華料理を一応手配してきたんだけどね、やっぱり焼きたてが良いかなと思って敢えて焼く前の物を持って来たのよ。オーブンって借りても良い?」
好美は調理場にある業務用のオーブンへと案内した、まだ焼く前のその料理の姿を見て驚きを隠せずにいる。
蓋を開けた中には・・・、土の塊が。
好美「あの・・・、おままごとでもするんですか?」
光「何言ってんの、これが極上の料理になるんじゃない。」
好美「?」
未だに中身が想像できない好美は少し嫌がっていたが、光の事は信用しているので言われた通りにオーブンへと入れた。
次に油を中華鍋で熱して潰した米を揚げていく、その横で中華スープで作ったうま煮に片栗粉を加えていく。
瞬く間に餡が出来ていくと出来立てのおこげと別の皿に入れて提供し始めた、サクサクのおこげと餡がピッタリで美味しい料理を今日の主役の下に。
ピューア「餡掛けおこげ、丁度食べたかったんです。紹興酒があれば良かったんですが。」
好美「言うと思った、用意しているよ。」
普段この店には紹興酒を置いていなかったのだが、今日は特別に用意した。
これは好美から中華料理が好きなピューアへの誕生日プレゼントであった、しかもただの紹興酒ではない。
ピューア「これ、「永昌源の古越龍山陳年10年」じゃない。高かったでしょ。」
好美「思ったより安かったし、丁度箱入りがあったからネットで買ったの。」
ピューア「凄く嬉しいよ、ありがとう。料理にも合うね。」
少し離れた所から様子を伺っていたナルリス・ダルランが恐る恐る近づいて来た、手にはビールの入った緑色の小瓶を持っていた。
ナルリス「おめでとう、ただ俺のプレゼント出し辛くなっちゃったね。」
ピューア「ありがとうございます、何を持って来て下さったんですか?」
美味しい本格中華にピッタリなあのビールをケースで取り寄せていた様だ。
ピューア「青島ビールじゃないですか、頂いても良いですか?」
ナルリス「勿論です、お嬢様。宜しければ、私の娘からお酌をさせて頂きます。ガルナス、お願いします。」
ガルナス「はーい。」
父からグラスを受け取ったハーフ・ヴァンパイアがゆっくりと綺麗な泡を出しながら注いでいった、ナルリスの店でソムリエを兼任するサブシェフ・ロリュー指導の下で練習したのだろうか。
ガルナス「お待たせしました、ごゆっくりどうぞ!!」
ピューア「ありがとう、頂きます。」
主役の人魚が注ぎたてのビールを楽しんでいると、ガルナスが綺麗に包まれたプレゼントを手渡した。中には酒にピッタリなあの商品が数種類。
ピューア「チー鱈の詰め合わせだ、ありがとう!!」
ガルナス「お家で呑む時に良かったら。」
ピューア「いや、今開ける!!」
ピューアは興奮しながら包みを開けて2~3本口に入れた、そこに一気にビールを流し込む。人魚は親子からのプレゼントを存分に楽しんでいた、そこに調理場から「あの料理」が運び込まれる。
目の前に焼けた土の塊を目の前に置かれた主役は、光から何故か金槌を受け取った。未だに訳が分からなそうな表情をしているピューアに光が声を掛けた。
光「それで塊を割ってみて、美味しい物が待っているよ。」
「美味しい物」とは・・・。