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光は未だ何もしていなかった。
-67 審査員は未成年?!-
光は今頃思い出したのだが、自分は見てばかりで何も作っていなかった。しかし、決して焦ってはいなかった。家庭菜園に行けばヒントがあるはずだと早速走って向かった、ただ『瞬間移動』すればすぐなのに何故かそれすら忘れていた。
ルールは1品のはずだったが、光の脳内には2品ほど思いついていた。ただそれらを合体すれば何とかなりそうだ。
光は顔と衣服を汚しながら皆が大好きなあの土物野菜を掘り起こした、じゃが芋だ。裏庭に戻った光は早速掘って来た内の数個を蒸かして潰し、粗熱を取って刻んだ胡瓜や人参を加えてマヨネーズで和えて冷蔵庫で冷やす。光が作りたかったのはポテトサラダだ、しかし何故か釜でたっぷりの油を高温に熱している。じゃが芋を薄くスライスしてゆっくりと揚げていく。そう、何故かポテトチップスを作っている。
渚「あんただけ2品なんてズルじゃないのかい?」
光「突然ルールを追加したお母さんに言われたくないもんね。」
光はこういった会話を交わしながら揚がったばかりのポテチ数枚に塩味を付け、渚の口に突っ込んだ。揚げたてを突っ込まれた母親は熱さで顔を赤らめ、口をハフハフさせていた。
渚「もう、やってくれたね。でもこれだけでも美味しいじゃないか、これをどうするつもりだい?」
光「一度、冷ますの。」
揚げたてのポテチの粗熱を取ると手で潰し、バットに集めていく。
光「後でトッピングにすんの。」
渚「成程、食感のアクセントにかい?でも塩味が邪魔しちゃうじゃないか。」
光「こっちのポテチには塩味を付けていないの、マヨ味を邪魔しない様にね。」
パンを使ったクルトンにしても良いが、他の人と被るのはちょっと嫌だったのだ。
4人の料理が揃ったので、裏庭に置いたテーブルに並べて試食する事に。早速、缶ビールを開けて高らかに乾杯をした。
最初は、渚のサラダ。脂分の多いバラ肉を使ったのにも関わらずポン酢味のお陰でさっぱりと食べることが出来る、即席で作った渚の料理は結構好評だった様だ。
次は好美の自然薯料理、皆自然薯といえばとろろを思い浮かべるが今回は細切りにして出汁醤油や海苔で和えている。隠し味として山葵を入れていた為、ビールだけではなく日本酒にも合った。
ピューアの作った鯖味噌に移る、その美味さは言うまでもない。皆が知っていて大好きなあの味、隠し味の梅酒が深みを与えていた。勿論、熱でアルコールを飛ばしている。
最後は光のポテトサラダ、ブラックペッパーで味付けして直前にパリパリサクサクのポテチをかけたので思った以上に好評で美味い。
酒が進んだ4人は、正直勝負などどうでも良くなっていた。その時、光の旦那が経営するレストランの方向から若い声が・・・。
声「ただいま・・・、って昼間から何やってんの?」
光「あんた、学校じゃなかったの?」
声の正体は光の娘であるハーフ・ヴァンパイアのガルナス。
ガルナス「今日、午前中までで終わりって言ったじゃん。お昼まだ?お腹ペコペコなんだけど。」
その言葉を聞いて渚は思いついた。
渚「ガル、この4品でどれが美味いか食べ比べてみてくれない?」
何故そうなったかという理由を知りたくはないが、4人が作り過ぎたため料理は十分に残っていた。それに今帰って来たばかりの女子高生は誰が作ったかを知らないので先入観無しで味の審査が出来るはずだ、因みに審査員には酒の代わりに炊き立ての白飯を渡している。
ガルナスの姿を見て、ピューアが1つ思い出した事があった。
ピューア「ガルちゃん、メラも帰っているの?」
ガルナス「バスでもうすぐマンションに着くと思いますけど。」
渚から『付与』された『探知』と『瞬間移動』を使い、バスを降りたばかりの妹を連れて来た。
メラ「何?お姉ちゃん?」
ピューア「何って、お昼ご飯よ。」
酒好きとは別の視点での審査開始!!




