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暑い時期が続く。
-58 メインは胡瓜?いや鶏?-
暑い日々が続く、光は家庭菜園へと好美を招待してとれたての胡瓜をお裾分けする事にしていた。
ビニールハウスの中は灼熱のイメージがありがちだが、下の方にビニールが途切れている部分があるのである程度の涼しさをも持ち合わせていた。
やはり暑い時期における胡瓜の定番として、氷でキンキンに冷やされた一本漬けをイメージしていた好美は縞々の胡瓜を想像していたのだが、光から振舞われたのはまさかのオイキムチだった。
光「胡瓜だけじゃないんだよね・・・。」
家庭菜園の持ち主はルンルンしながら蓋をあけると中身を木製の蓮華でゆっくりとかき混ぜだした。
キムチのつけ汁を全体に行き渡らせ、中の胡瓜が辛味に染められる。その時、好美は中に入っていた光拘りの食材を見つけ出した。
好美「メンマだ・・・。」
そう、辣油に浸かって瓶詰めとなったメンマだ。程よく食感と柔らかさが有名な穂先メンマが入っていた。
1口食べると両方の食材特有の食感が口内を楽しませ、広がった刺激的な辛さが何となく嬉しくて堪らない。ただ食べ進めていくと、その辛さはキムチの素だけでは無い事が分かった。
好美「メンマの辣油も入っているんですか?」
光「そうそう、これ一回漬けるのに瓶半分使っちゃうんだけど、いつの間にかもう半分も食べちゃうんだよね。」
好美「ご飯にもお酒にも両方ピッタリですから仕方ないですよ。」
好美の言葉を聞いた光は顔をニヤつかせていた、そして意味ありげに質問した。
光「欲しい?」
現在朝11:30、夜勤を終えて直接やって来た好美は色々と欲しくなっていたがその中でも1番ややっぱり「あれ」だ。
好美「欲しいです。」
光「やっぱり?私も欲しくなって来たから付き合ってくんない?」
好美は『転送』で地下にある冷蔵庫で冷やしている「秘蔵のあれ」を取り出した。畑では初めてだが関係なくなってしまっている。
光から受け取った「あれ」の缶を開けると一気に煽った。
好美「はぁー・・・、たまにはハイボールも良いですよね。」
光「あれ?ごめん、間違えてハイボール渡しちゃった。本当はビールの予定だったんだけど。」
好美「いえいえ、私ハイボールも大好きなので大丈夫ですよ。」
しかし、ビールと同じ勢いでハイボールを呑んでいたとは。好美の酒の強さはよっぽどと言えるらしい。光は好美のステータス画面を見て「『臓器強化』と『状態異常無効』のお陰だ」と思っていたのだが、ちゃんと表情は赤くなっている上に段々と酔いが回ってきているみたいなので勘違いかとスルーした。
しかし、折角のハイボールなので是非とも鶏の唐揚げと一緒に楽しみたい。2人が共通して感じていたので好美が屋内のキッチンで鶏もも肉に片栗粉や醤油ダレをまぶしていると、光が裏庭の釜で油を熱していた。
流石に油から目を離す訳にも行かないので、今回はテーブルと椅子や容器を『作成』していつでもパーティーが出来る様にした。
2人は正直待ちきれない様子だった、しかしそこを必死にこらえて。
光「よし!!」
好美「いや、まだです!!」
そう言うと、中心地にあるビルのオーナーは夜勤中の護身用として将軍長に教えて貰った火魔法で釜の火力を上げて油の温度を上げると揚がった唐揚げを再び投入した。
光「そっか・・・、2度揚げだ。」
好美「熱々をハイボールで流し込みたくないですか?」
光の答えは表情に出ていた、もう答えるまでも無い位に。
酒は皆を笑顔にしてくれる。