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肴の準備を着々と進める人魚たち。


-㉓ 準備完了-


 渚が冷蔵庫に鰹を入れてから約10分が経過し、メインイベントのタイミングとなった。チラッと端っこの方をよく見たらガラス製の器を冷蔵庫でキンキンの冷え冷えになるまで冷やしている。


渚「今から表面を焼くんだろ、藁なんかないけどどうするんだい?」

ピューア「今回は屋内でも簡単に出来る方法で焼きたいと思います。」


 金属製のバットを裏返し表面に塩を振ると、そこに鰹の身を置いて皮の付いた面から焼いていく。表面を程よく焦げ付かせると別の面に返してまた焼き、全体の表面を焦がしたら用意しておいた氷水に入れて一気に冷やす。

 冷えた身を刺身の様に切ると中の身は良い具合のレアになっていた、それを先程から冷やしておいたガラス製の器に盛り付けまた冷蔵庫で冷やす。

 一方で、折角の晴れの日なので太陽の下で楽しもうと思った好美が屋上にある露天風呂横のテラスでバーベキューコンロの準備を始めていた。

本当は日本では無いかと思いながら、ゲオルの店で追加で入手した備長炭へゆっくりと時間をかけて火を付けていた。日本にいた頃、女子1人でソロキャンプをしていた好美は『転送』で日本から持って来たファイヤースターターを使って点火していた。

懐かしさを感じながらゆらゆらと揺れる炎を眺めて焼肉の準備を進める。美味そうな牛肉を1kgも買っていたのだから嫌でも準備にやる気が出る。

火が落ち着いて来たのでそろそろかなと渚と光に念話を飛ばしてみた。


好美(念話)「好美です、中の方はどうですか?」

渚(念話)「今ね、ボヤになりかけてるね。」

光(念話)「母さん、何馬鹿な冗談言ってんの。ごめんね、バーナーで鰹のたたきを焼いてたの。もう焼きは終わったし、換気扇は使っているから安心してね。」


 買ったばかりのビルの屋上で一瞬物凄く焦りかけた好美は、大事にならなくて良かったと胸を撫でおろした。


光(念話)「これからね、鯛を刺身とカルパッチョにしていくよ。」


 ピューアが鯛を3枚に卸し皮を引くと両方の半身を刺身用の短冊へと作り替えていった。半分は渚がそのまま刺身にしていく。もう一方で光が今朝採ったレタスやパプリカで彩った皿の上に小さく切った鯛の身を並べ、オリーブオイルとバジルソースで作った特製ドレッシングと胡麻ドレッシングの2種類を用意した。


光「味付けは各々の好みで大丈夫だよね。」

ピューア「勿論、ただすみません。鯛の身にレモン汁をかけて頂けますか?」

光「了解。」


 指示の通り今朝採れたレモンを真上で搾って回しかける、その横でピューアが今度はハマチを卸していった。


ピューア「片方は刺身に、そしてもう片方は切り身にして上で肉と一緒に焼いちゃいましょう。照り焼きなんていかがでしょうか。」

渚「良いね、見てるだけで日本酒が進むね。」


 今の言葉は聞き捨てならない、光は渚の方を向きじっと表情と両手を確かめた。その結果、渚は素面しらふで手ぶらだった。


光「母さん、まだ乾杯してないじゃん。」

渚「冗談、まだ呑んでないよ。早く盛り付けて上に行こう。」


 出来立ての刺身やたたき、そしてカルパッチョを持って渚と光がテラスへのエレベーターに乗って上がった。屋上では好美が火を落ち着かせて待っていた。

 キッチンでは購入した鶏もも肉の切り身の半分を塩と醤油味の唐揚げにしていく、昼呑みはもうすぐだ。


渚「さっきはごめんね、お待たせしました。」

好美「凄いですね・・・、何か申し訳ない気がしてきました。」


 キッチンを片付けて、盛り付けたばかりである焼く用の肉と唐揚げを持った光と一緒にピューアがエレベーターで上がって来た、階段を上がった先には13階に住む人魚にとって初めての光景が広がっている。


ピューア「お待たせしまし・・・、凄い・・・。このビルにこんな所があるんですね。」

渚「普段ここは好美ちゃんのプライベートスペースだからね、ほらあそこ見てみ。」


 元寿司職人は大家専用の露天風呂を見て開いた口が塞がらなくなっていた。


昼吞みはもうすぐだ。

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