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冷静沈着にニコフが作っていた料理とは。
-81 代替え-
ニコフが調理を行っている寸胴鍋を良い匂いに誘われた好美がこっそりと覗くと、食欲を湧かせる匂いの正体はバターや小麦粉で炒めていた牛肉や玉ねぎ、そして薄めに刻んだマッシュルームであった。
暫く炒めていく内に玉ねぎがしんなりしていき、牛肉に火が通る。寸胴鍋に新鮮なトマトから手作りした特製のトマトピューレ等を入れて煮込んでいった。
好美と同様に良い匂いに誘われた王女が将軍長にやたら丁寧な口調で尋ねた。
ペプリ「何をされていますの?」
ニコフ「王女様、突然の勝手な行動お許しください。空腹でどうしても食べたくなっちゃいまして。」
ペプリ「それは構いませんが、何を作っておられるのかしら?」
エリュー「随分と優しい匂いですね。」
ニコフ「早くに両親を亡くした私の為に、親父替わりだったかつての将軍長が作って下さった思い出の料理です。」
太陽の光をたっぷり浴びて綺麗な赤色に育った新鮮なトマトが沢山採れたとダルラン光から聞き、妻である鳥獣人のキェルダと家庭菜園に向かった際に「是非に」とお裾分けを沢山貰っていた事を思い出したのだ。
本当は湯むきサラダや冷やしトマトにする予定だったのだが、「王様や王女様の為なら是非」と城に持って来ていた。
ペプリ「かつての将軍長ってもしかして御厨さんの事ですか?」
ニコフ「そうです、白飯を沢山食べたいとリクエストした際に初めて教えてくれた料理です。先程とは違って甘い物になるので、少し違和感がございますが宜しければ王女様もいかがでしょうか。」
厨房内に甘い匂いが一気に広がり、三つ巴の三姉妹や好美の腹の虫が鳴る音が響き渡った。匂いの正体は有名な洋食が日本で訛った事や、牛肉や野菜のごった煮を作った大手書店の創業者の名前など由来が数説あるあの有名な料理。
好美「もしかしてハヤシライスですか?」
ニコフ「好美さんはご存知でしたか、先程とは違って全くスパイシーではないのですが良かったら味見をお願いできませんでしょうか。」
ペプリ「あの・・・、私はほったらかしですか?」
ペプリだけではなく、先程までお供え物のカレーを腹いっぱい食べていたはずの古龍達までもが涎を垂らしながら寸胴鍋に釘付けになっていた。
クォーツ「おい・・・、俺達も食って良いか?」
セリー「何を仰っていますの?お姉様は毎週こちらでカレーを食べているのでしょう?少しは自重して下さいませ。」
トゥーチ「そう言うセリー姉ちゃんこそ、さり気に今日一番カレー食ってたから自重しやがれ!!」
流石は古龍と言うべきなのだろうか、古龍達の胃袋は底知れない。それどころか甘い匂いにより再び空腹になってしまった様だ。
ただ、唯一上級古龍使い(エンシェント・ドラゴンマスター)の視線を感じていた長女がびくびくしながらペプリの方を向いた。
クォーツ「ペプリ・・・、将軍長さんの後にお前も一緒に食うか?」
トゥーチ「お・・・、おい姉御!!」
長女は三女をきつめに睨みつけた、先程ペプリからの重圧を喰らった事を思い出したトゥーチは1歩下がる様に王女を誘った。
トゥーチ「分かったよ・・・、ペプリだったか?良かったら俺達と一緒に食わねぇか?やっぱりどんな物も大人数で食う方が美味いだろ?」
古龍は恐る恐るといった様子で深い様で普通の事を言った、ただペプリはその言葉が本当に嬉しかったらしくただの「妹」に戻っている。
ペプリ「うん、お姉ちゃんとこの美味しそうな「ハヤシライス」ってやつ食べる!!ニコフさん、ご飯たっくさんよそって!!」
ニコフ「よ、この様な時間に宜しいのですか?」
ペプリ「良いんです、お父様に見つかる前に鍋を空にしとかなくちゃ!!」
クォーツ「お、おい・・・。独り占めはしないでおくれよ?」
セリー「早くよそって欲しいですわ、でないと無くなっちゃう。」
そんな中、深夜の食事会を覗き込む女性達の姿が・・・。
女性達の正体とは・・・




