117
大臣は昔を懐かしみうとうとしていた。
-117 採掘場の現状-
大臣が昔懐かしき頃を回想していた事を電話越しに察したのか、電話の相手であるゴブリン・キングは慌てて何とか現実に引き戻そうとした。
ブロキント(電話)「ロラちゃん、ロラちゃん!!船漕いどんとちゃうか?いややわ、しっかりしてや、あんた仕事中やで?」
ロラーシュ「悪い・・・、何の話だったかな。」
少なくとも昔を懐かしもうとして電話した訳ではない採掘場のリーダーは慌てた様子で改めて要件を説明した。
ブロキント(電話)「いややわ、堪忍してや。だからな、最近採掘量と在庫が全く合わんねん。この国で採掘と出荷の許可もろとるんは、ウチのグループくらいやろ?」
ロラーシュ「そうだな、確かに公式に許可しているのはブロちゃんの所位だな。」
ここ数年間でミスリル鉱山採掘における法律が厳しくなり、必ず許可証を持ったリーダーが管理した上で作業をしなければ違反となってしまう。近年、自分勝手にミスリル鉱石を採掘している連中が横行していたために王宮含めた政府公認の採掘量が過激に減少していたので規制が掛かる様になったのだという。
ブロキント(電話)「それでな、採掘場の辺りを皆で見回ったら身に覚えのない洞穴が開いとってな、こっそり覗いてみたら数人の人間がわいらが前日掘った不足分を夕方過ぎに独り占めしとるらしくてな。ほんで隠しカメラを仕掛けてみたら頭っぽい連中が夜中に車で持ち出しとるみたいでな、よくみてみたら同じ車に麻袋が何個も積まれてんねん。あいつら他にやっとんちゃうか?ミスリルに至っては普段は翌朝に在庫を確認するんやけど、今回は掘った直後に在庫を確認したから間違いないわ!!」
ロラーシュ「確かに最近、お前の所からの出荷量が不自然に減っているのは確かだ。早速国王に報告しよう、調査の必要がありそうだ。良かったら、ブロちゃんも証人として同行してくれるか?」
ブロキント(電話)「勿論や、採掘場の皆で協力するわ!!」
電話を切ってすぐ、大臣は採掘場の1件をデカルトへと報告した。
デカルト「そうですか・・・、そんな事が。深夜の行動に麻袋・・・、何か関連性がありそうですね。明日早速採掘場に参りましょう、王として困っている方々を見過ごす訳には参りません。」
翌日、早速国王達一行はブロキントの案内で採掘場に不自然にぽっかりと開いた洞穴へと向かった。
ブロキント「ここですわ、えんらい大きいでっしゃろ?」
デカルト「そうですね・・・、この洞穴があるのはいつからですか?」
ブロキント「わいらが見つけたんは大体5日前です、最初の方は音沙汰が無かったから放っとったんですけど。」
デカルト「そうですか・・・、仕掛けてある隠しカメラを見せて頂けますか?」
ブロキントは洞穴の向かいに仕掛けてあった隠しカメラへと案内した、植木鉢等で上手く隠している。
デカルト「これですか、ちょっと失礼・・・。」
デカルトはある所に電話をし始めた。
デカルト「うん、そうですか。助かります、早速お願いします。」
電話を切った瞬間、スーツを着た光明が『瞬間移動』してきた。どうやら新型のカメラに付け替えようとしているらしい。
デカルト「このカメラの映像だけで構いませんので、この採掘場の事務所から映像を見える様にできますか?」
光明「やってみましょう。」
ブロキント「国王はん、この方は?」
デカルト「こちらの方は・・・。」
光明はデカルトの言葉を遮ってかました。
光明「国王の友人であるただの機械オタクですよ。」
ブロキント「ほな機械に強い人なんやね。」
何となく光明は社名を出して目立ちたくなかったらしい。
何かの作戦か、それとも光明の性格からか。