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好美はどうするのだろうか。
-65 渚の危機と作戦-
渚の悪戯により渾身の料理をネタばらししてしまった好美は、自然薯を持つ右手が何となく虚しく思えた。しかし、問題ない様子で予定通り作る事にした。折角の自然薯を無駄には出来ない。
好美がいじられている頃、光もピューアを連れて屋台へと『瞬間移動』していた。是非とも新鮮な生鮮食品を手に入れたいが故に、渚には何も言う事無く行ってしまったので渚は雑貨屋の店内で1人動揺していた。
渚「あれ?いつの間に?あたしもそっち行くよ。」
ただ、商品棚の陰から刺さる様な目線を感じた。店長のゲオルがずっと渚をロックオンしていたのだ。
ゲオル「渚さん、屋台でのお買い物は御代金をお支払いになってからお願い致しますね。」
よく見れば、4人分の買い物がカートにそのまま残っている。
渚「勿論ですよ、常識じゃないですか。それにしてもまんまとやられたね・・・。」
光は渚の先程の発言を忘れていなかった、そう「1人につき予算は2000円まで」というタチの悪すぎるジョーク。
因みに、雑貨屋での買い物は合計1987円。
光(念話)「この市場での買い物を2000円以内にすれば良いんだよね、お母さん。」
渚(念話)「あんた、これが狙いだったんだね・・・。これじゃ、市場で何も買えないじゃないか。」
ピューアのお陰と言っても良いのか、カートの中身は殆どが酒とチーズだった。強制的にだが、メニューは決まった様な物だ。ただただ、暑い時期に食べたくない物になりそうだが。
渚「ピューアちゃんにもまんまとやられたね、これじゃ「アレ」しか作れないじゃないか。」
しかし、1発逆転出来る方法があった。ただ、その為には確認すべき条件が1つ。光に今から聞く事が大丈夫なら確実に逆転できる。
渚はピューアと鯖を吟味している光に改めて念話を飛ばしてさり気なく確認した。
渚(念話)「そう言えば、場所を決めてなかったね。」
好美(念話)「いつも通りウチでやりますか、私は構いませんけど。」
渚(念話)「いやいや、それは申し訳ないよ。たまにはウチでも良いと思わないかい、ねぇ光?」
光(念話)「そうだね、家庭菜園の野菜を使えば予算オーバーする事ないし。」
娘の一言に勝利を確信した母は、顔を少しニヤつかせた。これで料理の幅が広がる、渚の狙いは「家庭菜園の野菜」を利用する事だった。
冗談で言った追加条件が自らを殺してしまう事になるとは思わなかったが、これで形勢逆転だ。
渚の思惑に誰も気づくことなく、その場の流れで光達の家での開催が決まった。
生鮮食品を買う事が出来なかった渚を含めた4人は、ダルラン家の裏庭へと移動した。地下の冷蔵庫に酒と要冷蔵のものを『転送』し、早速料理の準備へと入る事に。
ピューアが1人買って来た魚を捌いている中、他の3人(特に渚)は一目散に家庭菜園へと走って行った。
最初に家庭菜園へと入って行った時の渚の必死そうな表情を見た光は、やっと母親の企てに気付いたらしい。
光「お母さん、それが狙いだったね?」
渚「そうさね、ただもう遅いよ。」
渚は両手いっぱいにレタスやパプリカを持っていた、狙い通りの物が手に入ったので満面の笑みを浮かべている。
その上、冷蔵庫の余り物は予算の範囲外なので中に入っていたベーコンや豚バラ肉も使えそうだ。
渚は豚バラ肉1パックを手に取り、裏庭へと戻る。
釜の火にかけた鍋で湯を沸かし、肉を投入した。沸騰しない程度のお湯でゆっくりと火を通し、硬くならない内に氷水で冷やしてしめる。
冷蔵庫から今回はポン酢を『転送』してさっぱりとした味付けにした、これで先程買って来たチーズを活かせる。
チーズはコロコロとした小さなサイコロ状に切って上に乗せ、同時に購入したフランスパンでクルトンを作って乗せる。
渚の作戦勝ちだったらしく、どうやら危機を脱した様だ。
渚は天才肌だった。




