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キンキンに冷えたビールが本当に好きな結愛。
-136 きっかけを思い出す-
真希子の突然の登場により動揺しつつ乾杯の音頭という大役を務めた結愛は冷えたジョッキの生ビールを煽りながら自らの席に戻った、着席するなり肴として提供されている揚げたての鳥のから揚げを頬張り冷えたビールで流し込んだ。
結愛「ああー、やっぱりこういった祝いの席で呑むビールは格別に美味ぇな。」
光明「おいおい、お前が主役みたいになってんじゃねぇか。」
今日の主役のはずの夫はジョッキ片手に顔をヒクヒクさせている、目の前では真希子が豚の角煮に壺から辛子を出してつけようとしていた。
小さな匙でちょっとずつ加えていく。
真希子「あんたら結婚してからも相変わらずだね、高校時代とちっとも変わらないじゃないか。」
結愛「おば・・・、おば様。私達はいつまでも私達ですから、変わらなくて当然だと思いますよ。」
真希子「そうなのかね、という事はうちの守はいつまでもド変態という事だね。」
母の言葉が聞こえてしまった息子は鼻からビールを吹き出しかけた、隣で好美が首を縦に振っている。彼女が言うのだから間違いない。
守「母ちゃんも好美も皆の前で何言ってんだよ。」
好美「だって本当の事だもん。」
テーブルを囲む全員が好美の言葉で爆笑していた、良い話のネタになった様だ。
結愛「あはは・・・、あいつら相変わらずだよな・・・。それにしても光明、どうしてラルクが犯人って分かったんだ?義弘とパントリー・クァーデンの事は疑わなかったのか?」
光明「そうだな、この事件が発覚する前にリランから会社に理不尽な電話があったの覚えているか?」
魔獣保護養育施設の事で言い掛かりの電話をして来たことを嫌々ながら思い出した。
結愛「嗚呼・・・、あの面倒くせぇクレーム電話な。」
光明「義弘は未だに豚箱ン中だし、クァーデンは刑が軽くなって釈放されているけど義弘と共謀してまで娘の為に動いた奴だぞ、娘が疑惑を持ち始めたのに犯行を続けると思うか?それに刑務所ン中で更生したって聞いているし、ただ勿論あいつらの事は信用してないけどな。」
結愛「でもラルクがこっちに来てたなんて思いもしなかったぜ。」
光明「そうだな、神様もミスするんだな。何か親近感湧くぜ。」
すると天界から聞き覚えのある声が、あのビクター・ラルーだ。
ビクター「だから悪かったって言っているだろう、約束通りラルクもちゃんと幽閉しているんだから許してくれよ。」
光「えっ、この声誰・・・?」
ビクター「おっと久々だな、光。元気にしてたか?」
光「いや、どちら様ですか?」
ビクター「悪い、こっちじゃ分からないか。(元々の声で)私だよ。」
光「神様?!光明君と何かあったんですか?」
ビクター「一緒に事件を解決したんだよ、元々私の手違いでラルクをこの世界に送ってしまったからな。そうだ、席空いているか?」
好美「大丈夫ですよ、椅子持ってきますね。」
ビクター「助かるよ、俺も今日は楽しく呑みたい気分だからさ。今すぐ行くわ。」
すると、空から「三つ巴の三姉妹」の3人より一回り大きなドラゴンが降りて来た。煌びやかな鱗が月明りに照らされ輝いている、その輝きに順番待ちをしていた客が男女関係なくうっとりとしていた。
客①「上級古龍だわ、こんなに近くで見る事が出来るとは。」
客②「向こう5年はいい年になりそうだ、ありがたや。」
ビクター「さてと、何処に座れば良いかな。」
ただ1つ問題が。
好美「すみません神様、その姿のままだとお席をご用意しづらいのですが。」
ビクター「そうだな、申し訳ない。それと今日のお代は全部俺が持つから。」
今の言葉が聞こえたからか、空から別の古龍が降りて来た。なかなか見えない光景に感動の涙を流す客が沢山いて「暴徒の鱗」前は騒ぎになりかけていた。
古龍が降りて来た理由とは。