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86

主人公は未だ呆然としていた。


-86 貸切の宴-


 好美の『瞬間移動』で店舗部分へと移動してから3分程経過したが今日の主人公は未だに状況を把握しきれずにいた、落ち着いて人化したのはいいものの店が見慣れない状態に変わっているので少しの焦りをも隠しきれていない。


ピューア「あ・・・、あの・・・、これ・・・。これは夢なのかな・・・。」


 寝ぼけている事も手伝い、ピューアはまだまだ夢の中だと勘違いしている。普段はシフトの関係で顔を合わせる事の無いメンバーまで集まっているので訳が分からなくなっていた。

 そろそろ本人に今いる場所が夢の世界ではなく現実世界である事を認識させてあげる必要があるようだと皆が空気を読むと、一斉にクラッカーの紐を手に取った。オーナーの好美が代表して音頭を取る。


好美「せーの・・・。」


 皆が紐を引くと想像以上に大きな爆発音と同時に紙紐が飛び出した。


全員「誕生日おめでとう、チェルドナイトマネージャー!!」


 貸切にしているが故に皆が顔見知りで心から主役の人魚をお祝いした、お祝いと優しさの気持ちの籠った拍手がそこら中から鳴り響いた。

 その拍手喝采のお陰でやっとピューアは目を覚ました、そして目の前のメンバー全員が自分の為に集まってくれた事に心から感謝していた。


ピューア「あ・・・、ありがとうございます。皆さんにどうお礼を言ったらいいのか。」

イャンダ「おいおい、礼は俺達にじゃなくて言い出しっぺに言いな。」

好美「本当、本人が内緒にしろって言うからずっと隠すの大変だったのよ。」


 ピューアが辺りを見回すと目線の先で妹が大きな花束を持って待ち構えていた、その後ろには決して大きいとも立派とも言えないが苦労して作ったと思われる誕生日ケーキが用意されていた。具材としてピューアが好きなフルーツが沢山飾りつけされている。しかし好美は少し違和感を覚えていた。確か「ロールケーキ」と言っていたはずだが、目の前に鎮座しているのはどう見ても「ホールケーキ」だ。聞き間違いだったのだろうか、でも気にする事も無いかとそのままにしておいた。

 好美の心を読み取ったのか、イャンダが小声で説明した。


イャンダ「元々横長に焼けていたケーキを切り分けて、ピューアちゃんが大好きなフルーツを沢山盛れる様に重ねたんだよ。」

好美「ふふ・・・、悪くないじゃない。」


 その瞬間、店舗全体の電灯が消えて皆が驚いていた。停電だろうか、と思ったらケーキの蝋燭に向かって小さな火の玉が数個。どうやら闇の魔術を使った副店長・デルアの演出らしい。蝋燭の火の光で辺りが温かく照らされると、そこにいた皆がケーキに注目した。


メラ「お姉ちゃん、吹き消して。でないと用意した折角の料理が冷めちゃう。」


 実際その心配は無かった、デルアが先程と同様の魔術を利用して金属で出来た容器の下に火をつけて保温出来る様にしていたが皆待ちきれなくなっていたので黙っておいた。


ピューア「う・・・、うん・・・。」


 ゆっくりと息を吸って蝋燭に優しく吹きかけた、普段の生活には支障は無いのだが人魚が故に吐く息が強過ぎると一緒に水を吐いてしまい折角のケーキを台無しにしてしまいそうなのだ。

 心配は無用だった、無事に蝋燭の火が消えて店の電灯が点灯していく。


ピューア「あ・・・、ありがとうございます。こんなの生まれて初めてです、この国とこのお店とこのマンションに来れて本当に良かった。」

好美「まだ呑んでないのに大袈裟じゃないの、ほら。」


 好美からビールで満たされた大ジョッキを受け取ると一気に煽った、店の営業でも出さない大きさのジョッキなので特別感がある。


挿絵(By みてみん)


ピューア「このケーキ、あんたが作ったの?フルーツたっぷりで美味しいじゃない。」

メラ「これね、イャンダさんに教えて貰ったの。ほらお姉ちゃん、中華も沢山あるから食べよう。」

ピューア「凄い豪勢じゃない、よし!!呑むぞ!!食べるぞ!!」


 楽しい宴はこれからが本番だ。


ズラリと並んだ料理へ!!

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