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日を跨いだ営業初日を終えた結果。
-60 また実感する世間の狭さ-
深夜営業の時間帯の内、24時~6時(閉店)までの間は〆としてラーメンやご飯系の物を求めるお客さんが増えて来ていたが、まだ呑み足りない人達や普段夜勤をしているがたまたま休日で呑みに来た人達がいたので居酒屋メニューも盛況となっていた。
好美は想像以上の客足で仕入れた材料が足りるかどうかを心配していたが、強めに発注をしていたおかげで何とか閉店までお店を持たせる事が出来た。
6時になり、店長が仕込みの為に店に来ると深夜営業初日を終えたメンバーはへとへとになりながら各階へと帰って行った。ただ1人、好美はその場に残っていた。
イャンダ「好美ちゃん、どうした?」
好美「ん?いや、大した事じゃないんだけどね。また、朝が来たな・・・って。」
イャンダ「何だそれ、好美ちゃんは王宮でも夜勤をしているからいつもだろ。」
好美「まぁね、でも今は一般の従業員じゃなくて一応オーナーじゃん?」
イャンダ「うん、そうだね。」
好美「それなりに大変なんだな・・・って。」
イャンダ「そうか、好美ちゃんなりに実感しているって事だな。さてと、俺は仕込みに入るよ。お疲れ様、ゆっくり休んでな。」
好美「うん、後宜しく。」
好美がその場を離れ、エレベーターで15階(自宅)へと向かった後に仕込みをしようと冷蔵庫や調味料の在庫を確認した元竜将軍が絶叫した事は言うまでもない。
1階の店舗部分で数台のトラックの運転手が慌てた様子で食材を運び込んでいた頃、初日を終えた好美は冷蔵庫から缶ビールを取り出して呑もうとしていた。しかし、冷蔵庫に肴になりそうなものが残っていなかったのでビールを戻し、『瞬間移動』で急いで1階へと向かった。正直、エレベーターの意味はあるのだろうか。
「コノミーマート」でレンジで温める用の鯖の塩焼きや、バターピーナッツを買い込んだ好美は早く呑みたかったので店舗部分から直接『瞬間移動』してしまった。
バイト①「80円の御返しです、ありがとうございました。」
好美「どうも、じゃあ!!」
バイト②「えっ?!」
目の前で人が『瞬間移動』して消えた場面を初めて見た数人の学生アルバイトが慌てていたのは言うまでもない、しかも本人たちはイェットが面接をして雇ったので今消えたその人が店のオーナーだった事もまだ知らなかったと言う。
好美がアルバイトの目の前で『瞬間移動』してから約2時間後、ダルラン家ではいつも通りの日常が始まろうとしていた。
光が出汁からお味噌汁を作る香りが漂う中、モーニングコーヒーを片手に渚が2階への階段を眺めながら声をかけた。
渚「光、おはよう。」
光「おはよう、お母さん。良いなぁ、あたしもコーヒー欲しいかも。」
渚「じゃあ、淹れるわ。そう言えば、ガルナスがまだ起きてきていないんじゃないのかい?」
光「またあの子は・・・。ガルナス、起きなさい!!またバスに遅れるよ!!」
眠い目を擦りながら制服姿のハーフ・ヴァンパイアがゆっくりと階段を降りて来た、全くもって焦ってはいない様子だ。
ガルナス「お母さんとおばあちゃん、おはよう。」
光「おはよう。何あんた、妙に落ち着いているじゃない。」
ガルナス「今日は友達とお姉さんの車で行く事になってんの、だから大丈夫。」
光「あら、それはお礼を言わなきゃね。でも、車で行くにしても間に合わないんじゃない?」
ガルナス「大丈夫大丈夫。あ、噂をすればだ。」
渚と光にとって聞き覚えのある排気音が響き渡った後、玄関のドア横のインターホンが鳴った。ドアを開けてみると、ガルナスと同じ制服を着た金髪の女の子が立っていた。その子の金髪は見覚えがある位に青みがかっている。
光「おはよう。えっと・・・、ガルナスのお友達かな?」
女の子「お、おはようございます。マーメイドのメラ・チェルドと申します。」
光「マーメイドのチェルドさんね・・・、ん?」
暫くすると、車の持ち主である姉がやって来た。やはり光と渚の記憶は正しかったらしい、玄関の前には紫のスルサーティーが止まっていた。そう、やはりピューアの車だ。
ピューア「何やってんの。あ、おはようございます。」
光「おはよう、やはり貴女だったのね。今日はガルナスを宜しくね。」
ピューア「分かりました。えっと、この後朝風呂に行こうと思うのですがいかがですか?」
光「行く行く、お母さんもどう?」
渚「ああ、今日はゆっくりしようと思っていたから丁度いいね。私も行かせてもらうよ。」
たまにはゆっくりする事も大事だ。




