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イャンダに誘われるがままに呑む事にした好美。


-㉟ 黒竜将軍の過去-


 イャンダは拉麵屋の調理場にある業務用の冷蔵庫からこの時の為にこっそりと隠しておいた缶ビールの6缶パックを取り出し、好美に1本渡して自らの分として1本取り出した。これはオーナーとして見逃す訳にはいかない。


好美「あら、いつの間に入れてたのかな。」

イャンダ「後で家の魔力保冷庫に入れようと思っていたんだよ。」


 実は上の階層のマンションには好美の厚意で冷蔵庫を設置していたのだが、この世界の者たちは従来の魔力保冷庫と勘違いしていた。


好美「まぁ、今回は奢って貰ったから特別に良しとしましょう。」

イャンダ「あはは・・・、悪かったよ。」


 2人はゆっくりと缶のプルトップを開け乾杯した。イャンダは先程、肴は自分が作ると言っていたのにまさかの袋から出しただけのバターピーナッツだ。


イャンダ「これ好きでさ、ついつい買っちゃったんだ。」


 好美は自分もバターピーナッツが好きだったから先程の発言を忘れたかの様に演じて呑み明かす事にした、多分後から何か作るつもりなんだろう。

 そんな中、2人だけしかいない調理場のガラス窓からちらりとデルアを見た。


イャンダ「実は好美ちゃんを呼んだのは感謝してるという事を伝えたくてね。」

好美「私、何かした?」


 店長はビールを多めに1口煽った後、1息ついて語った。


イャンダ「ふぅ・・・、実はデルアがあんなに笑ったのを見たのは初めてだったんだ。この前本人から聞いた通り、あいつは元々ヴァンパイアで人間に家族を殺されたんだけど、その直後に王国軍隊に入隊した。しかし周りはずっと憎んでいた人間ばかり、それに一部の者達に疎まれていたから辛そうな顔をしていたんだよ。食事もろくに摂っていなかった日が多くて、心配になった俺は当時上司だった竜将軍長アーク・ドラグーンに相談を持ち掛けると親切にもご家族の方々の事を綿密に調べてくれてね、この国にお兄さんがいるかもしれないって分かったって事さ。まさか好美ちゃんの知り合いだったとは、本当に奇跡だと思ったよ。ただそのお陰でほら、あいつもあんなに笑っているだろ。何処か嬉しそうに、そして楽しそうにしているから俺も安心したんだ。本当に、ありがとうね。」


 すると店長の話が聞こえたのか、副店長が調理場に入って来た。


デルア「おいおい、さっきからピーナッツだけで呑んでるなと思ったら俺の話をつまみにしてたのか?」

イャンダ「お陰様で、酒が美味くて仕方がねぇや。」

デルア「それはようござんした。」


 そう言うとデルアはエレベーターへと消えて行った、自室に戻り明日の朝から本格的な開店準備を始める為の最終確認をするのだろうか。

 ・・・と、思っていたら。


デルア「俺も混ぜろよ、これから仲間同士なんだから良いだろ?」


 本人の1番お気に入りの赤ワインとチーズを持って降りて来た、流石にオープン前の拉麵屋なのでワイングラスはなくて、代わりにお冷用のグラスだが。

 これは入念に洗わないといけないなとクスリと笑いながら赤ワインを注いでチーズを一口。


デルア「嗚呼・・・、こんなに酒が美味いとはな。昨日初めて兄貴と呑んだ酒も美味かったが今日の酒も最高に美味い。俺ここに来れて良かったよ、ありがとよ、好美ちゃん。」

好美「早速絡み酒?困った人ですなぁ。」


 チーズが残り数切れでピーナッツも結構少なくなってきた頃、突然の出来事で副店長の義理の姉となった吉村 光改めダルラン光が追加のビールと小さなタッパーを持って『瞬間移動』してきた。


光「何?もう始めてたの?」

デルア「えっと・・・。」

光「光よ、あんたの兄貴の嫁。義理のだけどあんたの姉さんになった者よ。」


 実は初めて話す光に緊張を隠せないデルア、しかし酒が入ると関係無い様ですぐに打ち解けた様だ。好美は15階に上がり、幸せな暮らしを期待して眠りについた。


酒は家族や仲間の絆を深めるのだろうか。

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