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好美はビール片手に悩んでいた。


-㊼ オーナーとしての葛藤と深夜の背徳-


 好美は餃子や唐揚げを肴に昼呑みしながら葛藤していた、このまま何もせずに甘えていて良いのだろうかと。

 別に働いていない訳ではない、仕事を含めて生活の時間帯が正反対なだけなのだ。しかし、第三者の目線からすると高層ビルの屋上で昼間から呑んでばかりのニートの様に見えなくもない。

 よく考えれば、一般的なコンビニのオーナーもいち従業員として店に出ている場面をよく見るので自分もそうするべきだとどうしても思ってしまう。

 今は2店舗が開店したばかりなので客足の多さを予測し、時間帯を限定して営業しているがいずれは深夜営業を始めようと考えている。というより深夜営業が目的でこのビルに「コノミーマート」も「暴徒の鱗」も開店したのだ、それは自分が夜勤の人間だからと言っても過言ではない。

本格的な営業を始める前に自分もある程度のスキルや経験を得ておこう、いや得ておくべきだ。

今夜と明日の夜は王宮での夜勤なので明後日にでもイャンダとイェットに相談してみよう、そう心に決めつつ缶ビールを呑み干した。

夜になり、王宮へと向かう。昨日の今日なので流石に守衛も好美を制止する事は無かった。ニコフと挨拶を交わしてロッカールームで制服に着替えて仕事開始、なのだがニコフは昨日と違って気楽そうな表情をしていた。


ニコフ「今日は昨日みたいにカ・・・、お供え物が必要という訳はないのでご安心ください。何も起こらない限りは1時間に1回の見回りだけですからゆっくりお過ごし頂いて結構です。」


 昨晩、ニコフに教えて貰った通りに各所のメーターの数値を書き込みながら見回りを行う。

 順調に終業時間へと近づき、現在深夜4:30。数時間前に持参した弁当を食べたのは良いのだが小腹が空いて来た。

 控室の隅にある小さな魔導コンロでお湯を沸かして、自らが持ち込んでいたカップ麺を食べる事にした。


好美「この世界にもやかんなんてあるんだ・・・。」


 よくある金色のあのやかん、ほら灼熱の夏日に野球部が直接水や麦茶を飲んでいる場面をイメージ出来るあの定番のやかん。


ニコフ「それ良いでしょう、光さんがくれたんですけどデザインが自分のお気に入りでしてね。」


 そうこうしている内にやかんから湯気が出て来る、その後「ピュー!!」と大きな音を立てて沸き上がりを知らせた。

 カップの蓋を半分だけ開けて慎重にお湯を注いでいくが、跳ねたお湯で火傷しそうになっていた。


好美「熱っ・・・。」

ニコフ「あらら、なりますよね。宜しければ、僕もご一緒させて頂いてもいいですか?」

好美「勿論、どうぞ。」


 ニコフは戸棚からストックしていたカップ麺を1つ取り、お湯を入れた。

 容器には3分と書かれていたが2人共2分程で蓋を開けた、どうやら共通して麺は硬めが好みらしい。


2人「いただきます。」


 この世界でも食への感謝の気持ちは存在していて、「いただきます」と「ご馳走様」の文化は転生者によってもたらされたらしい。

 深夜に食べる背徳感がより一層美味くさせたカップ麺は、2人にとってこれ以上にないご馳走だった。

 2人はずっと無言でご馳走に向かい、スープまで飲み干していた。


ニコフ「あ・・・、やっちゃった・・・。」

好美「え?どうしたんです?」

ニコフ「いや、残ったスープに白飯を入れるのが楽しみだったのですが忘れちゃいまして。」

好美「あはは・・・、分かります、美味しいからやりたくなるんですけど私もよく忘れちゃいます。」


 そんな中、王宮内では2人しか起きていないはずなのだが何者かがドアをノックする音がした。こんな時間に誰だろうか、ゆっくりとドアに近付きドアを開けてみるとそこには。


好美「あの・・・、どうされました?眠れないんですか?」


起きていたのは誰だろうか。

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