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夜勤族の妄想物語 4.異世界ほのぼの日記2~異世界でも夜勤になったので堂々と昼呑みします~  作者: 佐行 院


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72~73

どうして吸血鬼は顔をニヤつかせていたのか。


-72 シェフの悪戯心-


 弁当の内容を考えながら相も変わらず顔をニヤつかせていたナルリスにはとある思惑があった、1人楽しそうにしているオーナーシェフは悪戯好きで弁当を食べた娘達が驚く顔を想像すると最高の気分だった。

 早速魔力保冷庫を確認したが、必要とされる食材が見当たらなかったのでとある所に連絡して夕方に取りに行く事にした。

 因みに悪戯の為に弁当箱もこちらで用意すると伝えてある。

 夕方、ナルリスは連絡した場所に食材を買いに行き、やっとのこさで弁当作りへの前日準備を終えた。


ナルリス「おっと・・・、弁当箱を忘れていたぜ。」


 今回は広めの2段重ねにする様だ、サンドイッチを入れる時点で深めの弁当箱になるはずなのだが持って行けるのだろうか、ただそんな事など吸血鬼は全然気にしていなかった。

 翌朝、早速昨日の夕方手に入れた食材をある調味料で30分程漬け置きしてメラが大好きと言ったコロッケを揚げ始めた。

 ゆっくりと丁寧に揚げ、外はサクサクで中はしっとりに仕上げている。そして耳を落とした食パンで挟んでいたのだが・・・。


ナルリス「ありゃ、あれだあれだ。」


 おっちょこちょいの吸血鬼は昨日仕掛けておいた辛子マヨネーズと特製のタルタルソースを塗っておくのを忘れていた、渡していないからまだセーフ。

 隠し味を塗りたくったパンでコロッケを挟むと1口大に切り、弁当箱に入れる。

 メインディッシュに入る、前日に仕掛けておいた鶏肉100%の捏ねだん・・、いやハンバーグを焼いてシンプルに塩胡椒で仕上げる。

 焼けた鶏ハンバーグを薄焼き卵で包み、通常以上にとろみをつけたデミグラスソースをかけた。これでメインディッシュは出来上がり・・・、のはずだった。

 一先ず付け合わせの用意に入る、赤いウインナーに切り込みを入れて油をひかずに炒める。足を開かせつつパリパリとした食感を残し、見た目でも食感でも楽しめる様に工夫していた。

彩りと栄養バランスを考え小さく切ったブロッコリーも添える、細く絞ったマヨネーズをかけておけば取り敢えず味付けは大丈夫だろう。

ここまでの1段目のみで十分な仕上がりと思われるが、ナルリスにとったらまだ不十分だった。本人にとったらこれがメインディッシュでメインの工程・・・。


ナルリス「うーん・・・、それにしても守君には無理言っちゃったな。」


 実は昨日、食材を手に入れる為連絡したのはライカンスロープのケデールが店主を務める肉屋であった。そこで養豚を担当する守の作ったロース肉が必要だった。

 漬け置きしておいたその肉を油を敷いたフライパンに乗せて火をつける、コールドスタートにする事により柔らかく仕上がるのだ。

 十分に火を通した豚肉を、悪戯用に用意した2段目に入れていく。サンドイッチでパンを入れているが念の為に白飯を一緒に詰めておかないと、多分・・・。

 さて、これで出来上がりなので後ほど2人に渡したら大丈夫だと安心していた。


ナルリス「念の為の試食試食・・・。」


 悪戯用の豚肉の残りを焼いて1口、すると急激に白飯が欲しくなった。期待通りの仕上がりだった様で本人は満足している。


ナルリス「行ってらっしゃい、お土産宜しくね。」


 悪戯心たっぷりに仕上がった弁当を巾着袋に入れて女子高生達に渡す、思ったより大きかったらしかったので2人は喜び勇んで遠足へと向かった。


ガルナス「まだ温かいし凄いね・・・、何が入っているの?」

ナルリス「それは開けた時の楽しみだろう、ほら早く。」

メラ「あ・・・、ありがとうございます。嬉しい・・・。行って来ます!!」


 今回の遠足は一度魔学校に集合してからダンラルタ王国へと向かう事になっていた、ブロキント率いるゴブリン達が日々ミスリル鉱石の採掘に勤しむ炭鉱を見学した後に数年前に設立された遊園地にて自由時間を過ごす。そこで弁当を食べるという手筈になっている。

 空腹の2人は遊園地のベンチで早速ランチタイムにする事にした。


ガルナス「さて、食べよう。2段になってるね、何でだろ。」

メラ「取り敢えず早速開けてみよう。」


 1段目を見た2人は驚いた、サンドイッチとオムレツに付け合わせ2種類で見た目はガルナス専用の弁当に見えた。しかし驚くのはまだ早い・・・。


-73 悪戯味の弁当-


 各々の弁当にはメモ用紙が1枚同封されていた、どうやらお品書きの様だ。しかし料理の内容が詳しく書かれているか正直言って微妙なのだが。


「1段目-2人の「好き」を合わせてみました-」

 ・自家製ハンバーグのオムレツ

 ・お気に入りの詰まったコロッケサンド etc・・・

「2段目-お楽しみメニュー-」


 2段目に関しては料理名も書いていない、どういうつもりなのだろうか。「お楽しみ」と書いているのが正直怪しいのだが、ただその時ガルナスは父親が悪戯好きだった事をすっかり忘れてしまっていた。


メラ「取り敢えず食べてみよう。」

ガルナス「そ・・・、そうだね・・・。」


 デミグラスソースのかかった薄焼き卵を箸で割る、中から塩胡椒でシンプルに味付けされた鶏のハンバーグが出て来た。コリコリとした軟骨入りでやはり・・・。


メラ「これ・・・、捏ねだん・・・。」

ガルナス「珍しいハンバーグだね、店の新作かな。」


 しかし流石はレストランのオーナーシェフ、味は当然の様に美味い。

 次はメラが好きなコロッケが入った1口サンドイッチに手を延ばす。


メラ「ピリっとしてる、辛子マヨネーズかな。」

ガルナス「タルタスソースだ、家でも店でも人気のやつだよ!!」


 2種類の味を楽しめる良い悪戯に感動している女子高生達、付け合わせのタコさんウインナーとブロッコリーが2人を何となく安心させた。

 安心したのも束の間、2人は問題の「2段目」の蓋を開ける事にした。弁当屋でも人気の「あのおかず」と思われる1品とまさかの白飯が詰められていた。

 1段目にサンドイッチが入っているのに何故2段目に白飯が?しかし大食いの2人にはそんな事など気にしていなかった、寧ろ大歓迎と言った様子だ。

 しかし気になるのは横に添えられた「おかず」、「お楽しみメニュー」と言う割にはシンプル過ぎやしないだろうか。


メラ「これ・・・、豚の生姜焼きだよね。好きな事は好きだけど・・・。」


 確かに「豚の生姜焼き」は2人共大好きな上に、ナルリスの店でも日替わりランチのメニュー内での上位にランクインしていた。

 しかしハーフ・ヴァンパイアはたった今思い出した、自らの父親が悪戯好きだという事を。そう、この2段目に詰められているはただの「白飯と人気おかず」ではないのだ。

 これも今思い出した事なのだが、先程のサンドイッチに使われていた辛子マヨネーズは少し辛子が強めだった気がする、という事はこれもそれなりの覚悟で食べなければならない。

 その事に気付いていない人魚は何にも考える間もなく箸を延ばしていた。


メラ「美味しそうだね、頂きます!!」

ガルナス「待っ・・・。」


 ガルナスの静止も空しく、メラの口には例のおかずが入っていた。


メラ「か・・・、辛っ・・・!!ご飯欲しい!!」


 そう、2段目に敷き詰められていたのは豚の生姜焼きに見せかけた「ロース肉の豚キムチ」だったのだ。守から受け取った生姜焼き用の豚ロース肉をたっぷりのキムチの素で漬け込み、辣油と七味唐辛子で辛味を加えたこの弁当を食べるサプライズ好きの2人の為に考えた特製の料理だ。

 肉は5枚入っていたのだが・・・。


ガルナス「2枚でご飯が無くなっちゃった、どうしよう!!」

メラ「いや、実はご飯持って来たから大丈夫!!」


 2人は慌てながらメラが持参した大量の白飯を勧めた、ただ白飯だけ持って来てどうするつもりだったのだろうか。どうやら吸血鬼の悪戯が功を奏した様だ。


ガルナス「あたしら・・・、どんだけご飯食べてんの?」

メラ「遠足の目的がほぼ弁当になり始めてる・・・。」

ガルナス「いや、今から沢山遊べば大丈夫!!何とかなるって!!」


自由行動は残り2時間・・・。

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