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後からやって来た古龍の目的とは。
-137 恐怖が始まる-
店前で古龍がまた降りて来て店前で並んでいる客がざわついていたので、調理場での作業を離れたイャンダが行列の整理に向かっていた。
イャンダ「お客様、落ち着いてお並び下さい。従わない方には麺1本も売りませんよ。」
馬鹿な台詞を吐く店長に拳骨をする副店長、どっちが上の者なんだか。
デルア「脅してどうするんだよ、お客様申し訳ございません。他のお店の迷惑にならない様に端によってお並び頂きます様、ご協力お願い申し上げます。」
2人が行列の整理とお客の抑制を済ませた横で先程降りて来た2体目の古龍が人化していた、手に財布を持った「三つ巴の三姉妹」の次女であるセリー・ラルーであった。
セリー「お父様、先程お代を全部持つと仰っていましたが財布を忘れては1円も払えないではないですか。」
ビクター「私とした事が、面目ない。」
セリー「もう、この前の洗濯物と言い、今回の忘れ物と言い、最近ケアレスミスが目立ちますわよ。」
ビクター「お恥ずかしい限りです。」
この世界でも父親は娘にタジタジな様だ、古龍と言う存在を少しだけだが身近に感じた。
セリーから財布を受け取ったビクターは改めて席に着いた、ちょうど次女のバイトが休みで助かったとほっとしている。
父親は礼がしたいらしく娘を自らの隣に誘うと、セリーは好美の方をチラッと見た。
セリー「オーナーさん、宜しいのですか?」
勿論新規のお客様は歓迎だし、神様が呑み食いしに来たとなると心から自慢できる事実となるだろう、断る理由などない。
好美「勿論です、すぐにお席をご用意致しますね。」
素面だと言える位に冷静な判断をする好美、ただ呑みに来ただけだというのに従業員の1人の様に対応する。ただいつになったら落ち着いて呑めるのだろうか、ただ渚と光だけは何もなかったかのように親子の盃を交わしている。
騒ぎが落ち着くと全員屋外のテーブル席に着席したが知らぬ間に酒の肴の殆どが減ってしまっており、代わりに何故か茶碗が何重にも積まれている。
好美「どういう事?」
理由は即座に発覚した、渚に光、そしてナルリスがいるのだ。そうともなれば・・・。
光「ごめん、夕飯代が浮くと思ってガルナス呼んじゃった。」
好美含めた「暴徒の鱗」のメンバーは愕然としていた、今現在の在庫不足と以前の事を思い出したからだ。友人であるマーメイドのメラがいないのが唯一の救・・・い・・・。
ガルナス「メラ、お代わり貰おう!!」
イャンダ・デルア「お・・・、終わった・・・。詰んだ・・・。」
この大盛況の状態でこの大食い2人がいるという事は確実に今の在庫では不足してしまう、一先ず落ち着きたいので店長と副店長は今回の事態が起こった時の様に増台した炊飯器内の白飯を確認しに行った。
普段は炊飯器が2台あれば十分なのだが、念の為に12台まで増台させている。一先ず全てをフル稼働して大食いたちに対抗・・・、いや対応することにした。
屋外テーブルの近辺に満タンの炊飯器を6台設置し、セルフでのお代わりし放題の状態にしておく。これでホールの者が動く心配はほぼほぼなくなるだろう、まぁ料理が無くならない限りなのだが。
デルア「こりゃ全部を大盛りで作るしかないかも知れないな。」
イャンダ「明日の仕入れを倍にしないとだな、ちょっと電話しとくわ。」
デルア「お前は作る方を優先しろよ、この状況で電話なんてする余裕なんてないだろうが。」
バイト①「通します、屋外席に叉焼⑤唐揚げ⑩麻婆豆腐④です。それと炊飯器4台追加お願いします!!」
バイト②「通します、屋外席に生中⑥焼き餃子③春巻き⑩です!!」
イャンダ・デルア「来やがった・・・、もう今日は伝票置くだけで良い!!」
調理場で重たい中華鍋を振り始めた2人、その表情は完全に職人そのもので「竜騎士」の面影はこれっぽっちも無くなっていた。
頼もしい職人たち。




