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124~125

渚は急いで仕事に戻った。


-124 一生もののツケ-


 渚は『瞬間移動』して最終の販売ポイントへと到着し、急ぎ屋台を展開した。幸いスープ等の用意は1つ前のポイントで販売を行った時の物がそのまま残っていたのですぐに販売を開始出来た。


渚「悪かったね、今からで良かったら作らせて貰うよ。」

客①「おばちゃん、腹減ったよ!!早く叉焼麺頂戴!!」

渚「あんた、「渚さん」か「お姉さん」と呼ばない奴に叉焼あげないよ、これはルールだからね!!」

客②「渚さんは相も変わらず綺麗だな、俺は叉焼丼と辛辛焼きそば。」

渚「焼きそばの辛さはどうする?」

客②「そうだなぁ・・・、今日は辛めにして欲しいから⑥番にしようかな。」

渚「あいよ、分かってるあんたにはキムチをおまけしとくからね。」

客①「ずりーよ、お・・・、お姉さん!!焼き餃子とビール!!」

渚「今更だけど、許してやるさね。ほら、あたしも鬼じゃないから餃子1個おまけしといたよ。」


 「今は」だが、渚は友人や家族の様にお客と楽しそうに会話を交わしながら働いている様だ。これが屋台の人気に繋がっているのだろう、そんな中で見覚えのある「あの2人」がこそこそとやってきた。1人は手に1000円札を握りしめており、もう1人は陰に隠れながら渚の屋台の方に近付いて来た。


渚「あんたら来たね、ほら座んな。」

カラン「ごめん、今日も辛辛焼きそばを半分ず・・・。」

渚「約束通り、辛辛焼きそば定食1人前ずつね。」

ミル「でも渚さん・・・、俺達2人で1000円しか・・・。」


 その時渚がミルの口に人差し指を付けて言葉を止めた、屋台の店主はにこやかに笑っている。


渚「実は申し訳ないんだけどあんた達の事、友人に頼んで調べて貰っていたんだよ。」


 必ずボロボロの衣服を着た兄弟が揃ってゴミ置き場で拾ったであろう金属を売り手に入れた1000円を握りしめてやって来ているので、本人達には内緒で家庭の事情を結愛に調べて貰っていたのだった。大企業である貝塚財閥の代表取締役が言うには2人は早くに両親を亡くし、金も無かったので住んでいた家も追い出されたそうだ。下級魔獣が故になかなか働き口も見つかる訳もなく、ゴミ捨て場を漁りながら路上生活を続けていた折、今回の被害を受けたらしい。


渚「あんた達、貝塚財閥の施設で勉強して来な。あたしの方から推薦をしておいたし、社長の許可は下りてるからすぐにでも入れるよ、全寮制だから食事にも困らない。そこで一生懸命勉強して、立派に稼げる様になったら今日の食事代を支払いに来ておくれ。それまで永久的にツケにしといてやる。ほら、分かったらここにサインをしておくれ!!」


 2人はテーブルの定食をチラっと見た後、互いの顔を見て互いに頷き合った。そして兄がペンを取り書き慣れない文字で伝票に書き始めた。


カラン(メモ)「かならずあたまよくなっておかねはらいきます、まっててください。カラン・ミル。」

渚「ちゃんとこの伝票は置いとくからね、約束忘れんじゃないよ。」

兄弟「はい!!」

渚「ほら、冷めない内に食べな。それとも焼きそばの辛さが足らないのかい?」

ミル「俺はもうちょっと・・・。」

カラン「こら、今は我儘言うんじゃない。」

渚「何言ってんのさ、辛さ足すくらい容易な事さね。それとも自分でするかい?」


 渚はテーブルに添えてある唐辛子を指差した、兄弟が入れ物を取り合いしていたので蓋がパッカンと開いてしまった。大量の唐辛子が辛辛焼きそばどころか炒飯にまで振りかかった。何処からどう見ても激辛料理のチャレンジ定食だ、そこで渚が爆笑しながら提案した。


渚「あははははは・・・・・!!あんた達、新メニューのアイデアをくれたお礼だ、それ完食したら無料にしてやるよ!!デザートも付けてやる!!」


 ミルは黙り込み、息を飲み込んでから蓮華を手にして炒飯に食らいついた。よっぽど辛いのか、それともまともな(?)食事が嬉しいのか、目には涙を浮かべていた。


ミル「くっ・・・、舌が焼ける・・・。でも・・・、美味い。」

カラン「お前・・・。」

渚「食べないのかい?早くしないと制限時間を設けた上で唐辛子追加するよ。」


-125 嫌な予感-


 ヘルハウンドの兄弟が激辛定食に挑戦する数時間前、ブロキント率いるゴブリン達が働く採掘場にて国王達が息を潜めて突入の機会を伺っていた。


光明「ゴブリンさん達、バリケードをゆっくりと解いて下さい。」


 ゴブリン達はそう聞くと互いに頷き合い、ゆっくりとその場から離れて行った。光明たちは西日が差す洞穴にこっそりと入って行った。

 少し歩いた所に麻袋が積まれていた、中には皆の予想通り盗まれたミスリル鉱石が。


デカルト「ビンゴですね、それで奴らの姿は?」


 すると少し奥の方から賑やかな声がして来た、どうやらそう遠くない所で盗難成功を祝して晩酌をしている様だ。ただ奴らが呑んでいる酒も盗まれてた物だろう、最近近くのスーパーから大量のビールや日本酒が盗まれたという被害届が出されていたからだ。

 盗まれた大量のミスリル鉱石の山を見てブロキントが体を震わせている、自分達が力を合わせて集めた鉱石なのだから当然である。


ブロキント「あいつら・・・、許せまへん・・・。」


 ブロキントは可能な限り小声で言っていたが、光明が抑えつけた。今バレてしまっては作戦がおじゃんだからだ。

 犯人グループが晩酌をしている所を見て光明は作戦の変更を提案した、ブロキント以外は皆想像していた様だが。


光明「やつらの仲間に化けて情報を集めつつ、酔い潰しちゃいましょう。」


 光明が犯人達の様子を凝視しながら奴らが腕に付けているバンダナ等細かい所も含めて奴らの服装を『作成』し、その場にいた全員が着用した。デカルト、光明、ブロキント(人化)、そしてゴブリン数人(人化)で1グループ。そして残りの王国軍隊とゴブリン数人(人化)に分かれて潜入を開始した、可能な限り自然な形で。

 酒に酔った犯人達は上手く呂律が回っていない様だ、正直これはチャンス・・・。


光明「先輩お疲れ様です、俺達も参加して良いですか?」

犯人グループ①「おお、お前らDれぇグループの奴らだ(ら)な、お前らも加われ。」


 どうやら犯人達は何個かのグループに分かれていて各々の区別は腕に付けているバンダナらしい、敵味方が分かる様に色分けしていた事が功を奏したらしい。

 因みに洞窟内にいるこいつらはCグループだそうだ。


犯人グループ②「ほらお前らも呑めや、今日も祝杯が美味いぜ。リーダ(ら)ー、良いで(れ)すね!!」


 リーダーらしき者も真っ赤に酔っぱらってしまっていて敵味方の区別もつかなくなってしまっている、ただ本人にとってはまだ酒が足らないらしいので瓶ビールをラッパ飲みしていた。

 リーダーは光明に隣に来るように指示した。


リーダー「ほら、特別とくれつにお前にも1本やろう。」

光明「あ、はい・・・。」


 光明は恐る恐る瓶の王冠を開けて一気に煽った、これが盗んだビールの味かと涙ながらに覚えてしまった。意外と・・・、美味い・・・。いや、それじゃダメじゃん!!


リーダー「良い呑みっぷりだな、名は何と言う。」

光明「は・・・、ハンジです。」


 犯人グループにこちらの情報を漏らす訳にも行かないので、こうやって「名前を聞かれたら偽名を即座に作る事」も光明の作戦だった。

 さてと、良い具合に酔いが回って来たので本題に移ろうではないか。


光明ハンジ「リーダー、そう言えばお頭を見ませんね・・・。」

リーダー「お頭なら屋敷にいるだろ、今頃捕まえた下級魔獣の売買契約でも行っているんじゃねぇのか?」

光明ハンジ「お屋敷ですか・・・。」

リーダー「ハンジお前、何も知らないんだな。ほら、山ん所に屋敷があるだろ。」

光明ハンジ「あそこねぇ・・・(嫌な予感が当たり始めたな)。」


 まさかと思うが刑務所にいる「アイツ」絡みの事件なのだろうか、光明は早速あの人に『念話』を飛ばして刑務所に向かう様に頼んだ。


急に酒が不味くなった光明。

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